ライフスタイル
更新2019.07.20
旧い輸入車を手に入れ、維持するには?情熱さえあれば必ず「なんとかなる」
ユダ会長
ある程度は壊れる前提で考えておかないと、苦労することは間違いない。
最初に頭によぎるのは、部品の供給だろう。次に、修理してくれるショップ選び。そして維持費だろうか。
そのクルマがレアであればレアであるほど情報量は少なく、維持に苦労するのは確かではある。
しかし、長年、旧車の世界にいてたくさんの人々を見ているが、結論は情熱さえあれば必ず「なんとかなる」である。
買ってしまえば、なんとかなる?
今まで知り合ったたくさんの旧車乗りの中で「壊れてどうしようもなくなり、手放した」人は周りにはいない。
もちろんずっと乗り続けている方々ばかりなので、それなりにノウハウは蓄積しているだろうが、最初はみんな旧車初心者からはじめているのだ。それでも維持はできているのである。
「買えばなんとかなる」と言ってもいいのかもしれない。
以前よりネットワークが充実しているおかげで、欲しい情報が簡単に手に入りやすいことも大きい。同じクルマに乗っている人を探せば簡単にネットで情報が得られ、そして繋がることができる。レア性が高ければ高いほど情報共有を目的に、そこから輪が広がることが多い。壊れても惜しみなく情報を教えてくれる人が多いのである。
現在ではSNSを主体として、そういったグループに入れば、壊れた原因から部品の供給はもちろん、修理してくれるショップにいたるまで、多くの人の知識を共有することもできる。
※平然とショップに情報だけを問い合わせる人がいるが、それはナンセンスだ。料理屋にレシピを教えてくれと電話で問い合わせるようなものである。
旧い輸入車の何が素晴らしいか?
当然のことであるが、現在での基準では同じようなクルマを作ることは不可能に近い。
最近、知り合いのレーシングドライバーがポルシェ356を購入した。「速度に関係なく運転が楽しい」とおっしゃっていた。旧いクルマの楽しみ方は一つだけでなく幾通りもあるが、まさにこれがシンプルにわかりやすい正論かもしれないと思った。
他に挙げられる旧車の魅力といえば、やはりデザインだろう。
著者が思うには、特に1950年代から1970年代にかけて、現在のように技術がまだ成熟しておらず、各メーカーがしのぎを削って技術の革新を目指していた時代であったのではないか。
したがって、当時のデザインも個性的でありメーカーの象徴でもあった。しかし、時代が進むに連れて技術革新が飽和状態になり、個性も薄れていったように思える。
そのため、その当時のデザインは色褪せることなく未だに魅力的なオーラが輝いている。
そのデザインに触れることができるのは、やはり「楽しい」。
旧いクルマに乗ることは「暑い」「寒い」「運転が疲れる」「臭い」「壊れる」…等々、のデメリットがあるが、たった一つの「楽しい!」ですべてをカバーできる魅力があるのだ。
MGBの魅力とは?
著者の乗るMGBは沢山の旧車を乗り継ぎたどり着いた1台である。
1965年式のMk1であるが、手に入れたきっかけは、親しくしていただいたある俳優が亡くなってしばらく経ってから偶然にも売りに出ているのを発見、手に入れたクルマである。
ボディーは朽ち果て、エンジンも掛からない。ブレーキは固着して押すことすらできない。そんな状態を根気よくレストアしていき、以前から考えていたネオヒストリック的な思考で「現代で考えたデザインで当時のスポーツカー」を目指して作ってみた。
もとのオーナーもカスタムが好きな方だったので、オリジナルに拘る必要はないと考えたのだ。パーツはできるだけ当時のものを集め、雰囲気を損なわないように気を使いながら作り上げたクルマだ。
オリジナル派の方々などからはかなり批判はあるし、正統派のイベントには参加すらできない。しかし、自分ではとても満足している。850kgまで軽量化されたボディーは、非力なエンジンでもキビキビと走らせることができる。
目を三角にして走らなくても乗るだけで人馬一体のような楽しさが伝わるのだ。そのデザインから目立ち度は半端ではないが、それも含めて楽しめる。
またMGBの魅力は、とにかく部品が安く、揃わないパーツがないほどアフターマーケットが充実している。
海外で注文すれば、大抵は翌週に届く。消耗品なんて現代車とくらべても信じられないくらい格安で販売されているので、維持に困ることもない。
著者の旧いクルマのオススメは?
よくMGBやスプリジェット(MGミジェットやオースチン・ヒーレー・スプライト)は入門編なんて言う人がいるが、「それはそのクルマに本当に向き合ったことがあるのかな?」と疑問に思うことがある。比較的安価に購入できる最高のスポーツカーであっても奥が深く、付き合えば付き合うほど、その味わいを堪能することができる。
現在は旧車がブームになりつつあり、値段もなだらかな曲線を描きながら上がってきているが、そんな市場でも買えるスポーツカーは多い。
個人的な見解ではあるが、もしあなたに「旧いクルマに乗りたい」という情熱があれば、オススメしたいのは英国のライトウェイトのスポーツカーだろうか。
ぜひ、その魅力に取り憑かれていただきたい。
[ライター・撮影/ユダ会長]