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コラム

更新2020.08.20

日欧超小型車指向!クワドリシクルと1~2人乗りの超小型モビリティ

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外車王SOKEN編集部

日本では現在、「超小型モビリティ」の実証実験が進められています。「自動車よりコンパクトで小回りが効き、環境性能にも優れて地域の手軽な移動の足」と国土交通省によって定義された1~2人乗りの超小型車両です。同ジャンル車は欧州で「クワドリシクル」等と呼ばれています。

日本の軽自動車よりさらに簡素な四輪自転車「クワドリシクル」



日本には輸入されていませんが、欧州には昔からフランスを中心に、「クワドリシクル(四輪自転車)」等と呼ばれる超小型車両規格が存在します。時代とともに「自動車」へ近づき、昔の日本の「軽免許」のように免許制度が自動車と異なる点は、軽自動車に似ているかもしれません。日本の軽自動車は、特に550cc時代初期まで、シティコミューターとしての性格が強いものでした。

しかし、年々性能が「自動車」に近づき、今やシティコミューターとしては明らかにオーバースペックです。ただ、クワドリシクルは今でも、二輪車やミニカーより高い全天候性を持ちながら、自動車より簡素な事が求められています。日本で模索されている超小型モビリティに、かなり近い存在と言えるでしょう。
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「小さな自動車」と「クワドリシクル」はどう違う?


クワドリシクルは「最大2人までの乗車定員を持つ、乗用車または商用車」です。国によって多少の違いはありますが、クワドリシクル(あるいはその同ジャンル車)は以下、「自動車とは異なる特徴」を持ちます。

・排気量や出力の制限(400~600ccが多く、EVも増えている)
・全長の制限(かつては2.5m程度、今はもう少し大きい)
・最高速度の制限(45km/h以下が多く、高速道路は走れない)
・免許制度が独特(無免許、あるいは原付免許で、一番若くて14歳から乗れる)
・独自の衝突安全性能(低性能ゆえに、自動車ほどではない)

このような特徴は、1980年代前半まで原付自転車免許で乗れたので少し流行った、日本のマイクロカーに似ています。実際、クワドリシクルも初期の軽量車(50cc)は日本でマイクロカーとして走ったものもありました。日本ではマイクロカーは簡素すぎて廃れましたが、クワドリシクルは、「少なくとも都市部では自動車に近い走行性能と快適性能を」持たせた事で生き延びています。

クワドリシクルが育った土壌


欧州では、自動車の初期から超小型車「ボワチュレット」や「サイクルカー」が存在しました。第二次大戦後の復興期には「カビネンローラー(キャビンスクーター)」や「バブルカー」といった超小型車が庶民の足として復活します。この頃の超小型車は、イソ(BMW)・イセッタ、メッサーシュミット・KR200などクラシックカーイベントに登場しているので、ご存知の通りです。これらはいずれも安価な量産自動車の登場により、数年~10年程度でその役目を終え、市場から淘汰されていきます。

しかし、1956年のスエズ危機(第2次中東戦争)を契機に欧州で原油価格が高騰すると、低燃費のバブルカーが再び街を走りました。それも画期的なBMC・ミニなど小型低燃費・安価な大衆車に置き換わると、クワドリシクルなど超小型車は主に高齢者の移動手段として細々と命脈を保ちます。しかし、1973年の第4次中東戦争による「オイルショック」で一気に息を吹き返し、急増したのです。
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現在のクワドリシクルは、オシャレなシティコミューター


現在のクワドリシクルは、昔とかなり姿を変えています。昔のエンジンはスクーター用の50ccや125ccガソリンエンジンでした。今は、日本のクボタ製400cc水冷直列2気筒ディーゼルエンジンが多くなっています。これは排気量制限がガソリンエンジンのみで、その他動力の制約は最高出力のみ(軽量車で4kw、重量車で15kw以下)だからです。

しかも、日本の軽自動車規格と同様に、寸法の制約はあるものの、可愛らしくオシャレなクワドリシクルが増えました。インテリアも自動車と遜色無く、近代的なデザインやインパネ類、カーナビつきタッチパネルはバックモニターとしても機能します。今や、かつての「キャビンスクーター」とは完全に別物です。エクサムやリジェ(昔F1コンストラクターだった、あのリジェです)などクワドリシクルの大メーカーも存在し、近年ではシトロエンやルノーも参入するなど、活気のある市場に発展しています。

クワドリシクルを意識した日本の超小型モビリティ構想


一方日本では、2012年6月に国土交通省が、「環境対応車普及によるまちづくりに向けて」と題し、近未来のシティコミューター、「超小型モビリティ」のガイドラインを発表しました。「軽自動車規格のボディに内燃機関(ディーゼルを含む)なら125cc以下、あるいは最高出力8kw以下の動力を搭載。」という規格は、明らかにクワドリシクルを意識しています。

しかし軽自動車規格のボディでは重すぎるため、日本のように山がちな地形では、動力性能不足です。なぜ、クワドリシクルの中でも重量車の最高出力15kwにするか、もっと簡素化して軽量車の最高出力4kwパワーユニットを使わなかったのでしょうか?
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日本だと超小型車はこうなってしまう


結果、日本ではデザインこそ見るべきものがあるものの、トヨタのi-ROADやコムス、ホンダのMC-βなど、中途半端に簡素化された非力な超小型モビリティが生まれてしまいます。中には、日産のNew Mobility Conceptのように欧州ではルノーがTWIZYとして試験投入し、既に2万台を販売した超小型モビリティもありました。

しかし現状では、「原付やバイクほど手軽に使えず、さりとて軽自動車ほど広い用途に使えない。」というデメリットばかりが、強調されているように思えます。そのため、「軽自動車より手軽で、原付やバイクより広い用途に使える。」というメリットを、アピールできずにいるようです。

日本に導入が試みられたクワドリシクル


それならば、「日本の超小型モビリティはクワドリシクルそのものでいいじゃないか!買い物に行くだけなら最高時速45km/hでも困らないし」と、なりそうです。実は前例があり、エクサムの軽商用車「メガ・ヴィークル」がオシャレな軽トラとして輸入が試みられました。ただ、クボタのディーゼルエンジンが排ガス規制に適合せず、EVモデルへコンバートするプロジェクトも進展していません。

クワドリシクルは最高出力15kwの重量車規格でも国産軽自動車より動力性能が劣ります。そのため、軽自動車がライバルでは普及が見込めません。むしろ日本では「欧州L6e規格(クワドリシクルでは軽量車のEV規格に相当)」が向いている、という考えもあります。欧州L6e規格に合わせてスペックを落とし、ボディも布製で生産や交換を容易にした、「rimOnO(リモノ)」という超小型モビリティが代表的です。

しかし、「どういったユーザーが、どこでどのように使う」という方向性が定まらないままなので、国による正式な超小型モビリティ規格の策定も、行き詰まっています。将来は日本版クワドリシクルの輸出や、逆にエクサムなど輸入クワドリシクルがシティコミューターして日本を走る光景を見てみたいものですが、現実は厳しそうです。

[ライター/CL編集部]

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています

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