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ドイツ現地レポ

更新2023.08.12

ポルシェ911シリーズの中でもっとも物議を醸したモデル、タイプ996の現在と今後を考察する

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高岡 ケン

すべての有名なシリーズには、いまいちヒットしなかったいわゆる「不人気モデル」が一つは存在する。


歴代のモデルと比較して大きくデザインが変わったり、特定の部品が壊れやすかったり、エンジンのパフォーマンスが悪かったり。その理由はさまざまだ。


ファンに受け入れられなかった理由はさまざまだが、すべてのモデルが愛されることは稀だろう。


フォルクス ワーゲンIIIやメルセデス・ベンツEクラス(W210)、またポルシェ911シリーズの996など。


今回は911シリーズの996について、ドイツ本国ではどのように評価されているのか。


ドイツ現地で調査してみた。


■前モデルとはまったく異なる911。それがタイプ996



1997年から2001年にかけて生産された996の前期モデルは発売当初、多くの物議を醸した。


それは前モデルの993と比べて、大きく異なるデザイン、エンジンへと生まれ変わったからだ。


先代の911といえば、丸いヘッドライトと空冷エンジンが特徴的で、一目で911と判断できるデザインが人気を集めていた。



しかし、996にモデルチェンジ後、約50年続いた空冷エンジンは水冷エンジンへと置き換わり、丸いヘッドライトはいわゆる「涙目」といわれるヘッドライトへと変更された。


新しく採用された水冷エンジンは、これまでの911の歴史を大きく変えることとなり、多くのポルシェ愛好家や自動車ジャーナリストから酷評を受けることとなった。


しかし、ポルシェのエンジニアにとって、排出ガス基準を遵守しながら同時に性能を向上させることはほとんど不可能だったのだ。


さらに当時、ポルシェは財政状況が逼迫しており、まったく新しい911を開発することは困難だった。



ゆえにコスト削減は必須であり、1996年に発表された低価格モデルの986ボクスターと40%の部品を共有することになった。


結果的に、共有部品のおかげでコスト削減には成功したもの、インテリアのプラスチック製のスイッチや、「涙目」のヘッドライトが地味な印象を与えることとなった。


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■フェイスリフト後は再び人気モデルへ



前期型の996は、ヘッドライトのデザインやエンジン性能の問題から販売台数に伸び悩んだ。


この問題を真摯に受け止めたポルシェ開発チームは、2001年末に外観とテクノロジーを一新するためフェイスリフトチェンジが行われた。


排気量は3.4リッターから3.6リッターへと増加し、出力は300馬力から320馬力に向上した。


ヘッドライトのデザインも一新され、強力なバイキセノンを搭載したまったく新しいデザインへと生まれ変わった。


さらにモデルのバリエーションも追加され、顧客はさらに多くの選択肢を得られるようになったのだ。


2002年以降のモデルはクーペ、タルガ、カブリオレのボディバリエーションに加え、以下の仕様が選択可能となっている。


・911カレラ
・911カレラ 4
・911カレラ 4S
・911カレラ ターボ
・911カレラ ターボS
・911 GT3
・911 GT3 RS
・911 GT2


フェイスリフト後の996は年々価値が上昇しており、数年前と比べると中古車相場が高まりつつある。


特にカレラ4Sとターボは人気があり、安価に手に入れることはすでに難しくなってきている。


2003年のカレラモデルからは、パフォーマンスのアップグレードが行われ、最高出力は345馬力にパワーアップされた。


そのため、中古車市場では2003年、2004年、2005年のモデルに注目が集まっている。


■「インタミ問題」は現状ではほぼ解決済み



996、または997を購入予定の方が、一度は耳にしたことがあるだろう「インタミ問題」。


正確には「インターミディエイトシャフトベアリングの破損問題」だ。


インターミディエイトシャフト(IMS)とは、エンジンの内部に位置する部品で、インタミに繋がっているベアリングの強度が弱いことが指摘されている。


仮にこのベアリングが破損すると、ピストンがバルブに衝突し、エンジン自体が壊れてしまう可能性がある。


911カレラシリーズの996、997、986ボクスター、987ケイマンは水冷エンジンの導入に伴い、エンジン設計が非常に複雑になっている。


そのため、修理が必要な場合は数十万の交換費用が発生してしまうほど厄介な問題だ。


しかし、実際のところこの問題が発生することは稀であり、現状ほとんどの場合はメーカーにより対策済みとなっている。


対策がまだ行われていない車両でも、一部の年式を除いてディーラーにてサービスキャンペーンの対象となっているため、購入者が修理費用を負担することはほとんどない。


以前はさまざまな問題を抱えていた996だが、これらの問題を踏まえた上でも、996が非常に価値のあるスポーツカーであることは間違いない。



実際に後継モデルの997が登場するまで、996はポルシェ史上もっとも売れた911であった。


1996年から2005年にかけて、170,000台以上が販売され、ベストセラーを記録したのだ。


996カレラ4Sやターボは、個体数の少なさから少しずつ価値が上がっている。


ドイツのクラシックカーの基準では初年度から30年以上が経過したモデルがHナンバーを所得することができ、真のクラシックカーとなる。


996があと数年でクラシックカーの仲間入りをすることから、すべてのモデルで少なくともこれ以上安くなることはないだろうと筆者は考えている。


 [撮影・ライター/高岡ケン]

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