エンタメ 更新 2017.04.14 公開 2017.04.12

伝説のダイハツミゼットを思わせる佇まい、トゥクトゥクと呼ばれる三輪自動車とは

近年、経済成長目覚ましい東南アジアですが、最近は工業化の成長も著しく、先進諸国の工業製品の生産拠点としてでなく、独自の開発の自動車を輸出するまでになった昨今ですが、東南アジアには独自のモータリーゼーションが進んでいるというのはご存知でしょうか?

東南アジア独自のモータリーゼーションとは?


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

特にタイ、マレーシア、インドネシア等はイギリス統治だった影響もあり、意外やラリーやレース等モータースポーツがヨーロッパ統治の置き土産のごとく盛んだったり、裕福な人だとスポーツカーをカスタマイズして乗るカーマニアが少なからず存在します。また、イギリスの影響ゆえに日本と同様左側通行の右ハンドルで、第二次大戦後は比較的地理的にも文化的にも近い日本車の影響を受けている印象があります。そればかりか日産マーチや三菱ミラージュや原付バイク等の低価格帯の車両は、日本メーカーでありながら生産拠点は東南アジアというケースすらあります。

その東南アジア独自のモータリーゼーションの象徴の一つが、今回紹介するトゥクトゥクと呼ばれる三輪自動車のタクシーではないでしょうか?三輪自動車のこの外見、日本人でも年配の人の中にはなんとも言えない郷愁を感じる方もおられる事かと思います。かつて日本の経済成長を支えた伝説の商用車ダイハツミゼットを思わせる佇まい、ズバリこのトゥクトゥクはそのミゼットの末裔そのものです。

日本での「オート三輪」と呼ばれる三輪トラックの歴史


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

第二次世界大戦前から自動車の国産化を試みていた日本において「オート三輪」と呼ばれる三輪トラックは、乗用車の国産化が本格化する前から既に日本では主要な輸送車両として定着し、1930年代には東洋工業(現マツダ)、くろがね(現日産工機)、ダイハツが三大メーカーとして君臨し、戦後に自動車生産が再開されると軽便なオート三輪は日本の戦後復興に大きく寄与し、日本の高度経済成長期の象徴のような存在でもありました。

そして、オート三輪は日本国内のみならず海外にも輸出され、アメリカでも構内作業車として販売された事例もあるそうです。中でも東南アジア方面へは敗戦国日本の戦後賠償として大量のオート三輪が輸出され、特にダイハツミゼットは中古車や解体車の部品が無償で輸出され、東南アジアではトラックとしてでだけでなく、荷台を客室に改造し軽便な旅客輸送車両としても重宝されました。

日本では昭和47年のダイハツミゼット(MP5型)を最後にオート三輪はその歴史を終え、昭和51年生まれの筆者にとっては幼少期で既にオート三輪は珍しいクルマの部類に入り、1980年代にはオート三輪を現役で使用する事業者があればメディアで取り上げられるくらいの過去の存在となっていました。しかし、東南アジアでは安価で構造も簡易なオート三輪は日本では役目を終えた後も走り続け、東南アジアの経済成長が著しい今なお、独自の「進化」をしつつ活躍し、もはや東南アジアの観光名物として、おなじみの風景になっていいます。日本のダイハツミゼットは中南米における空冷のVWビートルに相当する存在なのかもしれません。

懐かしいオート三輪は「新車」で買えるクラシックカー?


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

日本人にとっては懐かしい東南アジアのオート三輪、これを2003年まで作られていたメキシコ製空冷ビートルのように「新車で買えるクラシックカー」として日本に持ち込むことは出来ないか・・・そう着想する人は必ずいる事かと思います。そして、それを実行に移したのが今回ご紹介する愛知県小牧市で山形 孝君さんが代表を務める「株式会社ニューズ」です。

いやはや、筆者の生まれ住む愛知県は流石「日本のデトロイト」と呼ばれるだけあって、自動車文化においても事欠きません。何年か前にトゥクトゥクが公道走行のみならず高速道路の通行可能な仕様で日本に輸入登録できると知っただけでも驚いたのですが、その公道走行可能なトゥクトゥクは販売している業者が自宅から20分ほどの場所に店舗を構えているというのは筆者にとっても驚愕の事実でした。

実際、年に数回は名古屋市内でトゥクトゥクと遭遇することがあり、地元の模型店に愛車のスバル360で乗りつけたら先客にトゥクトゥクがいて模型店の駐車場にトゥクトゥクとスバル360が並ぶという異様な光景になってしまったこともあります。

元々、株式会社ニューズはタイの衣装を扱う業者だったそうです。ところが15年ほど前、ニューズの社員の方がトゥクトゥクを見てこれをどうにか日本で走らせることが出来ないか?と言いだしたのがきっかけで、山形社長もカスタマイズしたヴィンテージビートルを愛用するクルマ好きということもあり、試しに1台日本に入れて登録しようと試みる所から始まります。

