
コラム
更新2017.04.08
ジュネーブで衝撃デビュー!ルーフ CTR 2017は初代CTRとどこが違うのか?

北沢 剛司
モノコックとボディパネルはカーボンファイバー製で、リアエンジン車としては初のカーボンファイバーモノコック採用となります。ルーフとして初めてシャシーを完全自社設計するなど、ルーフにとっても記念碑的なモデルといえます。
CTR 2017のコンセプトは、RUF Automobileの社長兼オーナーであるアロイス・ルーフ氏が長年にわたって温めてきたもの。イエローバードの誕生から30年目という節目の年に満を持して登場したのです。

そこで今回は、ルーフ CTR 2017の誕生を記念して、1987年に登場した初代ルーフ CTRとの各部の違いをディテールごとに紹介していきたいと思います。
ポルシェ 959とフェラーリ F40を抑えて世界最速車に
ルーフ CTR 2017は、CTRとしては第4世代にあたります。初代CTRはポルシェから供給された930カレラのホワイトボディをベースに製作されたモデルで、排気量を3.4Lに拡大した空冷水平対向6気筒エンジンにはインタークーラー付きのターボチャージャーを2基搭載。最高出力469 ps/5,950 rpm、最大トルク553 Nm/5,100 rpmを発揮していました。また、高速域での空気抵抗が少ないカレラボディをベースに、リアフェンダーを独自にワイド化した特製ボディも特長でした。
CTRは、1987年にロード&トラック誌がフォルクスワーゲンのエーラレッツェン・テストコースで行なったスーパーカーの最高速テストに参加。フェラーリ・テスタロッサおよび288 GTO、ランボルギーニ・カウンタック 5000クワトロバルボーレ、そしてポルシェ 959などを抑え、339.6km/hで世界最速車の座を獲得。世界に衝撃を与えました。さらに1988年には、イタリアのナルド・サーキットで行われたアウトモーター・ウント・シュポルト誌主催の最高速テストにおいて、フェラーリ F40や特別チューニングが施されたといわれるポルシェ 959などを抑え、342km/hの新記録で再び世界最速の座に輝いたのです。
名実ともに原点回帰
CTRは当初10台限定といわれましたが、生産台数はのちに30台に増やされました。そのうち日本には実に11台が上陸。バリエーションも豊富で、通常のカレラボディをはじめ、ターボ用のホワイトボディで製作されたものからフラットノーズ仕様まで、さまざまなCTRが上陸しました。日本では昔からイベントなどで見かける機会も多いCTRですが、実は大変貴重なモデルなのです。
その後、1995年には当時の993型ポルシェ911ターボをベースにしたCTR2を開発。さらに2007年には、997型ポルシェ911をベースにエンジンをミッドシップに搭載したCTR3をデビューさせます。特にミッドシップ化したCTR3はもはやスーパーカーの領域で、その後継モデルがスーパーカー路線になることも考えられました。

▲993型ポルシェ911ターボをベースにしたCTR2は最高出力520psを発揮。のちに580psに引き上げられました。

▲997型ポルシェ911をベースに、エンジンのミッドシップ化など大幅な設計変更を施したCTR3。最高出力は最終的に777psに達しました。
まずは両者のスペック比較から
CTR 2017の最大の特長は、新開発となるカーボンファイバー製モノコックの採用です。ボディパネルもカーボンファイバー製となり、車重はわずか1,200kg。同じく2017年のジュネーブ・モーターショーでデビューした新型ポルシェ911 GT3の車重1,430kg (PDK)/1,413kg (6MT)と比較すると、CTRがいかに軽量であるかが分かります。

両者のディメンションを比べると、ボディサイズは全体的に大型化したにも関わらず、車重はわずか50kg増に止まっています。CTR 2017は水冷エンジンで補機類などの重量増があることを考えれば、カーボンファイバー製の車体がいかに重量軽減に貢献しているかが伺えます。
30年間で進化したポイントはココだ!
それでは、CTR 2017とCTR 1987のディテールチェックをしていきましょう。
今回はジュネーブ・モーターショーに展示されたCTR 2017とCTR 1987プロトタイプとともに、以前「カレントライフ」のオーナーインタビューでもご紹介させていただいた、岩瀬様所有のCTRとの比較も併せて行います。



