2025年05月28日

クルマの法定点検って何?車検との違いや種類、点検項目や費用まで解説

法定点検は道路運送車輌法によって義務付けられている重要な点検で、クルマの安全性を保つために欠かせません。しかし、車検との違いや具体的な種類、費用などについて正確に理解している方は意外に少ないのが現状です。 この記事では、法定点検の基本的な仕組みから種類別の詳細、費用相場、さらには日常点検まで、クルマの点検に関する情報を解説します。適切な点検を行うことで、クルマを長く安全に乗り続けることができるでしょう。


クルマの法定点検とは


クルマの法定点検は、法律の定めにより義務付けられている点検です。法定点検の対象は、タイヤやホイールなどの「走行装置」、ハンドルやステアリング機構などの「かじとり装置」、ブレーキ関連の「制動装置」、クラッチやトランスミッションなどの「動力伝達装置」、バッテリーや配線などの「電気装置」、エンジンまわりの「原動機」、排気関連の「エグゾーストパイプ・マフラー」です。この法定点検は、クルマを安全に走行させるために必要な点検であり、車検とは異なります。


法定点検と車検の違い


法定点検と車検は、どちらもクルマの安全性を確保するための制度ですが、その目的や実施方法には明確な違いがあります。


最も大きな違いは、車検が「保安基準に適合しているかの検査」であるのに対し、法定点検は「故障の予防を目的とした点検」である点です。


車検は、国が定めた保安基準にクルマが適合しているかを検査し、基準を満たしていれば自動車検査証が交付されます。一方、法定点検は故障を未然に防ぐための予防整備という位置づけで、点検の結果として不具合が見つかった場合は別途整備が必要です。


実施頻度についても大きく異なります。車検は新車の場合は3年後、その後は2年ごとに実施しますが、法定点検は年に1回または半年に1回など、より頻繁に行われます。


法定点検の種類


法定点検には、実施する頻度や対象となるクルマによって複数の種類があります。一般的なマイカーの場合、主に12ヶ月点検と24ヶ月点検が該当しますが、事業用自動車については3ヶ月点検や6ヶ月点検も義務付けられています。


法定12ヶ月点検(法定1年点検)


法定12ヶ月点検は、すべての自家用乗用車に義務付けられている年1回の定期点検です。この点検では29項目の検査が実施され、エンジンルーム、室内、足回り、下回りの各部分について詳細にチェックします。


エンジンルームでは、エンジンオイルや冷却水の漏れ、ファンベルトのゆるみなどを確認します。これらの点検により、エンジンの正常な動作を維持し、オーバーヒートや始動不良などのトラブルを防ぐことが可能です。


室内点検では、ブレーキペダルの遊びや踏み込んだときの床板とのすき間、パーキングブレーキレバーの引きしろなどを測定します。これらは走行安全性に直結する重要な項目で、適正な値を維持することで確実な制動力を確保できます。


足回りの点検項目は、タイヤの空気圧や溝の深さ、ホイールの締付け具合などです。タイヤは路面との唯一の接点であり、適切な状態を保つことで安全な走行と燃費の向上につながります。


法定24ヶ月点検(法定2年点検)


法定24ヶ月点検は、車検と同時に実施される法定点検です。56項目という多数の検査項目があり、12ヶ月点検の内容に加えて、より詳細で専門的な点検が行われます。


この点検では、電気配線の接続部の損傷やブレーキ液の漏れの検査、ステアリング装置のゆるみの確認など、高度な技術と専用の機器を必要とする項目が含まれています。これらの点検により、クルマの基本性能が維持されているかを総合的に判断できます。


排気ガスの状態についても詳しく検査され、一酸化炭素等発散装置の点検が行われます。これにより、エンジンの燃焼状態が適正であるかを確認し、環境への負荷を最小限に抑えることができるでしょう。


法定3ヶ月点検


法定3ヶ月点検は、事業用自動車(タクシーやトラック、バスなど)に義務付けられている四半期ごとの点検です。事業用自動車は走行距離が多く、使用頻度も高いため、より頻繁な点検が必要とされています。


この点検では、日常的に使用される部分を中心に点検が行われます。ブレーキの効き具合やハンドルの操作性、灯火類の点灯状態など、安全運行に直結する項目が重点的にチェックされます。


事業用自動車の場合、故障による運行停止は事業に大きな影響を与えるため、予防保全の観点から3ヶ月という短いサイクルでの点検が設定されています。これにより、小さな不具合を早期に発見し、大きなトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。


法定6ヶ月点検


法定6ヶ月点検は、自家用の貨物自動車(軽貨物自動車を除く)や事業用自動車に義務付けられている半年ごとの点検です。これらの車輌は商用利用されることが多く、一般的な乗用車よりも厳しい使用条件にさらされるため、より頻繁な点検が必要とされています。


