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ドイツ現地レポ

更新2017.08.31

公開2017.08.31

DTM全盛期に思いを馳せずにいられない!流麗なデザインのクーペ、オペル・カリブラ

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守屋 健

2017年7月25日、メルセデス・ベンツは2018年シーズン限りでDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)から撤退すると発表、同時に2019/2020年シーズンからフォーミュラEへの参戦を表明しました。長年DTMにおいて中心的存在だったメルセデス・ベンツの撤退発表は、モータースポーツ界に非常に大きな衝撃を与えました。DTMが2000年にメルセデス・ベンツ、オペル、アウディの3メーカーで再開し、2005年限りでオペルが撤退した後も、2006年から2011年の6年間に渡ってメルセデス・ベンツとアウディのたった2つのメーカーで支えてきただけに、モータースポーツ、ひいては自動車業界の転換期に差し掛かっていると実感せずにいられません。

かつてDTMは、車両開発費のあまりの高騰によって参加メーカーの撤退が相次ぎ、1996年にITC(国際ツーリングカー選手権)と統合後、1996年シーズン限りで選手権が廃止されるという憂き目にあいました。1993年に導入されたFIAのクラス1規定に沿ってハイテク満載のマシンで争われるレースは、ヨーロッパを中心に大変な人気がありましたが、クラス1規定後、わずか4年間で消滅してしまいます。そんな時代のきらめきの残滓をドイツのベルリンで見つけました。オペル・カリブラです。

ドイツの北側や東側ではおなじみのオペル


オペル・カリブラ
▲マグマレッドと名付けられた車体色

日本国内では2006年に新車販売は終了してしまっているため、ますますお目にかかることが少なってきたオペル。ドイツにおいても2017年4月にプジョー・シトロエングループがオペルを買収して話題となりました。ドイツ国内メーカーの中でも比較的安価なオペルは、ドイツの北側や東側ではポピュラーな存在です。筆者の住むベルリンでは、オペルを警察車両に用いているので、サイレンを鳴らしながら駆け回る姿を毎日見かけます。

オペル・カリブラ
▲ドイツのクルマではよく見かけるエンブレム外し

カリブラは1989年にデビュー、日本へは1994年から1997年の間、ヤナセによって正規輸入されていました。諸説ありますが、総生産台数は24万台弱、日本に入ってきた台数はそのうち2千台強と言われています。当時のカタログには「すべては、美しさのために。」というコピーが載っていましたが、そのコピーに恥じない流麗でゆったりとした優美なデザインは今見ても魅力的です。当時筆者には車体が非常に大きく見えたのですが、全長x全幅x全高は4495x1690x1350mmと、今の基準からするとそれほど大柄ではありません。しかし、ラゲッジスペースが確保され、実用性と居住性に優れたスペシャリティクーペと言えるでしょう。

オペル・カリブラ、最後のシーズンでようやく手にした栄光


オペル・カリブラ
▲後のプジョー406クーペにも通じる、優美なサイドビュー。サイドモールは取れてしまっていますが・・・

日本に導入されたモデルは16Vとターボの2モデル。16Vは1998cc直列4気筒DOHCエンジンを搭載し135psを発揮しました。ターボはフルタイム4WDを採用、ターボを装着した204psのエンジンと6速MTを搭載したホットモデルです。DTMマシンとのメカニズム的共通点はほとんどない、とは知っていましたが、4WDやターボ、6速MTといったキーワードが、当時学生だった筆者の心を掴んで離しませんでした。

DTMにカリブラが本格的に参戦したのは1994年シーズンから。400ps以上を発揮する2.5リッター自然吸気V6エンジンのチューニングを担当したのはあのコスワースで、1995年にはシャシー開発にウィリアムズも加わります。4WD、ABS、トラクションコントロール、可変ラジエターシャッター等のハイテクを満載し、徐々に信頼性も向上。メルセデス・ベンツ、アルファ・ロメオという強敵を相手に、ついに1996年にドライバー、メイクスと悲願のダブルタイトルを手にするのです。


▲1996年シリーズタイトルを獲得したカリブラ。ビィーンというエグゾーストノートが特徴的ですね

その後、カリブラが表舞台に戻ってくることはありませんでした。ITCは2年で消滅、カリブラの活躍時期も大変短い間でしたが、その勇姿は今でもモータースポーツファンの心に深く刻まれています。オペルを日常的に見られるベルリンでも、カリブラを見かけることは非常に稀です。筆者がこの個体の写真を撮っていると、何人もの現地の方が口々に「カリブラだ!」と名前を呼んでいるのが聞こえました。今後、ますます数は少なくなっていく一方でしょうが、できるだけ長くその優雅な姿を見続けたい。そう願わずにはいられません。

[ライター・カメラ/守屋健]