CTR 2017のほうが低くワイドですが、全体的なシルエットは初代CTRを踏襲しています。CTR 2017はホイールベースが70mm長いため、ドアからリアフェンダーの間が長く感じられます。また、CTRプロトタイプではフロントバンパーにフォグランプが装備されていますが、レッドのCTRではブレーキ冷却用のエアインテークになっています。



リア周りのデザインも初代CTRのディテールを現代的に解釈したもの。CTR 2017ではスラントしたテールライトを採用していることが分かります。初代CTRのリアフェンダーはルーフがカレラボディをベースに独自にワイド化したもので、全幅は930カレラの1,650mmから1,692mmとなっていました。その点、リアフェンダーがワイドなCTR 2017は、ターボルックのような印象を受けます。


CTR 2017のクラシカルかつモダンなフロントマスク。911のカエル顔に思い入れのあるファンのなかには「この顔を次期911にして欲しい」と思う人も少なくないのでは。



リアバンパーのデザインは初代CTRの特徴的なディテールを見事に再現する一方、LEDテールライトは横基調のデザインで、ウィンカーは内側から外側に流れるように点灯するダイナミックターンシグナルになるなどの違いがあります。また、CTRプロトタイプはリアバンパー左右のスリットがないことにも注目です。


CTR 2017のLEDヘッドライトベゼルは薄く、リングに組み込まれたLEDが点灯します。黒フチのベゼルは964のカレラ4ライトウェイトなどを彷彿とさせるデザイン処理で、思わずニヤリとしてしまいます。


初代CTRのミニマムなスポーツミラーは、CTR 2017ではCTR2などと同様に実用的なサイズになりました。


CTR 2017のドアハンドルは、前側の凹部を押してハンドルを引き出すインテグレーテッドタイプを採用。


CTRプロトタイプのNASAダクトを踏襲したリアフェンダーのエアインテークは、インタークーラーの冷却用。また、リアクォーターウィンドウはボディ内側に回り込み、Cピラー内側にエアインテークが設けられていることにも注目です。


ボディ同色の固定式リアスポイラーは一体成型タイプです。


CTR 2017ではセンターロック式の19インチホイールを装着。ブレーキはフロントが6ピストン固定キャリパーで、リアは4ピストン固定キャリパー。カーボンセラミック製ブレーキディスクのサイズは、フロントが380 mm、リアは250 mmとなります。



どちらのCTRもリアに水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載。初代CTRはホワイトボディを加工してインタークーラーなどを取り付けていました。ちなみにエアクリーナーボックスは黄色が標準で、この個体ではオーナーのこだわりでレッドに塗装されています。
CTR 2017のサスペンションは、前後ともプッシュロッド式のダブルウィッシュボーンを採用。フロントフード内にコイルスプリングおよびダンパーユニットが露出するスパルタンなつくりとなっています。


初代CTRはマター製ロールケージが室内を貫くスパルタンなつくりであるのに対して、CTR 2017は高強度スチール製ロールケージがピラー内に組み込まれているのが大きな違い。CTR 2017のロールケージは、スペースフレーム構造となるリアセクションとモノコックを強固に結合しています。
伝統のアナログ式5連メーターはCTR 2017でも踏襲。文字色はルーフのコーポレートカラーであるグリーンで、タコメーター、スピードメーター、油圧計、油温計、水温計、そして燃料計が装備されます。ちなみに撮影した赤い初代CTRは、6速MTを装備していました。


どちらもバケットシートを装着していますが、CTR 2017ではシェルがカーボンファイバー製となり、クラシカルなチェック柄のファブリックがアクセントとなっています。ちなみにどちらも2シーターで、リアシートの設定はありません。


写真の初代CTRのドア内張りは標準のポルシェ911と同じですが、CTRライトウェイトではストラップを引いてドアを開くタイプとなり、CTR 2017でもライトウェイトタイプの内張りとなります。インテリアと同様にドア内張りも全面アルカンターラ張りとなり、徹底した軽量化が図られています。

このようにポルシェ好きにとってはたまらない内容を備えたCTR 2017。初代CTRと同様に30台限定で、価格は75万ユーロ(約9,000万円)。ジュネーブでの発表時点ですでに10台あまりのオーダーが入っているといいます。このクルマをポンと買える人は限られますが、新旧のCTRがガレージに並んでいる夢なら誰でも見ることができます。気分に応じて両者を乗り分けるような体験ができれば、本当に幸せですね。
[ライター・カメラ/北沢 剛司、撮影協力/岩瀬 康行]