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コラム

更新2020.08.23

日本発のラウヴェルト/RWBは、ポルシェチューニングの新たな価値観を創造する

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中野 ヒロシ

日本発の輸入車チューナーを紹介する記事の第二弾、派手なスタイリングで世界から注目を浴びているRAUH-WELT BEGRIFF(ラウヴェルト)を、その代表である中井啓氏の独特なセンスとポルシェに対するアティチュードを、動画を交えて紹介する。

日本発の輸入車をベースとしたチューニングカーが世界から大きな注目を浴び、人気を博している。前回は、その代表的なチューナー/ショップとしてLiberty Walk(リバティーウォーク)を紹介した。今回はその第二弾として、世界に認知されつつある、Rauh-Welt Begriff(ラウヴェルト ベグリッフ)を紹介したい。



ド迫力に張り出したフェンダーが特徴的なこのポルシェ 911を創りだしたのは、千葉の柏に本拠地を構えるRAUH-Welt BEGRIFF(以下RWB)だ。このアグレッシブで獰猛なスタイリングをした911の人気はとどまるところを知らない。シリーズ世界累計売上が1億5000万本を売り上げる大人気レースゲーム「NEED FOR SPEED」の最新作には重要な人物としてRWBの代表である中井啓氏が登場し、彼の作品であるポルシェも登場する。この記事ではRWBの紹介とともに、この911が生まれるルーツを探っていきたいと思う。



かつて、1990年代前半にトヨタ カローラレビン(以下、AE86)でドリフトをしていたドライバーとして有名なRWBの中井氏は、当時からマシンに対してのチューニングもドライビングスタイルも独自のセンスが光っていたという。ハイカムを組み込んだ4AGエンジンに、「オニキャン&ツライチ」といったチューニングが施されたマシンで豪快なドリフトをしていたのだ。中井氏のマシンメイキングやドライビングは、後の人たちに大きな影響を与えている。

AE86時代に「Rough World」という名前を仲間内で共有し、活動していた中井氏は1990年代半ばにポルシェの世界へ足を踏み入れた。Rough Worldはドイツ語である「RAUH-Welt」へ名前が変化していった。Roughはカタカナでもよく用いられるラフで、粗雑や無造作といった意味となるが、中井氏の表現するラフというのは自由であり、自分らしく自然体であるといった様子を意味しているのではないだろうか?

当時は低年式の911であれば安価に手に入ることができたため、その911を速くカッコ良くチューニングすることに中井氏はハマっていったという。そして自身が身を置くステージも、ドリフトからレースへ移行していくことになる。



RWBのスタイルは「アイドラーズ」という草レースの中で培われていった。その結果、アイドラーズには多数のポルシェが参加している。自然吸気エンジンを搭載した930型の911でレースに参戦していた中井氏なのだが、相手は当時最新モデルのカップカーやターボ勢であったことから、非力なパワーを補うべく太いタイヤを収められるようにフェンダーを広げざるを得なかった。その結果、RWBのスタイルが生まれた経緯と言えるだろう。993型のGT2やレース仕様のRSRといったグレードには標準でリベット留めされたフェンダーが装着されているのだが、RWBのそれはさらに過激だ。中井氏の感性によって生まれたこの過激なスタイリングは、当然人によって好みは別れるのだが、刺さる人には深く突き刺さるアピアランスであることも事実だ。

現在はこの紫の「rotana」と名付けられたマットパープルの993型911も、中井氏のマシンとして活躍している。タービンはTRUST製TD07を使用し、約600馬力を発揮するターボエンジンが搭載されている。このTD07タービンは、1基で600馬力程度の出力を発揮する風量を持つタービンで、R32〜R34型スカイラインGT-Rに搭載されていたRB26や、FC/FD3S型RX-7の13Bといったエンジンに組み合わされることが多い。



過激なエアロパーツを装着するだけではなく、お客さんの要望に合わせたクルマづくりを中井氏は心がけている。993型や964型のレーシングを意識したクルマだけではなく、ナロールックで大型スポイラーを装着していない911も中井氏の作品だ。必ず自らがクルマのカスタムを手掛けるという手法をとっていて、現在では20カ国以上に赴き、現地でクルマを仕上げている。

その理由は、エアロパーツのフィッティングはクルマの個体差などもあり、すべてがマニュアル通りに装着できるわけではないという問題があるためだ。1台1台の個性を引き出すためにも、このような手法でRWBのポルシェは中井氏が全責任を持って創られる。



ポルシェが旧来からチューニングカーのベースとして愛されているのは、RUFなどの存在が代表的であるように、すでに周知の事実だろう。そして現在では、このRWBだけではなく、海外でも新たなポルシェチューナーの存在感が増してきている。例を挙げれば、マグナス・ウォーカー氏やシンガー・ビークル・デザインなどがそれに該当するだろう。これらの新たに生まれたポルシェチューナーに共通しているのが、RUFのように素のポルシェをベースに新たなクルマを1から造り直すほどの超高次元のチューニングを施し、圧倒的な性能を得るというような手法ではなく、よりポルシェらしさに磨きをかけるということに注力している点だろう。

強大なパワーではなく、空冷のエンジンを味わうためにその気持ちよさを追求したり、クラシカルな外観が好きという理由から、より美しいナロールックに仕上げたり、自分らしさを表現するために個性を主張できるものにしたり…と、現代のポルシェユーザーが求めるニーズは多様化しつつあるのかもしれない。

かつては走行性能がクルマの指標として重んじられ、最高速がどれくらいなのか?出力はどれくらい出ているのか?といったものが重要視されてきたが、そのような願望は、いつの時代も最新のスポーツカーを手にすれば叶ってしまうのだ。だからこそ、先述したポルシェらしさがもたらす楽しみを享受したいというニーズが高まっているのだろう。

RWBが世界のポルシェオーナーに求められている理由や要因は、その斬新なスタイルと言ってしまうのは簡単だ。しかし、ここではそのスタイルが生まれた日本という地域に着目したい。クルマ文化そのものは欧米で端を発したものなのだろうが、日本でもクルマを楽しもうという人たちが少なからず存在していたのは紛れも無い事実だ。その中で日本車をベースとしたチューニングの文化が80年代に開花し、外車をチューニングする人も現れ、この業界は90年代に最盛期を迎える。

日本には日本特有のクルマの楽しみ方というものがあったことで、諸外国とは異なったアプローチでのチューニングの手法が養われていったわけだが、現代ではインターネットを通じ、それをカッコイイと思う人達が世界中に現れたのだ。家電でガラパゴス化という表現が用いられることがある。結果的にそのガラパゴス化した独自性に注目が集まるようになったのではないだろうか?そんな日本発のスタイルに注目が集まることは日本人として誇らしく思う。


この事実をもっと日本のエンスージアストは認識すべきだと感じるし、日本にはグローバルな展開が可能なコンテンツがまだ埋もれているとも感じている。日本人特有の受け身な姿勢をせずに、自らが良いと思ったものを世界へ積極的に発信していかなといけないと強く思う。それが結果としてビジネスとなり、日本が豊かになることに繋がるのだろうから。

[ライター/中野ヒロシ]

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