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更新2020.08.16

公開2020.08.16

愛車を手放した瞬間、それはもう「別の何かに変わっている」という残酷な事実

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松村 透

それまで生活をともにしてきた愛車との別れのきっかけや理由は人それぞれ。

筆者の場合、子どもが産まれたのを機に「おそらく、生涯買うことはない(買うつもりはない)」と思っていたミニバンに乗り換えたことがきっかけでした。家族やベビーカー、その他たくさんの荷物を積んで移動できることはもちろん、車内も広い。さらに電動スライドドアがあれば狭い駐車場でも乗り降りが楽だし、子どもが勢いよくドアを開けて、となりのクルマにドアパンチ!…といったトラブルも回避できる。

必要に迫られて手に入れたとはいえ、ミニバンが便利な乗り物であることを改めて実感しました。遅まきながら、日本の路上にミニバンがあふれている理由がようやく分かったように思います。自分の好みより、家族のことを優先したクルマ選びが必要なときもある…。こうして、ミニバン食わず嫌いだった筆者はあっさりと「これはアリ」という思考に切り替わったのです。

フォルクスワーゲン ゲート事件の真っ只中に購入したゴルフ7

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲カメラマンさんが見つけてくれたロケ地。ちゃっかり便乗して、取材後に撮影したときのもの


ゴルフ7を購入したのは2015年秋、忘れもしないフォルクスワーゲン ゲート事件の真っ只中でした。土曜日の午後にもかかわらず、点検待ちのお客さん以外は閑散としたショールーム。商談しているのは筆者のテーブルだけ…そんな状況でした。ちょうど半期の決算月ということもあり、担当セールスさんは「在庫車であれば…」という条件付きながら、現行モデルの新車とは思えない破格の条件を提示してきたのです。「この条件なら何とかなるかも…」。当時の筆者は独身。お伺いを立てる相手もいなかったので「ローン(の審査)がとおったら」という条件つきで審査したところ、まさかのクリア。これも何かの縁かと思い、また破格の条件にも乗せられ、その場の勢いで購入を決めてしまいました。

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▲ゴルフ7売却当日、ディーラーに到着した時点で撮影したときのもの。3年半、66529kmをともにしました


以来、3年半、距離にして66529kmをともにしたゴルフ7。所有年数に対して過走行なのは「日常使い + 仕事の移動」によるもの。所有した期間は短かったけれど、行動をともにした距離と時間はそれなりのものになっていました。ちょうどこの頃、公私ともにさまざまな変化があった時期に所有していたので、歴代の愛車遍歴のなかでもとても愛着のあるクルマとなったのです。

まさか自分がミニバンを所有することになろうとは…

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲乗り替え時、担当セールスさんの粋な計らいで新旧愛車の2ショット撮影が実現


それまで所有していたフォルクスワーゲン ゴルフ7から、ゴルフ トゥーランに乗り替えたのが2019年5月。短期間で乗り替えることになったので、新車のゴルフ トゥーランは予算オーバーのため断念。そこで、3年落ちの認定中古車を選ぶことに。ちなみに、前愛車のゴルフ7と、現愛車のゴルフ トゥーランは同じセールスの方から購入しました。このセールスさんとの付き合いがなければ、他メーカーのクルマ(ミニバン)を選んでいた確率は極めて高いと思います。

ゴルフ トゥーラン納車日の前日の夜は、これまでの感謝の気持ちを込めて、時間の許す限りゴルフ7を洗車してから送り出すことに。別れの前日、いつも以上にすみずみまで洗車をするのは、自分にとってちょっとしたセレモニーであり、気持ちの区切るための「儀式」でもあります。

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▲ゴルフ7売却前夜、洗車後、ガソリンスタンドで内装を掃除機できれいにしたときのもの


そして納車当日。ディーラーでゴルフ トゥーランの納車に関する手続きを済ませ、これでゴルフ7とはお別れ。手放しておいてナンですが、その日のうちにディーラーの認定中古車の1台として売り出されていたページを見つけたときは複雑な気持ちでした…。

ちなみに、ゴルフ トゥーランの定員は7人。つまりサードシートが装備されています。しかし、ディーラーで受け取った時点でサードシートを格納して以降、本日にいたるまで1年3ヶ月、1度も使ったことがありません。なぜなら、サードシートが使える状態にしていると、ベビーカーをはじめとする荷物を積むスペースがほとんどなくなってしまうのです(もちろん、いざというときにあると便利な装備だという認識に変わりはありません)。少なくともゴルフ トゥーランのサードシートは、2+2クーペのリアシートのように「いざというときにあると便利な装備」というのが率直な感想です。

前愛車のゴルフ7が売れたかどうか、中古車検索サイトでチェックする日々…

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲ディーラー認定中古車として、手放したその日に売りに出されたゴルフ7。これがなかなか売れず…


