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更新2025.10.26

プラレール号の記録簿 vol.17:最新は、最良?

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松村 透

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先日、ポルシェ911カレラT(992.2)に乗る機会がありました。992型の後期型、トランスミッションは6速MTのみという、イマドキ硬派なモデルです。果たして、ポルシェ911を語るうえで必ずといっていいほど用いられる「最新は最良」なのでしょうか。


■最新の911(しかもMT)に触れる



先日、ポルシェ911カレラT(992.2)を運転する機会がありました。いまや貴重な3ペダルの6速MT、PDKの方が速くてラクなのになんでわざわざそんな面倒なことを?と思うかもしれません。そこに需要があるからこそ、わざわざポルシェもMT専用のグレードを用意するわけですが、ポルシェAGのなかの人たち、本心ではどう思っているのでしょうか。


運転したカレラTは右ハンドルなので、エンジンスタートボタンは右側、運転席側のドアのすぐ近くにあります。ブレーキとクラッチペダルを踏み込んだ状態でエンジンスタート。電磁式のサイドブレーキのレバーを降ろしていざ発進……しない。ブレーキペダルを踏んだ状態でサイドブレーキのレバーを操作しないと解除しない設定となっているのです。いざ走り出してしまえば、まるで高級車(実際に高価なクルマですが)のような乗り心地。これなら日常の足としても充分に使えます。


そのまま高速道路に乗ると、さらに安定感が増していきます。料金所でフル加速すると、あっという間にレブリミットへ。カタログ値385馬力もあるんだから、パワフルに決まっています。プラレール号に慣れた身からすれば完全にオーバースペック。そしてワインディングへ。意のままに操れるとはこういうことか!というくらい、乗り手のイメージどおりにコーナーを掛け抜けていきます。カレラTにとっては充分すぎるほど余裕のあるペース。腕に覚えがあるドライバーが操ったら異次元のコーナリングスピードでクリアしていくことが想像できます。カレラTの性能の入口にも立てていない口惜しさ……。これはこれで辛いものがあります。



これまでの911の歴史がそうであったように、モデルチェンジのたびに現代風にアレンジされていくものがあります。今回の992.2でいうなら「スタートボタン」と「タコメーターのデジタル化」がそれにあたります。クルマや特定のモデル(今回であれば911)に想い入れがなければなんてことはありません。むしろイマドキっぽくて歓迎される装備かもしれません。


しかし……人生の半分以上の年月を911に費やしてきた身からすると「とうとうここまで変えちゃったか」といった印象です。992.2型を買える・買えないはさておき、密かにそう考えている911乗りの人、案外多いんじゃないかという気がしています。有償オプションでもいいから、992.1の仕様が選べるようにしてほしかった部分であります。


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■オートブリッピング・ヒルホルダー・エンジンリスタート



オートブリッピングはドライバーが任意に常時ONまたはOFFに切り替えが可能です。OFFにした場合、自分でブリッピングすることになりますが、機械との腕(アクセル&クラッチワーク)の差に歴然とします。これならやらない方がいいかもしれない、とすら思えてきます。逆にオートブリッピングをOMにして交差点を曲がろうとすると、シフトダウンごとにリズミカルにブリッピングしてくれるわけです。端から見れば「あいつ、ヒール&トウをかましてるな」となるわけですが、こちらはただシフトダウンしているだけ。あまりに鮮やかなシフトダウンに無駄なシフトダウンを繰り返したくなります。



そしてMT車といえば坂道発進。プラレール号でもできれば割けてとおりたいシチュエーションです。しかし、992.2カレラTにはヒルホルダーが装備されており、坂道でもなんなく発進してくれます。さらに、うっかりエンストしても、すぐさまエンジンが再始動してくれます。端から見たら、エンストではなくアイドリングストップからのエンジン始動の思えてくるかもしれません。


「3ペダルMTを操る」というコアな部分を残しつつ、運転をサポートする機能が満載です。クルマから「どうぞドライバーさまはシフトチェンジとクラッチ操作に集中してください。あとはこちら(機械)でやりますんで」といわれているようで、あまりの厚遇ぶりに面食らうほどです。