ノリでトゥクトゥクを日本で走らせようと思ったら…


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

確かに、日本ではモーターサイクルのような外見ながら普通自動車免許で乗れるという触れ込みで知られる2輪駆動のサイドカーやトライクに適用される道路交通法上は普通乗用車扱いで、車両区分上では自動二輪車になるという三輪自動車という特殊な規格があります。トゥクトゥクもその規格に合致すると言えないこともありませんが、もちろんタイでそのまま作られたトゥクトゥクを日本で登録すること容易にできる事ではありません。

しかし、とにかく「ノリで輸入したんだからノリで登録しよう」と山形社長は陸運支局に何度も足を運び、検査官の指摘の通り日本の保安基準に適合するように改良します。流石はカスタムビートル愛好家とあって、そういう事務手続きにも慣れていたのでしょう。ついにその努力が実り、トゥクトゥクの日本での登録に成功します。

また、このときの日本の保安基準対応の仕様がそのまま「日本仕様」のトゥクトゥクの登録のフォーマットとなり、最初の1台の仕様に準拠した仕様でオーダーすることで「対日本輸出仕様」の状態でタイからトゥクトゥクを輸入するという事も可能となりました。もしかしたら、トゥクトゥクのご先祖様に当たるダイハツミゼットが残した「三輪自動車」という日本の自動車の歴史の彼方に埋もれつつあった規格が遥か異国の末裔のトゥクトゥクが再び祖国日本の地を踏むためのパスポートとなったのかもしれません。

すると、その噂は駐日タイ大使館の耳に入り2003年のタイフェスティバル(http://www.thaifestival.jp/jp/)にトゥクトゥク出展の要請が入ります。最初は山形社長も「トゥクトゥクに興味を持つ人が本当にいるのか?」半信半疑だったそうです。ところが「日本で公道走行可能なトゥクトゥク」は出展されるや大反響。

その話題は当時普及しつつあった個人ブログ等を通して画像付きで広まり、ついには「日本で公道走行できるトゥクトゥクを購入したい」というオファーが山形社長の下に舞い込むようになります。その後、路上を隊列を組んで走行するトゥクトゥクはタイフェスティバルの風物詩となり、衣装販売店から現在のトゥクトゥクの輸入販売店に転業することになります。

ダイハツミゼットの末裔ということはもしかして?


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

ところでこのトゥクトゥク、日本のダイハツミゼットの末裔ということは現在もタイを走り回ってるトゥクトゥクの部品とダイハツミゼットの部品と互換性があるのか?日本に現存するダイハツミゼットの補修部品として使う事は出来ないのか?という筆者が以前から気になっていた質問を思い切ってぶつけてみました。すると答えは「Yes」なんと筆者が一番望んでいた答えが返ってきました。

とはいえ、現在はタイでも排ガス対策が厳しくなり2007年からは2ストロークエンジン車の新規登録は出来なくなり、4ストローク550cc以上の車両のみ新規登録可能ということですが、依然2ストロークエンジンのトゥクトゥクも継続使用はされているためZM系エンジンの部品の入手は可能で、基本設計はバーハンドルタイプのDKA型ミゼットと変わらずフレームの形状も全く同じで機関系のレイアウトも全く同じだそうです。

現在株式会社ニューズで取り扱っているトゥクトゥクには3種類のフレームがあり4速MT、5速MT、AT(!)の順番でフレームサイズが長くなるということですが、4速仕様がオリジナルのミゼットと同じフレームサイズで、シャフト類の規格もミゼットと全く同じとの事でそれゆえに以前5台限定でDKA型ミゼットのレプリカを製作し販売したこともあるそうです。(もちろん完売)

部品は現地生産している物も多く、トゥクトゥクが手作業で作られていることもあって外鈑パネルを手叩きでオリジナルのミゼットと同じものを作ってしまう職人さんも数多くいるため、「ミゼットに関しては維持にもう困らない」という環境が整いつつあるようです。前述のとおりもはやミゼットは「東南アジアの空冷ビートル」同然なのかもしれません。

既にタイも古いクルマに対する文化が根付き始める


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

以前、カブオーナーの友人から東南アジア輸出されたホンダスーパーカブがそのまま現地化し、独自の進化を経て現地でバリエーションを増やし、古い車体も現役で使われているため、カブに関してはノーマル仕様、カスタム仕様問わず手に入らない部品は無く、タイ仕様には125ccエンジンがあるためこれを130cc以上にボアアップして搭載すれば日本で小型自動二輪登録して高速道路走行可能なカブを作ることも可能という話を聞いたことがあります。

