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ドイツ現地レポ

更新2020.09.29

公開2020.09.29

面積は東京都23区の約半分。欧州車より日本車が人気なマルタ共和国とは?

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守屋 健

地中海に浮かぶ美しい小さな島国、マルタ共和国。今年9月、筆者はとある事情でこの国へ行くことになりました。

“マルタ共和国

最初はレンタカーを借りるつもりでいたのですが、現地の事情を知っている人から「マルタに初めて行くなら、クルマを運転するのはちょっと難易度が高いかも」との助言をもらうことに……。そう、筆者自身マルタの交通事情については、まったくの情報不足だったのです。

“マルタ共和国

結局十分な情報収集もできないまま、実際にマルタに行ってきました。今回は自分では運転せず、現地にお住まいの方の運転で島内をまわったり、タクシーやバスに乗ったり、という感じでしたが、最終的には「一回下見をしておかないと、初めての運転はちょっと戸惑うかもしれない」という結論に達しました。同じヨーロッパとはいえ、筆者が普段生活しているドイツとはまったく異なる「常識」がそこにあったのです。今回は、おそらく多くの人にとって馴染みが少ないであろう「マルタのクルマと交通事情」について、多くの写真とともに紹介していきます。

東京都23区の半分しかない、小さな島国。それがマルタ共和国


“マルタ共和国

マルタ共和国は、東京都23区の半分ほどの面積しかない島国で、人口は約50万人。地中海のほぼ中央、イタリア・シチリア島の南に位置していて、古くから交通の要所として栄えてきました。そのためマルタの歴史は複雑多様で、イスラム帝国、聖ヨハネ騎士団、フランス、イギリスなど、統治者が時代ごとに変わり、当時の面影が島の各地に残っているのも大きな特徴です。人が住み始めた時期もかなり古く、紀元前4500年頃の巨石神殿群が世界遺産に登録されるほど、長い歴史が連綿と続いている島でもあります。

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首都バレッタは市街地そのものが世界遺産に登録され、多くの観光客を集めています。観光業の他には、金融業や映画産業も主な産業となっていて、筆者が訪れた際には道路を封鎖して「ジュラシック・パーク」の次回作の撮影が行われていました。公用語はマルタ語と英語で、日本でも英語学習のための留学先のひとつとして注目されています。住民の9割以上は敬虔なカトリックで、地理的にも近いこともあり、イタリア語を話せる人も少なくありません。

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さて、そんな小さな島国のマルタですが、どんなクルマが走っているのでしょうか?マルタはEUに加盟はしていますが、イギリス統治下時代の名残で、現在も左側通行。そしてクルマも右ハンドルが基本です。そうした理由から、マルタでは多くの日本車が街中で走っています。特にトヨタのクルマは信頼性の高さから非常に人気が高く、現地の男性から「君は日本から来たの?トヨタのクルマは最高だよ!トヨタは世界一のメーカーだ!」なんて熱く話しかけられるほどでした。日本車の他には、メルセデス・ベンツやVWなどのドイツ車、プジョーやルノーなどのフランス車、フィアットなどのイタリア車、ヒュンダイなどの韓国車、シュコダなどのチェコ車などが多く走っています。

“マルタ共和国

海に囲まれた島国ゆえに、クルマがサビにやられてしまうことが多いようなのですが、 サビに強く、そして高温にも強い日本車は中古車市場でも大人気。右ハンドルということもあり、特に何の改造をすることなく現地で使い始められるのも大きな利点だそうです。現地にはトヨタの正規ディーラーがあり、当初は新車のみを販売していたそうなのですが、中古のトヨタ車の人気があまりにも高く、結局現在は新車と中古車の両方を取り扱い、並行してメンテナンス等も行っているのだとか。

マルタの人たちが中古車に乗る理由は「ギブリ」が吹くから?


“マルタ共和国

なぜ中古車が人気なのかというと、先ほどの「クルマがサビやすい」という事情もあるのですが、もうひとつ、この島に吹く夏の季節風でクルマが傷んでしまう、という理由も挙げられます。サハラ砂漠の砂を含んだ南から吹く熱風は、イタリア語で「ギブリ」と呼ばれ、洗車しても数日でクルマを黄色の砂だらけに変えてしまうのです。現地の方曰く「新車を買ってもこの風が塗装をボロボロにしてしまうから、安い中古車を洗車せずに乗るんだよ」。マセラティの車名のルーツであり、某有名スタジオの語源ともなっている「ギブリ」ですが、現地ではかなりの嫌われものみたいですね。

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クルマにとって過酷、という点では、マルタの道路事情もなかなかのもの。島内の道は一部の幹線道路を除きかなり狭く、都市部は一方通行も非常に多いため、ナビゲーションシステムの助けなしで外国人が走るのはかなり困難です。また古くからの都市部には駐車場が圧倒的に足りておらず、駐車スペースを探して周辺をさまようことも……。また、島内の交差点はほとんどがラウンドアバウトで、信号機はほとんど見かけません。ラウンドアバウトは常に混み合っていて、タイミングを合わせて進入するのは、ドイツのラウンドアバウトに慣れている筆者にとっても、難易度は非常に高そうでした。

“マルタ共和国

鉄道や地下鉄が存在しないため、公共交通機関はバスしかないけれども、道が狭く、度重なる事故や突然の工事で、バスは運行ダイヤ通りには走らない。そのため、現地の人々は成人して仕事を始めたら、自分が会社に遅刻しないように中古車を買うのだそう。しかし、そのせいで中古車が増えすぎて、慢性的に渋滞してしまうという悪循環に陥っているため、多くの道路では道幅を広げる工事が急ピッチで進められています。ただ、工事現場周辺もやはり渋滞の原因となっているので、マルタから渋滞がなくなるのはもう少し先のことになりそうですね。

美しい街並みに溶け込むクルマたちは、他では見られない独特の景色だ


“マルタ共和国

狭い道路や足りない駐車場、増え続けるクルマが引き起こす慢性的な渋滞、ギブリや海の塩によるクルマの傷みなど、クルマにとっては決して恵まれた環境ではないマルタですが、それでも現地のクルマたちはおおらかなマルタの人々によって大切にされているのは明らかです。数十万キロを走行してもいまだ現役のクラシック・ミニやマツダ・ロードスター、古いシュコダ・ファビアやトヨタ・ハイエースなどが、マルタの白い石灰岩でできた街並みに馴染んでいる様子は、他国では見られない独特の景色でした。

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また、現地で採れる魚貝類をふんだんに使用した料理はとにかく美味しく、どこか日本を彷彿とさせる懐かしさも感じられました。クルマの交通事情についても、駐車場の不足や慢性的な渋滞、右ハンドルなど、日本との共通点が少なくないと個人的には感じたのですが、みなさんはどう感じましたか?次回の来訪時には、交通量の多いラウンドアバウトにひるむことなく、現地での運転にも挑戦してみたいと思います。それではまた!

[ライター・カメラ/守屋健]