更新2023.04.23
クルマなら洗わん!なぜならば・・・
まつばらあつし
■分っちゃいるけど・・・
我が家にある2CV、1989年製なのでポルトガルの工場(たぶん)から出てきて33年オーバー。ワタクシが2人目のオーナーなので、ウチに来てから17年ほど経っておりますが、その17年間クルマを洗ったことがありません。えへん。
いや、威張っていうほどのことはありませんが(笑)。
だって2CVのような大衆車というか農民車というか実用車というか、新車時からポンコツ呼ばわりされるようなブリキのカタマリですよ?一生懸命エンジン回して、薄っすらとケム吐きながら流れに乗ってく健気な602ccのクルマですよ?相棒というように擬人化する気はありませんが、いつもそばにあるフライパンやオーブントースターみたいな、そんな関係かなと思ってるんです2CV。
だから、少々ヨゴれてても、何かにぶつかってヘコんでても、そんな自然の感じで一緒に走るのがイイなと思っているのです。
だってさ、こんな2CVをピカピカのテカテカで乗るの、なんか気恥ずかしいというか……う〜ん、少しくらいばっちい方が似合うと思うんですよね。いや、もちろん洗った方がイイという意見も解らないではないし、否定するつもりもないんですが、こいつはそのままの方がイイ、と思っているのです。
■洗えと呼ばわる声がする
多くの人は自分のクルマ……よく「愛車」とかいいますけど、ワタクシはなんか気恥ずかしくていえませんが(笑)、こちらの記事にもあるようにクルマを洗うというのは、クルマを持つ人の中では、かなり重要なポイントだと思うのです。記事を読むと、うんうん、たしかにそうだよな。と頷くことしきり!なんですけど、そうはいうものの、ワタクシやっぱりクルマ洗いません。ココロが荒んでいるんでしょうかワタクシ。
「たまにはクルマ洗えよ。もっとクルマを大事にしてやらなきゃダメだろ」というようなことを、いわれたことが何回もあります。そう、何回も。
そういう人たちが乗ってるクルマは、確かによく洗車されてピカピカに磨き上げられたりしていますね。でもね、彼らは10年も経たないウチに買い替えたり、なにかトラブルで修理したりしてることもあります。
彼らからみたら「大事にしてない」と、いわれるワタクシの2CV。大きなトラブルもなく33年も走ってるんですけど(笑)。洗ってない=大事にしてないって思われるのにも、もう慣れちゃってますが、ばっちいけど大事にしてないわけじゃあ、ないんですよ。
■理想の「よごれかた」とは?
始動時に暖気運転してます。まあ、排ガス出しまくりで、あまりホメられたもんじゃありませんが、暖かい時期でも2〜3分。冬なら数分はチョークを調節しながらゆるゆるエンジン温めてから走り出します。温めている間にタイヤ確認したりいろいろ点検(教習所で習った「始業点検」というやつ?)できますしね。
温めておくとね、動き出しから違うんですよ。なんかするするするって動いてくれる。そんなとき、ボディとか眺めながら、うっすらとホコリが積もってたり、ウインドガラスにネコの足跡なんかついてたら、もう「サイコー」に嬉しい感じがします。
まあ、そんなネコの足跡も走り出してからウインドウウオッシャーをプシュッとだして、ワイパーで拭いちゃうの。勿体無いけど結構スキな一瞬といえましょう(笑)。
テカテカのボディではないので、晴れてる日にボンネットの反射で眩しいこともないし、ツヤがなくても、ちょっとくすんだ「そらいろ」の塗装が、旧い2CVには似合ってると思うんだけどなあ。
■雨を楽しむ
さて、そんなホコリだらけで年中ばっちいのか、といわれたら、実はそうでもなくて、雨が降ってくるとね、近所を一回りしてホコリや汚れを洗い流してくるんですよ。
雨の日サイコー!(笑)。ご存知のように2CVには「積極的な空調」の概念がございません。ございませんので、雨の日はサイドウインドウを少し持ち上げておきます。
そしてフロントガラス下のフラップを、水が入ってこない程度に開けておきます。そうすれば走っている間は空気が(ある程度)循環して、窓ガラスが曇ったりしない……(ことになってますが、やはり曇る)ので、いい按配。戻ってきたら、ボディを雑巾で適当に拭いてあげたらそれでOK。洗車代わりの雨の日ドライブでした。
■おそらくは伊丹十三のせい
と、このように、ワタクシは信念を持って「洗車しない」道を選んでいるのであって、決してメンドクサイから洗わん!というわけではないのです。実際洗わなかったから、何か問題が起きたかというと、何も問題ありません。まあ何人かに「ばっちい」だの「ほこりっぽい」だの「きたない」だの「きれいにしろよ」だの「もっとクルマを大事に・・・」(以下省略)などといわれますが、まあ、いわれるだけなので問題ナシ。
で、何でワタクシがこのように「クルマなら洗わん!」といってるのかというと、実は若い頃に読んだ伊丹十三さんのエッセイの影響を大きく受けているのです。ここでその部分を、ちょっとだけ引用してみますね。
「昨年の暮れには、ひと月ばかりガレージにいれっぱなしにしておいたから、実にいい具合に埃がつもって、その埃の上に猫の足あとなんかついて、ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれをみせるようになった」(「女たちよ!」より)
いいですよね「芸術的なよごれ」(笑)。
伊丹十三さんがロータス・エランに乗っていた時のお話だそうです。おそらくブリティッシュグリーンのエランのボンネットに、薄っすらとホコリが積もり、そのにネコの足跡。ちょっとうっとりしちゃいますね(しないか?)。
というわけで、ワタクシがクルマを洗わないのは、全て伊丹十三さんのせい、ということになります。
なので、今日もうっすらとホコリを被ったような、そらいろの2CVを、借りているガレージから出してゆくのです。ラジオのスイッチを入れると、天気予報では「明日は雨」といってます。
●まつばらあつし(Atsushi Matsubara)
・東京右半分生まれ
・お絵かき屋さん&文字書き屋さん・ときどきガッコの先生
[撮影・ライター/まつばらあつし]