また、最近はチェンマイで「日本の旧車」が人気でハコスカやケンメリが走っているそうです。先日筆者が寄稿したTHサービスの記事でも書いた通り、部品は日本の中古車を直すノウハウで自前でリプロ品も作ってしまう環境が整っています。おそらく富裕層なのでしょうが、チェンマイの若者の中には日本製品の古い看板などを収集する日本雑貨コレクターもいるそうです。まるでバブル期の日本で50’sアメリカンオールディーズが流行ってフィンテールの1950年代のアメリカ車が輸入され、50’sアメリカンの雑貨が流行ったのを思わせるものがあります。既にタイも古いクルマを趣味の対象としてレストアするという文化が根付き始めるまで豊かになりつつあるのかもしれません。

色々調べてみると、実はタイの裕福層には昔から、クラシックカーをコレクションする人が少なからずいたようで、そのあたりもイギリスのモタリーゼーションの影響があるのかもしれません。実はタイでは空冷ビートルのリプロ部品を製造している業者もあったり、また手叩きでクラシックカーのレプリカを製作する工房もあったりで、案外「クラシックカーのリプロ部品製造」がタイの主要輸出品目になるなんて未来もあるかもしれません。むしろ筆者としてはクラシックカー、特に往年の日本車のリプロ部品の輸出でタイが経済的に豊かになってくれるのであればそれに越したことはありません。

実は現地では「トゥクトゥク」と呼ばない?


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

一方で山形社長からは意外な話も聞きました。「実はトゥクトゥクという名称を現地の人はほとんど使っていない」というのです。勿論、現地の人に他国から来た観光客がトゥクトゥクと言えば理解してもらえるのですが、現地の人は「サムロー(三輪車)」と呼んでいるそうです。一説には2ストエンジンの音からトゥクトゥクという名称が付いたと言われていますが、どうも現地の人が付けた名称では無いらしいのです。そのあたりの事情は山形社長にも詳細は分からないとのことで、もしこの「トゥクトゥク」という名称の来歴についてご存知の方がいらしたらご一報いただけると幸いです。(※)

※編集部追記:「トゥクトゥクの呼び名は現地人は使わない」という件について、タイ在住の知人より「トゥクトゥクは実質英語です。正式名称はモーターサムローです(エンジン付き三輪車)。」というコメントをいただきました。

さて、このトゥクトゥクですが、基本はダイハツミゼットそのままなので、いくら公道走行可能と言っても、現代の日本で日常使用するのは困難です。新車といっても基本設計は1960年代のミゼットそのままなので、現行車のようにメンテナンスフリーというわけには行きません。しかも受注生産のハンドメイドなのでオーダーして手元に届くには何か月もかかるそうです。但し、それゆえに装飾やオーディオまで自分の好みの仕様でオーダーすることも可能だそうです。

「東洋の神秘」という名にふさわしい美しさと魅力を放つ


株式会社ニューズでトゥクトゥクの魅力に迫る

購入する人は完全なホビーカーとして日常使用するクルマを既に所有している事が前提です。当然、相応に裕福な人が買っていくのですが、中には今まで自分でクルマの手入れをする事などしたことが無く、洗車すらも業者に任せていた人が、トゥクトゥクに一目ぼれして購入したとたん、自動車のメンテナンスに目覚め、それまでエンジンフードさえ開けた事の無かった人が、休日には油まみれになって自分でトゥクトゥクのオイルを交換したりプラグを磨いたり、部品を交換したりするようになったというケースもあるそうです。

すぐ乗りたいけど、新車が届くまでは何か月も先なのでとりあえずすぐに乗れる、中古車のトゥクトゥクに乗って自分の好みの仕様でオーダーした新車が届くころにはもう自分で自分の愛車を一通りメンテナンスできるようになっているケースもあるようです。トゥクトゥクはヨーロッパの文化が生み出した「自動車」に曼荼羅を思わせる極彩色の塗装と独特な模様のクロームの装飾というアジアの文化の融合は「東洋の神秘」という名にふさわしい美しさと魅力を放っています。

しかし、それもさることながら技能工による手作りで出来上がった時が納期で、その一方で納期さえ気にしなければいくらでも自分の好みの仕様で仕上げてもらえる、いつしか日本人が忘れてしまった風景がそこに残っているからこそ、トゥクトゥクには日本人にとって何とも言えない魅力にあふれているのかもしれません。

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

【取材協力】
株式会社ニューズ(NEWS CO.,LTD.)
代表取締役 山形 孝君さん(YAMAGATA TAKAYOSHI)
〒485-0071 愛知県小牧市弥生町6番地
電話番号:0568-41-6789 / FAX:0568-41-6790
Email:news0001jp@yahoo.co.jp
http://www.news0001.com

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