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カーゼニ

更新2016.10.17

微妙なプロ野球選手がクルマ好きだった場合、どんなクルマを購入するべきか?

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伊達軍曹

世界的に見ればマイナースポーツである「野球」だが、ここ日本では依然として人気が高く、筆者もご多分に漏れず、地元球団である東京ヤクルトスワローズを贔屓にしている。で、スワローズがモデルだと思われる「神宮スパイダース」からプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせた凡田夏之介を主人公とする漫画『グラゼニ』も、週刊モーニングの連載で愛読している。ちなみにこの連載のタイトル「カーゼニ」は、グラゼニの完全なパクリだ。

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プロ野球スター選手の愛車はやっぱり凄い


そして筆者は凡田夏之介の影響で、彼と同様に「プロ野球選手名鑑」を愛読書としている。試合観戦中は相手選手の年俸を名鑑で詳細にチェックし、「そんな年俸800万円の代打なんてどうせ打てっこねえんだから、思いきってド真ん中投げ込んだれ!」などと、年俸数億円クラスのスワローズ投手に声援(?)を送っている。

というか、選手名鑑を愛読・精読していると痛感せざるを得ないのが、一流選手各位の驚異的な年俸である。まぁMLBスター選手の「ウン十億円」と比べれば可愛い数字なのかもしれないが、それでも「年俸2億」とか「5億」というのかなりのものである。

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例えばスワローズの主力である山田哲人選手。その2016年シーズンにおける推定年俸は2億2000万円だ。超絶ざっくりの計算だが、40%が所得税としてお国に召し上げられ、10%が住民税として自治体に捧げられたとしても、弱冠24歳である山田選手の手取り年収は1億1000万円。……それを12で割った毎月の手取額は約917万円であり、大企業の高給エリートサラリーマンの手取り年収を、哲人青年はわずか1カ月で稼いでしまわけだ。なんとも素晴らしい話である。

で、山田哲人選手が現在どんなクルマに乗っているのかは知らないし、プライバシーに関わる話なのであえて取材しようとも思わない。しかし哲人選手が懇意にしているクルマ屋さんがどこかというのは、実はたまたま知っている。そしてそのお店の「格」から推測すると、おそらく哲人選手は「かなりの1台」に乗っているはずだ。

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微妙なプロ野球選手はどんなクルマに乗ってるの?


そんな山田哲人選手に対し、「今はものすごい年俸だけど、プロスポーツ選手なんていつケガして選手生命が絶たれるかわかったもんじゃないんだから、クルマなんかに無駄遣いしないで堅実に貯めときなよ。そんで引退後の資金にしなさい。あとついでに、熊切あさ美はやめときなよ」などとアドバイスをする人間もいるのかもしれない。

しかしそれは完全に「余計なお世話」であろう。そんなことは山田選手も当然考えているはずであり、そのうえでの「かなりの1台購入」であるはずだからだ。そして、数万人か数十万人に1人レベルの才能と努力、そして天運によって巨富を得て、夜ごと数万人、数十万人の視線とカクテル光線を浴びながら身体ひとつで闘っている超絶スペシャルな人間を、わたしどものような凡庸きわまりない人間の金銭感覚や人生哲学に基いて語ったり裁いたりすること自体が、大きな間違いだからである。

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しかし同時に、プロ野球の世界は山田哲人選手のような「超絶スペシャルな人材」だけで構成されているわけでもない。けっこう微妙な人材も、そこそこの数存在しているのだ。もちろんそんな微妙な人材も、河川敷の草野球でエラーを連発している筆者と比べれば超絶スペシャルな野球人なわけだが、「超絶スペシャルだけが集まる世界」のなかでは、相対的に「微妙」になってしまうのである。

そういった微妙なプロ野球選手がもしもクルマ好きだった場合、彼はどんなクルマを購入するべきなのだろうか? それこそ完全に「余計なお世話」だが、どうせヒマなのでちょっと考えてみたい。

高額な契約金は「退職金」でもある


その微妙なプロ野球選手の名を、仮に「伊達軍三(だて・ぐんぞう)」選手とする。伊達選手は都立自動車高校 硬式野球部時代、強打の遊撃手としてチームを西東京大会決勝まで導く。決勝戦は残念ながらホリコシ学園に敗れ甲子園出場は叶わなかったが、その潜在能力が評価され、ドラフト6位で東京スワローズが指名。契約金3000万円、年俸800万円という契約で晴れて「プロ野球選手」になった。

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「年俸800万円はさておき、契約金は3000万円もある。これで現行型のメルセデス・ベンツEクラスを買おう! プロ野球選手はやっぱベンツだろ!」と叫んだ軍三だったが、契約前にスカウト氏から言われた言葉をハッと思い出した。

「いいか伊達くん。この契約金3000万円にはキミの『退職金』という意味合いもあるんだよ。だからね、キミが引退するまでこのお金には絶~~対に手を付けないことをここで約束してくれ。いいね?」

