
更新2023.11.22
若さ踊る「リゴレット」(2/19・東京文化会館)
中込 健太郎
パルマ王立歌劇場との提携公演で開催された、2015都民芸術フェスティバルのプログラムにもなっている今回の東京二期会の「リゴレット」。ヴェローナ生まれ、28歳の若きマエストロ、アンドレア・バッティストーニを迎えたほか、キャストも若い魅力にあふれた顔ぶれがそろった。
直前になってかなりタイトな日程ながら、2月19日、初日の公演を見ることができたので振り返る。
「リゴレット」であって「マントヴァ公爵」ではない!
幕があけると間もなく「あれかこれか」、そしてあらゆるオペラアリアの中でも屈指の名曲「女心の歌」など、テノールの「マントヴァ公爵」はこのオペラの華であるところは、異論はない。異論はないが、時にこのオペラがマントヴァ公爵を主役としているかのような演出、配役になっている公演も少なからず散見される。その点今回は、明らかに「マントヴァ公爵のさじ加減」に妙を感じる公演ではないだろうか。マントヴァ公爵は若手期待の星、古橋郷平が軽妙な歌唱と、スマートな風貌で望んだ。名テノール、アルフレード・クラウスを思わせた。
そしてなんと言っても、その「マントヴァ公爵のさじ加減」を強く実感させられるのは、リゴレットを歌う、上江隼人の「父として思うが故の怒り」をまるで語るような含蓄のあるベルカントは「説得力」などではなく「父としてそうあるべき」もの。圧倒的な存在感のリゴレットがいてこその今回の配役が光るというものではないだろうか。
ほかの配役も難がなく、総じて高いバランスの取れたもの。
見た目は奇をてらわない舞台ながら、映像時代の感性が作り出すもので、今回はピエール・ルイジ・サマリターニとエリザベッタ・ブルーサ二人の手による。
バッティストーニのタクトは「若い」と思う。テンポがよく、キレがある、しかし時に、歌唱にかぶる場面があった。しかし、ソリスト、合唱をしっかり御していて、オペラ指揮者としての今後の成熟に期待が高まる。
とにかく「若さの踊るリゴレット」。それが今回の公演の所感である。
リゴレットは「かわいそう」なばかりではないのだと思う。娘を守れば悪魔にもなる。そんな、きっとすべての父親が当然にそうするであろう動機が非常にわかりやすかった、そういってよいのではないだろうか。
▼東京二期会ホームページ
http://www.nikikai.net/index1.html