更新2025.07.31
プラレール号の記録簿 vol.14:グリルバッチを受け継いだ話
松村 透
連日の猛暑日で、さすがにプラレール号を動かすのが憚れます。
何しろエアコンレスなので、この暑さのなかで運転しようものなら人もクルマもサウナ状態。
「そんなに暑いんなら扇風機くらい付けたら?」といわれることもしばしばですが、外気温が高いのでどっちにしても温風が当たるだけ。
この猛暑にプラレール号もエンジンも耐えてるんだ。オーナーの自分がへこたれてどうする!と、ドM感満載な発言をするとクルマ好きにすらドン引きされます。
この時期のエンジンの油温は、走行中であれば90度、低速や渋滞にハマると100度近くまで達します。
走っている分には意外と涼しいんですが、車齢50年超えのご老体に無理はさせられません。
そんなことを考えているうちに2週間に1度の定期走行の時間が過ぎていくのです。
そろそろ乗らないとだなあ。
■懇意にしている方が新車で手に入れた964を手放すことに
先日、取材を通じて知り合って以来、懇意にしている方から「新車で手に入れたポルシェ911(964)ターボルックカブリオレを手放すので、良い人がいたら受け継いで欲しい」との相談を受け、プラレール号の主治医に相談しました。
■23年寄り添った「ポルシェ911カレラ2カブリオレ ターボルック」オーナー、吉田彌十郎さんへインタビュー
https://www.gaisha-oh.com/soken/porsche-911-yoshida/
程なくして購入を検討している方が現れたとのことで、クルマを引き取り、主治医のショップまで筆者が回送することに。
「もしかしたらこれで最後になるかもしれないから」ということで、オーナーさんと2人で愛車に積まれていた私物をすべて運び出します。
みるみるうちに生活感、何より愛車感が失われ、最後には何もない素の状態に。
これって何だか住み慣れた家を離れるときの感覚に似ています。
主治医のところに託した964はすぐに次のオーナーが決まり、整備を終えたあとに嫁いでいくようです。
自分としてはできる限りのことをやったつもりだけど、一抹の寂しさがあるのも事実です。
■グリルバッチを譲り受ける
今回、仲介役を担った際に、オーナーさんにひとつだけお願いをしました。
それは「964に取り付けているグリルバッチを譲って欲しい」というもの。
そのグリルバッチは、ポルシェ・オーナーズクラブ・オブ・ジャパンのメンバーに配られたもので、市販はされていません。
奇しくも、筆者がポルシェ911の世界を知るきっかけとなった高校生時代のアルバイト先の社長さんと同じ964カレラ2で(クーペとカブリオレの違いはありますが)、しかもポルシェ・オーナーズクラブ・オブ・ジャパンのメンバー同士。支部まで同じだったのです。
おふたりとも面識があり、クラブのイベントなどでは同じテーブルに座っていつも談笑していたそうです。いやはや。世の中狭いですね。
そんな経緯もあって、オーナーさんは快くグリルバッチを譲ってくれました。
■高校生の頃に憧れたグリルバッチが30年の時を経て手元に・・・
ポルシェ・オーナーズクラブ・オブ・ジャパンは、現在、「ポルシェクラブ」と名前を変え、それに伴ってグリルバッチのデザインもリニューアルされています。
初めてこのグリルバッチを見たのが高校生のとき。アルバイト先の社長さんはメンバー1期生ということもあり、964カレラ2には誇らしげにこのグリルバッチが取り付けられていたことを覚えています。
以来、街中を走るポルシェを見掛けるたびにこのグリルバッチが取り付けられていないかチェックしたものです。
プラレール号を手に入れてからは気に入ったグリルバッチを集めるようになり、いまやちょっとしたコレクションになっています。
数あるコレクションのなかでも、自分にとっては夢にまで見た特別なグリルバッチ。
実に30数年越しの夢が叶ったというか、手に入ってしまったというべきか・・・。
プラレール号に取り付けるか、このまま仕事部屋かガレージに飾るか。グリルバッチを手にしながら悩んでいます。
■まとめ:いつか必ず別れが訪れる。そのときのために
たまたまなのか、そういうタイミングだったのか。懇意にしているクルマ好きの方が相次いで大切な愛車との別れを決めました。
964は国内に留まるようですが、もう1台の稀少なモデル(ちなみにポルシェではありません)は海外へ旅立つことが決まっています。
おそらく、今ごろコンテナに積まれて船で次のオーナーのところへ向かうための準備をしている頃でしょうか。
いつか自分にもプラレール号との別れが訪れてしまうのか。それとも?嫌が応にも考えさせられます。
ゆくゆくは子どもたちが乗り継いでくれるのか、それとも別のオーナーのところへ嫁いでいくのか。
未来のことは誰にも分かりませんが、可能な限り手元に置いておきたい・・・というのが偽らざる本音であり、今回、身近な人たちが相次いで大切な愛車との別れを決断したことでその想いを再確認しています。
[ライター・撮影/松村透(株式会社キズナノート)]