ドイツピックス
更新2017.04.13
電気自動車の発展により10数年後に失業?ドイツ自動車産業を脅かす問題とは
NAO
部品構成が大幅に変わる。
「このまま電気自動車が普及すれば、実質的にクルマの付加価値は約3分の1落ちるでしょう。」と、ドイツ自動車産業研究所の所長ウィリー・ディーツ氏は語っています。特にこの問題は、将来多くの自動車部品下請け業者に大きなしわ寄せが来るであろうと予想されています。従来必要とされる噴射ポンプ、プランジャー、カムシャフト、ターボチャージャーやトランスミッションのような重要な部品が、電気自動車の電動モーターの場合はまったく使われなくなってしまうのです。そうなると、今までそれを製造していた下請け業者には受注がなくなり、製造技術もそのまま失われていってしまうのです。ディーツ氏の指摘通り、車の生産時の付加価値も下がってしまう結果となります。そこから衰弱していくガソリンエンジン技術を長年支えてきた自動車産業界は、人件費削減から始めていくことになると危惧しています。
オイルの価格低下が電気自動車への乗り換えに歯止め?
今までエンジン部品を製造していた会社は、新しいビジネス方針を決めていかなければ、今までのような収益はまず見込めない上、大規模失業の道を辿るだろうというのが専門家の見解です。しかし、ドイツでも大衆的に広まるような電気自動車の生産量には未だ達しておらず、現在の自動車業界にはまだ打開案を考える時間の余地はありそうです。ガソリン式自動車から、電気とガソリンのハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、そして完全なる電気自動車に切り替わるまではまだ長い移行期間があることが予想されています。そしてこの移行期間の長さの決め手となるのがオイルの価格です。「このままオイルの価格が低い状況であれば、従来の自動車産業は2030年、または2040年までは生き残ることはできる。今この状況に遭遇している各企業は新しい産業環境に適応するにはまだ十分時間はある。」というのがディーツ氏の見解です。
しかしながら同氏は、その間、日本や韓国などの他国が、ハイブリットテクノロジーおよびバッテリー技術の分野に関して優位なポジションに立つ可能性があると懸念しています。ドイツ車の大きな輸出先でありながらもライバル企業の多い日本も、技術面に関してはトップレベル。次世代の大きなビジネスである電気自動車産業に向けて、どの国も我先にと技術開発をしているはずです。「だからと言って我々も戦わずに負けるわけにはいかない。この大きなビジネスチャンスを奪われないよう、すぐさまドイツの自動車産業はこの問題に踏み込まなければならないのです。」と最後に意気込みを語ったディーツ氏。
これからも更なる成長を続けていくであろう、電気自動車産業。クルマ大国ドイツとしては、これからも世界をリードしていく立場であり続けるために今の自動車産業システムをどう未来に活かしていくかが課題となってくるはずです。
出典・参照元:http://www.auto-motor-und-sport.de/
[ライター/NAO]