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コラム

更新2020.08.24

最後のスモールフェラーリ、F355はシリーズの「中間地点」

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外車王SOKEN編集部

1990年代なかばにデビューしたF355。8気筒エンジンを積むフェラーリとしては6代目、ちなみに今年のジュネーブショーで発表された488GTBは10代目になります。いまの時点から見て、F355はシリーズの“中間地点”にあたるモデル。そして私は、このモデルこそ8気筒シリーズの、ひとつのターニングポイントだったと思うのです。

フェラーリの主役は、12気筒ミッドシップ
誤解を恐れずに言うなら、フェラーリはエンジンのメーカーです。しかも12気筒が正統、本家本元。8気筒はまあ、言ってみれば前座のようなもの、という時代が1970年代からしばらく続いていました。12気筒モデルは、365GTB4から、80年代の男の子なら知らない者はいないテスタロッサなどがフラッグシップとして君臨していました。FRの12気筒モデルのラインアップもありましたが、それらは主に北米向けのグランドツーリングカーで、メインストリームはやはりミッドシップモデルでした。

奥が深い、“入門用”8気筒シリーズ
一方の8気筒モデルは、“スモール・フェラーリ”と呼ばれ、いわばフェラーリワールドへのエントリーモデルの位置づけでした。真のエンスージャストしか許されないフェラーリ12気筒ワールドを体験しようとするなら、まず8気筒でトレーニングすべし。といった“空気”がメーカーと顧客の間にあったように思います。

そのせいかどうかは知らないけれど、8気筒モデルのドライビングは繊細で難しいものでした。ハンドルは「小指」で動かせ、などとも言われていたくらいです。手の指の中でも小指は最も繊細な動きをコントロールする手指。それを使ってデリケートにコントロールしないとスピンしてしまう、といった意味です。

「難しい」ということは「楽しい」ことの裏返しでもあります。いつスピンするか分からないようなヒリヒリするようなドライビングも、一度でも思うようにコーナーをクリアすることができたら、大きな達成感につながります。また、“本家”の12気筒モデルより小さくて軽いボディも、やる気を刺激してくれます。そういったことから、エントリーモデル扱いとはいえ、308を起点とする8気筒シリーズも奥の深いクルマでした。



8気筒シリーズ、正常進化の6代目
そんな8気筒シリーズの6代目としてF355がデビューしたのは1994年のこと。このモデルのために新たに開発された3.5リッターV8エンジンは5バルブ。シリンダーにより多くのガソリンを送り込むために多バルブ化が追求された時代で、当時のフェラーリF1エンジンも5バルブでした。そのエンジンは、380PSのパワーを8,200回転で発揮するという高回転タイプ。鍛造のアルミピストンやチタンコンロッドなど、素材を奢ったこともあり、回すと独特の金属音を張り上げ、「エンジンのフェラーリ」の一族であることを主張していました。F1からのフィードバックといえばもう一つ、1997年にセミオートマの「F1マチック」も投入されています。

ボディはもはやおなじみのピニンファリーナ・デザイン。308から始まったコンパクトなフォルムと美しいラインの正常進化モデルといえました。それまでのシャープなエッジが立ったデザインから、ディテールにラウンド形状を取り入れ優美になったデザインは、さらに完成度を高めたという印象でした。

その後も進化を続け、パワフルになった。けれど・・・
F355のあと、8気筒シリーズは360モデナ、F430、458イタリアへと、さらに排気量を増やし、パワーを追求していきます(最新の488GTBはダウンサイジングターボとなりましたが)。それに合わせるように堂々としたデザインとなり、以前の12気筒モデルのような存在感と、ある種のステイタスを備えるまでに成長を遂げました。さらにスキッドコントロールや姿勢制御などの電子デバイスにより、運転のしやすさも格段に向上しました。もはや初心者が少々乱暴な運転をしても、クルマの方でたしなめるような反応さえ見せるほどです。

こうした8気筒シリーズの変遷を見るにつけ、F355は最後のスモールフェラーリだったように思うのです。キュッと引き締まって見えるコンパクト感のあるボディ、高音でカンツォーネを唄うエンジン、そしてスポーツドライビングでの達成感、すべてF355を最後に徐々に変わっていったように感じられてなりません。私のほかにもそのことに気付いている人が多いせいか、ユーズドカー市場ではいまだに高い人気を誇っています。

[ライター/CL編集部 画像出典/山田勇]

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