コラム
更新2016.12.08
懐かしさと変わらぬ手応えに感動したメルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124)
松村 透
事実、1946年に設立されたエッティンガー社は、VWビートル(タイプ1)のパワーを上げることが目的だったのです。1976年にはVW社よりも先に4バルブヘッド 1.6Lエンジンを完成、その後もVW社との関係を深めていきます。
こちらのエッティンガー VW Golf R500は「GTI ミーティング・アット・ヴェルターゼー 2015」において発表された、VWゴルフRのチューニングモデル。価格は150,000ユーロということです。新車のポルシェ911カレラS+ほぼフルオプションと同じくらいの価格…でしょうか。
oettinger 500R Enthüllung at Wörthersee 2015
Golf R500 - oettinger - Sound - Startup - Exhaust Sound
日本では、過去に自動車専門誌やテレビなどでメルセデス・ベンツ車がベースのエッティンガーコンプリートモデルが紹介されていたこともあり、メルセデスのチューニングカーを連想する方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、1991年式メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124)、いわゆるメルセデスのエッティンガーコンプリートモデルに触れてみたいと思います。
メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124):外装編
▲メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124)。ボディカラーはブルーブラック
▲こちらの個体はエッティンガーのコンプリートモデルに、CARATのエアロとホイールでドレスアップされています
▲テールレンズはスモークタイプに変更されています
▲フロントグリルのアップ。エッティンガーのエンブレムも定位置に備えつけられています
▲フロントグリルは、スリーポインテッドスターの代わりにエッティンガーのエンブレムが。「OKRASA」は当時の販売会社と製造工場があった地名
▲周囲でoettingerを「エッティンガー」と読める方はかなりのクルマ好きかも。筆者はかつて「オエッティンガー」と読んで笑われました…
▲ベース車は、ミディアムクラス(W124)のスポーツライン
▲ホイールはCARAT製。タイヤサイズは205/55 R16
▲エッティンガーのエンブレムに激しく反応してしまう方もいるはず
▲3.6 / 24 のエンブレムも健在です
▲こちらの個体のマフラーはワンオフ品
▲90年代のメルセデス・ベンツは、この1本ワイパーを採用しているモデルが多かったですね
メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124):エンジン編
▲直列6気筒 3.6L DOHC 24V エッティンガーチューニングエンジン。最高出力は261ps/6300rpm
▲使い込まれたエキゾーストマニホールドにも、この個体の歴史を感じます
▲ボンネット裏側のインシュレーターも健在
メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124):内装編
▲ステアリングは、atiwe製のエアバッグ内蔵タイプに交換されています
▲こうして眺めていると、W124の内装がもつ端正さを再認識します
▲atiwe製ステアリングとウッドパネルの色合いも揃っています。オーナー氏のこだわりを感じさせます
▲四半世紀前の個体にも関わらず、ウッドパネルにはほとんどクラックがありませんでした
▲ハザードランプの印刷が擦れているあたりにもこのクルマの年輪を感じさせます
▲エッティンガー 3.6/24は5AT。いまとなってはこのシフトゲートに懐かしさすら感じます
▲パワーウィンドウスイッチのカチッとしたタッチも健在です
▲エッティンガー 3.6/24のメーター周り。専用のスピードメーターは300km/hまで目盛られています
▲こちらはイグニッションをONにした状態
▲15万キロを走破したとは思えないほど、ていねいに使い込まれている印象でした
▲タコメーターにもエッティンガーのロゴが。所有欲を満たしてくれるアイテムですね
▲フロントシートはRECARO Classic。このシートが組み込まれているだけで、室内の雰囲気がまったく変わります
▲ランバーサポートやシートヒーターなども機能していました
▲エッティンガーのロゴが印刷された専用のフロアマット
▲メモリー機能が備わったパワーシート
▲ドアを閉めるときの重厚な感触を味わえるのは、この年代のメルセデス・ベンツオーナーの特権でしょう
▲シンプルながら、高級感が感じられるフロントシート
▲リアシートはノーマルのまま
▲リアのコンソールボックスのカバーとして使われているウッドパネルが、ブラックレザーのさりげないアクセントとなっています。それにしても、シンプル
メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124)に触れてみて
▲さりげなく、端正なクルマです
いまから20数年前、ウィンドウフィルムの施工店でアルバイトしていた当時、納車引き取りでほぼ毎日のようにW124を運転していました。W124がそろそろモデル末期で、駆け込み需要(在庫一掃セールだったのかもしれません)の頃でした。納車引き取りは、大半が都内の渋滞した道を移動する時間でした。それでもアクセルやブレーキのフィーリング、シフトゲートの滑らかな動き、厚みのあるシート。キビキビというわけではないけれど、重厚な走り。仕事とはいえ、20才そこそこの若者でもメルセデス・ベンツに触れられるという感動はいまでも忘れられません。
今回、メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124)に触れてみて、そのときの感動が一気に甦りました。実際に運転してみて、まもなく16万キロを迎えようとしている個体だとはにわかに信じられなかったのです。もちろん、前述のオドメーター同様、四半世紀分の年輪を感じさせる箇所がいくつもあります。ハザードランプの△マークがこすれて消えかかっていますし、エンジンのヘットカバーも同様です。
しかし、これらの部品は交換したりリペアすればいいわけです。もちろん、このままの「味」を残しておくのもいいでしょう。かつてY社の方から「W124は維持費が掛かるからやめとけ」と散々念を押されて購入を断念したことがありました。しかし、メルセデス・ベンツ エッティンガー 3.6/24(W124)に触れてみて、そのときの思いが再燃していることに気づかされました。憧れを現実に。果たして実現できるでしょうか…。