たしかにそのとおりだ……と得心した軍三はEクラス購入をやめ、ペーパードライバーのまま埼玉・戸田市の「東京ヤクルトスワローズ戸田寮」におとなしく入寮した。移動は常に電車やバス、または先輩選手が所有するクルマの助手席で行うこととし、金銭と選手力の蓄積および向上に努めた。

その甲斐あってか、伊達軍三は入団後もクビを切られることなく年俸900万、1100万円と地味に年俸を上げていった。そして3年目のシーズンが終わったとき、「……そろそろ大丈夫かな」と、野球選手としてしばらくやっていける確信を得たため、戸田球場近くの輸入車専門店「ポンドカーズ」で人生初の自家用車、中古の現行BMW1シリーズを購入した。走行2.6万km、支払総額は171万円だった。

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1軍完全定着を機に中古のポルシェ911を購入


1軍と2軍の往復で終始した3年目シーズンだったが、4年目、軍三はついにブレイクした。負傷で長期離脱が決まった正遊撃手・小引選手の代役として暫定的な1軍ポジションを得た軍三は、まぐれか実力か知らぬが本塁打および適時打を量産。意外と堅実な守備力もあってチームのリーグ優勝に大きく貢献し、なし崩し的に正遊撃手のポジションも奪取。シーズン終了後の契約更改交渉では年俸倍増の「2200万円」を提示され、一も二もなくサインした。

「……年俸2000万円を超えれば、プロ野球選手として、1流とはいえずとも1.5流ではあるはず。ならば、18歳のとき心に決めた現行Eクラスを今購入するか? や、いっそ幼少期からの憧れであるポルシェ911にするか? パワーローン(残価設定型ローン)を使えばなんとかなるんじゃね?」と考えた軍三だったが、「いや、まだだ。イケるという確信がもう少し得られるまでは……」と、意外と堅実な性格を炸裂させ、とりあえずは総額171万円の中古1シリーズにしばらく乗り続けることを決めた。

その後も伊達軍三選手の活躍はそれなりに続き、翌年は2950万円、その翌年は3300万円と、それなりに年俸は上がっていった。そして7年目のシーズンが終わった25歳の誕生日、戸田のポンドカーズで念願のポルシェ911(タイプ991)を購入した。

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中古の素のカレラだったが、軍三は涙した。高校時代のシゴキ、2軍戸田球場でのキツいトレーニング、1軍神宮球場での死ぬかと思うほどのプレッシャー。それらに負けず耐えてきて本当に良かったと思った。首都高大宮線を快走する911。そのレザー巻きステアリングに、軍三の涙がぽとりとこぼれた。

突然の病、そして引退。そのとき男はどうする?


が、好事魔多しというのか何というのか、翌年の軍三は打撃成績がふるわず、2軍での調整を余儀なくされることもしばしばだった。その年の契約更改では「3000万円」と年俸は微減し、そして軍三は病に倒れた。

「甲状腺機能低下症」だった。甲状腺ホルモンの分泌が低下して活動性が低下する病気で、軍三は眠気と無気力、抑うつ、記憶障害などの症状に悩まされた。ひどいときは歩くこともままならなかったが、治療薬として用いられるレボチロキシンはドーピングとみなされてしまう可能性もゼロではなかたっため、服用できなかった。

そのシーズンおよびさらに翌シーズンは、1軍試合出場数ゼロながらもプロ野球選手として過ごした軍三だったが、軍三も球団も、そこが限界だった。丸10年間の闘いを終え、軍三は引退した。28歳だった。

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プロスポーツ選手としてやっていける身体ではなかったが、それなりに普通の社会生活を送っていける体調にまでは戻ったため、軍三は小規模な野球教室を地元で立ち上げ、将来のプロやメジャーリーガーを目指す少年らの指導を開始した。

決して爆発的に儲かるビジネスではなかったが、軍三は楽しかった。そして彼の的確で熱心な指導はすこぶる評判が良く、働きに出た妻の稼ぎと合わせれば、2人の子供を育てるに十分な金銭程度は普通に得ることできた。そしてもちろん、あまり距離は乗らなかったため高値で売却できたポルシェ911カレラの売却益と、スカウト氏の助言どおり手付かずのまま取ってある「契約金3000万円」もあった。

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ある晩、軍三は普段はあまり見ないインターネットの匿名掲示板をたまたま見た。そのスレッドは、「あの人は今」と「プロ野球選手・芸能人の愛車」を合体させたような趣旨であった。そこに軍三の名前があり、「ヤクルト内野手・伊達軍三。愛車はポルシェ911。だがその後、難病で引退。現在の愛車は中古プリウスとの目撃情報。……ポルシェなんか買わずにその分貯めておけばよかったのにね~www 成金乙w」との記述があった。

「……これを書いた君は安定した会社員なのかもしれない。しかしその『安定』とやらは本当にそうなのか? 君に『引退』はないのか? 君は怪我や病気をしないと言いきれるのか? そして、君には夢や目標はないのか? どうなんだ?」

一瞬熱くなった軍三だったが、「ま、どうでもいいか」と思い、PCの電源を落とした。そして明日行う予定の指導プログラムについて、イメージを膨らませた。

[ライター/伊達軍曹]

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