2つのギネス記録を持つ、メルセデス・ベンツ専用チューニングメーカー「BRABUS」とは？

クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるだろう。

メルセデス・ベンツ専用のカスタム、チューニングメーカーである「BRABUS」

聞いたことはあるが、詳しくは分からないという人も多いのではないだろうか。

実はこのブラバス、メルセデス・ベンツのカスタムを行い、世界最速のセダンとしてギネス記録を持っているとんでもないチューニングメーカーなのだ。

今回はブラバスとはどんな会社なのか、またどんなスーパーカーを輩出したのか。

ドイツ現地から解説していく。

■ブラバスとは、世界最大の独立系チューニングメーカー

1977年、時はチューニング業界が盛り上がりはじめた頃。

ブラバスは西ドイツにあるボトロップという小さな町で、自動車セールスマンのボドー・ブッシュマンとクラウス・ブラックマンという2人の男によって設立された。

BRABUSの由来は"BRAckmann"と"BUSchmann"を組み合わせたものである。

当初の目的は、ブッシュマンの父親が働いていたメルセデス・ベンツのディーラーから周辺業務を委託することであった。

しかし、元々カスタムに興味があったブッシュマンは活動範囲をチューニングにまで広げていった。

当時、もっとも生産されていたメルセデス・ベンツの高級車シリーズであるW126のチューニングを手掛け、その名を少しずつ世に知られることとなる。

その後、1985年にW210のEクラスで、2005年にはW211型のEクラスでチューニングを行い、世界最速のセダンとして世界記録を樹立した。

これにより多くの自動車愛好家から注目を集め、2007年には従業員を350名以上抱え、世界最大の独立系チューニングメーカーへと成長した。

現在、ブラバスは正式に自動車メーカーとみなされており、登録の際、車検証上には「BRABUS」と記載されるようになった。

■ブラバスが打ち立てた2つのギネス記録とは

1996年10月、メルセデス・ベンツW210のEクラスをベースとした「ブラバスE V12」が開発された。

V12エンジンを搭載したこの車両は、428kw/582馬力を発揮し、最高速度は330km/hにも及び、「世界最速のセダン」としてギネス記録に登録された。

その後、2005年にフルモデルチェンジを迎えたW211型のEクラスで再び記録更新を目指してチューニングを行った。

V12ビターボエンジンを搭載し、471kw/640馬力を発揮するモンスターカーの誕生だ。

最高速度は脅威の350.2km/hをたたきだし、再び新世界最速記録を樹立したのだ。

2005年に生産されたブラバスE V12ビターボは少数のみ一般販売され、当時の販売価格は298,000ユーロ(現在のレートで約4,500万円)だったそうだ。

流石に高い……が、世界最速のセダンという称号があれば納得の金額ではないだろうか。

■ブラバスのチューニングは意外な乗り物にも！？

ここまでメルセデス・ベンツのチューニングメーカーとして紹介してきたブラバスだが、実はチューニングを施しているのはメルセデスだけに留まらない。

1990年代頃、ブラバスはAMGがダイムラーに買収されるまで、AMGの最大のライバルといわれていた。

しかし、AMGが買収されて以降、ブラバスは厳しい闘いが予想されることから、1994年にブガッティのファクトリーチューナーとなった。

その後、事業拡大を続け、ダイムラーによるコンパクトカーのスマートの買収に伴い、ブラバスとスマートは2002年に合弁会社スマート・ブラバスを設立した。

現在でも、スマートのチューニングには力を入れており、昨年発表された新型スマート#1でも最上位グレードとしてブラバス仕様が用意されている。

最近では、メルセデスはもちろんのこと、ポルシェやロールスロイスのチューニングも手掛けているようだ。

また、著者がもっとも驚いたのはそのチューニングは自動車だけに留まらないということだ。

ボート業界で数々の受賞歴を残したフィンランドのボート会社Axopar Boatsと提携し、「BRABUS MARINE」を設立。

高性能でハイパフォーマンスな船の販売も行っている。

さらに、今年の初めにはオーストリアのモーターバイクメーカーであるKTMとの協力により、超ハイスペックマシン「BRABUS 1300 R Edition 23」を発表した。

290台限定が販売されたこのバイクは、予約注文開始後のわずか数時間で完売となっている。

チューニング業界で数々の歴史を残し、現在でも注目を集め続けるブラバス。

世界最大のチューニングメーカーに今後も目が離せない。

 [撮影・ライター/高岡ケン]