自分でも女々しいな…と思いつつ「中古車検索サイトのお気に入りリスト」のひとつに元愛車が加わることに。毎晩、売れていないことを確認すると、ほっとしたような、もしや過走行で人気がないのかなといらぬ思案をしたり…そんな日々がつづきました。そしてある日の晩、お気に入りリストから元愛車が消えていたのです。どうやら、無事に売約済みとなった模様。このとき「もうこれで会うこともないだろうな…」という、一抹の寂しさを感じたことも事実です。

認定中古車として売り出したので、ディーラーに里帰りしたときにバッタリ会えるかもしれないと…と思っていたのですが、それは叶いませんでした。それが1年後、まさかの展開に…。

別れから1年後、法定点検のサービス代車として再会することに

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲別れから1年後、サービスアドバイザーさんの粋な計らいで代車としてお借りすることになった元愛車のゴルフ7


ゴルフ7との別れから1年後、偶然の再会はある日突然やってきました。ゴルフ トゥーランを法定点検に入庫させるべく、フォルクスワーゲンディーラーへ。そこにサービス代車として用意されていたのが、元愛車であるゴルフ7。実は、サービスアドバイザー(一般的にはサービスフロント)さんの粋な計らいで、セカンドオーナーさんの代替で出戻ってきたのち、サービス代車として使われている元愛車を割り当ててくださったのでした。

ナンバーは変わっていても、ちょっとした生活傷や、手を加えた部分など…。それは、間違いなく自分が所有していたゴルフそのもの。少なくとも、乗り込むまではそう思っていたのです。

真っ先に変わったと感じたのは「車内の匂い(臭い?)」

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲1年振りの再会。内装も当時のまま。しかし、何かが違う


サービスアドバイザーさんからキーを受け取り、いざ車内へ。ゴルフ トゥーランの着座位置に慣れてしまうと、ハッチバックタイプのゴルフがずいぶんと低く感じます。ドアを閉めた瞬間、即座に「あ、車内の匂い(臭い?)が変わった」。そう感じたのです。それがセカンドオーナーさんのものなのか、サービス代車していろいろな方が乗っているからなのかは分かりません。慣れ親しんだクルマでありながら、もう別の何かに変わったことを実感する瞬間でもあります。どこか複雑な気持ちのまま、ひとまず限られた時間のなかでの再会を楽しもうとディーラーを後にしたのでした。

3時間ほどのドライブのあいだに起こった心境の変化

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲今回、うすうす気づいてはいたけれど、愛車を手放した瞬間、それはもう別の何かに変わっているという残酷な事実を知ることになろうとは…


法定点検に要する時間は約2時間。プラス1時間いただき、計3時間ほどゴルフ7とのドライブを楽しみました。久しぶりのゴルフ。これほど動きが軽いとは!ゴルフ トゥーランの車両重量が1560kgなのに対して、ゴルフ7(1.2Lモデル)は1240kg。カタログの数値上で実に320kgも差があります。加えて重心の高さや全長差など、同じゴルフの名を冠していながら、街乗りでも挙動がまったく違うことを再認識したのでした。

広場にクルマを停めて改めて眺めてみると、前オーナーさんが手を加えたところは皆無の模様。加えて、筆者が購入時に選んだオプションや後付けのパーツなどもそのままのようでした。クルマには意思なんてないと思うけれど、仮にあった場合、ファーストオーナーである筆者との再会をどう思っていたのでしょうか…。知りたくもあり、内心、知るのも怖い。

周辺を少しドライブしているうちに、気がつくと返却時間が迫っていました。当初の再会できる喜びの気持ちはどこへやら。複雑な気持ちを抱いたまま、ガソリンスタンドで給油を済ませ、ディーラーへと引き返すことにしました。果たして、これがこのゴルフ7との最後のドライブとなるのか、それとも…。

愛車を手放した瞬間、それはもう別の何かに変わっているという残酷な事実を知る

外車王SOKEN カレントライフ 松村透
▲少しずつ、所有していた頃の記憶が風化していくことで「美しい思い出」として脳裏に刻まれるのかも…


無事に法定点検が終わり、ディーラーにゴルフ7を返却して現在の愛車であるゴルフ トゥーランに乗り替えたとき、着座位置の高さとどっしりとしたクルマの動きにホンの一瞬だけ戸惑いました。が、それも一瞬のこと。つい先ほどまで乗っていたゴルフ7の感触があっけなく「上書き保存」されていることに気づいたのです。

1台のクルマとじっくり接することで深い愛着が生まれるけれど、手放したときの反動も大きい。売らずに済めばいいけれど、今回のようにそうはいかないときもある。愛車を手放して他の方の手に渡った瞬間から、それは別の何かに変わってしまう。それに加えて、所有していたときの記憶が少しずつ風化していく…。今回、その残酷な事実を身をもって思い知らされたのでした。

余談:その後、スタッフの方からお聞きしたところによると、このゴルフ7の購入希望者が現れ、いまはサードオーナーさんのところで暮らしているそうです。

[ライター・撮影/松村透]