■(いずれは空冷911も視野に入れつつ)人生初の911として最適な1台かも



数ある992.2型のなかで、あえてカレラTを選ぶ人であれば「911にスポーツカーらしさ」を求めている可能性が高いと思われます。願わくはこの先、GT3にも乗ってみたいし、叶うなら手に入れてみたい。そしていつかは空冷911にも乗ってみたい。そんな野望を秘めているのではないでしょうか。


「長年憧れてきた911を手に入れる目処がついた。初めての911を選ぶにはどれがいいと思うか?」。もしそんな相談を受けることがあったら、迷わず現行型のカレラTを勧めます。そういえば先日オンエアされたカーグラフィックTVでもカレラTが紹介されていて、キャスターの方も同様のコメントをされていましたね。まったく同感でした。



ただ、一見客が新車のカレラTの枠をもらえるかというと厳しいかもしれません。しかし、認定中古車であれば手に入れることができます。いまなら走行距離もごくわずかで、新車保証もたっぷり残っている個体が市場に流通しています。ボディカラーや装備は妥協が必要ですが、一見さんであっても手に入れることができます。しかも即納車です。


まずは認定中古車で手に入れた992.2カレラTで911の世界を存分に楽しみ、同時に「自分が求める理想の911像」を追求していくのです。最新のGT3に惹かれるかもしれないし、ひょっとしたらナローの世界に魅了されてしまうかもしれません。「やっぱり自分のカレラTが最高」という結論にたどり着くことも充分にありえます。こればかりは本人でなければ分かりません(自分自身も、まさかナローポルシェに行くとは夢にも思わなかったですし)。念願の911を手に入れることができたとしたら、992.2カレラTを名刺代わりにして、さまざまな年代の911オーナーと知り合い、歴代の911の魅力に触れてみてください。事情を伝えれば、皆さん喜んで「トナリ乗ってみてください。なんなら試乗してみます?」くらいのことはいってくれます。


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■カレラTの感覚が残っているうちにプラレール号に乗ってみる



カレラTを運転した2日後、今度はプラレール号に乗ってみました。意外に思われるかもしれませんが、加速感はプラレール号が上に感じたのです。992.2カレラTの方が圧倒的にパワフルです(少なくとも直線での全開加速では)破綻するような不安感はありません。RRのカレラTであっても、4輪がしっかりと踏ん張っている感覚が伝わってくるのです。もっともあらゆる制御をOFFにしたとたんに暴れ馬になるのでしょうが、ONの状態であれば「安全・安定性ありき」でクルマが加速していきます。見事なくらい調教されているのです。


その点、プラレール号はお構いなしです(笑)。アクセルペダルを踏み込めば踏み込むほど吸い込まれるような加速をしていきます。ただ、調子に乗りすぎると破綻する怖さもあります。911は緊張感を強いられるクルマであることを思い起こさせてくれるとともに、「クルマの運転はすべて自己責任」であることも実感させてくれます。カレラTならちょっと風邪気味でも乗ろうという気になれるけれど、プラレール号は動かす気にすらなれない(笑)。我が家のプラレール号なんてその最たるものです。猛暑日に人もクルマも暑さでフラフラになりながら移動するなんて狂気の沙汰です。


■まとめ:最新は、最良?



現代のデジタルサウンドではなく、あえて非効率なレコードの音色に魅力を感じる人がいます。今回の992.2カレラTがハイレゾオーディオなら、プラレール号はまさにレコード。スイッチひとつでクリアな音が楽しめるハイレゾオーディオに対して、レコードは盤の埃を専用のスプレーで落とし、そっとプレーヤーに置いて、そっとレコード針を落とす。常にていねいな扱いが求められます。どちらに魅力を感じるかによって好みの911を探る目安になりそうです。



 
クルマとしてどちらが優れているのか?と問われたら即答で「カレラT」と答えます。騒音や排ガスなどのあらゆる規制をクリアしつつ、ひとたびアクセルペダルを踏み込めば、歴代911オーナーが納得できるだけの「911らしさ」を感じさせてくれる。その気になれば日常の足としても使える。よくぞここまで……といわざるを得ません。まさに「最新は、最良」だと痛感させられます。

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