点検項目は12ヶ月点検と類似していますが、使用状況に応じて重点的にチェックする部分が異なります。特に、荷物の積載による影響を受けやすいサスペンションやタイヤ、ブレーキ系統については入念な点検が行われます。


商用車輌の場合、故障による業務への影響は深刻であり、また事故が発生した場合の社会的責任も大きいため、定期的な点検により安全性を確保することが重要です。


法定点検の費用


自家用車のケースでは、12ヶ月点検と24ヶ月点検で点検費用が異なります。費用に違いがあるのは、12ヶ月点検の内容と24ヶ月点検の内容が異なるためです。12ヶ月点検よりも24ヶ月点検の方がより念入りな点検が実施されるため、費用が高くなっています。費用の目安は1万円前後から2万5,000円前後ですが、車の種類によって異なります。


また、点検により部品交換が必要になった場合は、別途部品代がかかります。


法定点検を行わないとどうなる?


法定点検は先述した通り、法律の定めにより義務付けられている点検です。法定点検の時期を過ぎてしまったときの罰則はあるのでしょうか。


自家用車の場合、法定点検を受けなくても罰則はありません。しかし、安全に使用するためにも法定点検を受けておくことが大切です。一方、事業用の車は、法定点検をしないと罰則の対象となります。罰則は、30万円以下の罰金です。


参考:道路運送車両法第110条


法定点検を受けられる場所


法定点検を受けられる場所


法定点検は、ディーラーや整備工場などで実施します。ここからは、点検を受ける場所ごとの特徴を解説します。


ディーラー


ディーラーでは、法定点検を受けられます。ディーラーでは、車種に合った工具や正規部品を使った整備を受けることが可能です。ただし、正規ディーラーでの点検・整備をすると費用が高くなる場合があります。また、点検は乗っているメーカーのディーラーに依頼しましょう。ディーラーで取り扱っている車種以外の場合、点検を断られてしまう可能性があります。


整備工場


整備工場には、メーカーや車種を問わず点検を依頼できます。ただし、指定工場や認証工場でなければ法定点検の内容が記録される整備記録簿を発行できないため、指定または認証を受けているか事前に確認しましょう。


ガソリンスタンド


ガソリンスタンドでも車の点検を受けられます。ガソリンスタンドの場合、併設されている工場によって受けられる点検が異なるため、事前にどのような点検・整備を実施できるか確認しておきましょう。


自分で行う「日常点検」とは


日常点検とは、運転者が行う点検のことです。日常点検については、道路運送車両法第47条2項



自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。



と定められており、クルマの使用者の義務となっています。


日常点検は、車を使用しているときに違和感を感じたり、異常を発見したりしたときに行わなければなりません。ここからは、日常点検の内容や頻度について解説します。


日常点検の内容


日常点検では、ウィンドウォッシャー液、ブレーキオイル、冷却水など「エンジンルーム」、タイヤの亀裂や破損など「タイヤまわり」、エンジンのかかり具合やブレーキの効き具合など「操作関連」の確認をします。車の取扱い説明書に点検する場所や項目が記載されているため、点検前に目を通しておくとよいでしょう。


日常点検の頻度


日常点検は、走行距離や運行時の状態などの使用状況に応じた適切な時期に行う必要があります。
かつて、日常点検を行うタイミングは「運行前」とされていましたが、「ドライバーが必要だと判断したとき」に変更されました。ただし、全く点検をしなくてよいわけではありません。


頻繁に車に乗る場合は数週間に1回、乗る回数が少なくても1ヶ月に1回程度は点検することをおすすめします。事業用の車の場合は、1日に1回運行前に必ず点検しなければなりません。


日常点検の費用


車の日常点検は、ドライバー自身が行う点検ですが、ディーラーや整備工場に依頼することも可能です。


日常点検を業者に依頼する場合、車の大きさによって点検費用が異なります。おおよその目安は、3,000円から5,000円程度です。なお、部品交換や液剤の補充などがある場合は、追加で費用が発生することがあります。


日常点検を行わないとどうなる?


日常点検を実施しなくても罰則はありません。しかし、車を安全に運行させ、運転中のトラブルを避けるためにも、日常点検はしておきましょう。


まとめ


クルマの法定点検は、安全な運転と環境保護のために法律で定められた重要な制度です。12ヶ月点検と24ヶ月点検を中心とした定期的な点検により、クルマの性能を維持し、突然の故障や事故を防ぐことができます。事業用自動車については、より頻繁な3ヶ月点検や6ヶ月点検が義務付けられており、それぞれの使用状況に応じた適切な点検が必要です。


点検費用は実施場所や車種によって異なりますが、安全性を考慮すれば決して高い投資ではありません。ディーラー、整備工場、ガソリンスタンドなど、それぞれに特徴があるため、自分のニーズに合った場所を選択しましょう。

外車王編集部

執筆者: 外車王編集部


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