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ライフスタイル

更新2017.07.08

公開2016.04.14

モータージャーナリストになるには?名車を後世に残すのは誰の役目なのか

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松村 透

まずはじめに…。

この記事を書いているまさにその最中、箱根ターンパイクでポルシェが事故を起こしたというニュースをインターネットを通じて知りました。その翌日には各ニュース番組でも報道されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。筆者は運転していた森野氏と面識はありませんが、氏の記事は学生時代から読んでいました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

大学生から「どうしたらモータージャーナリストになれるんですか?」と聞かれて焦る



昨年のことです。ある企業の大学生向けインターン研修を担当させていただく機会がありました。筆者がクルマ関連の仕事をしていて、こうして記事を書いているという立場であることを伝え、いわゆる業界ネタを盛り込んだ研修を行いました。その休憩時間のときに、ある大学生の方からこんな質問を受けました。

「どうしたらモータージャーナリストになれるんですか?」

一瞬、答えに窮しました。モータージャーナリストでもなんでもない筆者が答えてよいものか。…とはいえ、これからの未来にキラキラと目を輝かせている若者にとって今後の参考になればと思い、知る限りの情報を伝えました。

モータージャーナリスト(自動車評論家)とライターの違いとは?



モータージャーナリスト(自動車評論家)やライターには資格はありません。自己申告で、あとは仕事がくればOKです(これが一番大変なのですが…)。

※モータージャーナリストと自動車評論家の違い等々がありますが、この記事では「モータージャーナリスト」で統一します。

モータージャーナリストとは?
・関連団体に加盟している、あるいは一員として認められている
・自動車メーカーから(ニューモデルの発表会や試乗会の)お声が掛かる
・それ以外。いわゆる自称系

ライターとは?
・雑誌やwebメディアなどの編集部から記事執筆の依頼を受けて原稿を書く
・自動車関連に特化している。または他ジャンルでも活動している
・ライターも、自動車メーカーから(ニューモデルの発表会や試乗会の)お声が掛かる

モータージャーナリストとライターで格差があるといいますか。立場によって、扱われ方もかなり変わってきます。筆者も以前、あるベテラン雑誌編集者の方に「キミみたいなライターなんて立場は、いわば野良犬みたいものだ」といわれたこともありました。きっとご本人は忘れていると思いますが…。しかし、事実は事実です。冠がひとつもないのですから。

先日、ある自動車評論家の方が関連団体から除名されたとの記事とネット上でも話題になりました。筆者もその記事を読みましたが、ひとことでいえば「色々な意味で、大人の対応が求められる世界」なのかもしれません。

クルマの(特に新車の)インプレッションに関しては、ネガティブな記述はまず見掛けません。それを批判することもよくありますね。でも、考えてみてください。身近な例でいうなら、友人が新車で購入した新型プリウスを厚意で試乗させてくれたとします。そのとき「こんなクルマ、だめじゃん」。仮にそう思ったとしても、本人にいえるでしょうか。良かれと思ってわざわざ試乗させてくれたのですから。そんなこといってしまったら、二度とクルマを貸してくれるどころか人間関係にも亀裂が入りかねません。

食べログのレビューが、飲食店の評価を左右する時代



飲食店を探す際、食べログの点数やレビューを参考にする方は多いのではないでしょうか。筆者もそうです。もしかしたら、お気に入りのレビュアーが投稿するレビューをチェックしている方もいるかもしれません。たかが素人の戯言と侮るなかれ。実際に飲食店を経営している立場のひとからすると、食べログの点数やレビューは軽視できない存在なのだそうです。かといって、ネガティブな記事を削除する(削除依頼も)ことができず困っているのです。

幸か不幸か、クルマに関してはまだまだ「活字のマジック」が効いています。一杯のラーメンを批評するとしても、個々の基準はバラバラだし、味の好みもさまざま。本当に美味しいかどうかは、結局は自分の舌(味覚)で確認するしかありません。しかし、ラーメンは高級なものでも数千円レベルで収まるものがほとんどでしょう。これがクルマとなると、数千万円レベルのモデルも存在します。それこそ、マクラーレン650Sの試乗に行くことは、相当な勇気(もしくは鈍感力)が必要です。

次に、一般ユーザーとモータージャーナリストの違いは?



・圧倒的に試乗するクルマの数が違う(特にニューモデル)
・1台のクルマでも試乗できる時間が違う(高速・山道・街中など)
・一般の人が触れることすらできないクルマに乗れる
・メーカーのひとと直接話しができる
・相応の知識と経験がある
・その道の技術の伝承がある

どの道にもプロがいるように、ここは素人では到底かなわない部分です。オフィスで仕事をしているあいだに、モータージャーナリストの方々は丸一日掛けてニューモデルの技術説明を聞き、試乗しているのですから。試乗といっても、一般ユーザーのようにディーラーで近所を一回りするレベルではないことはすでにお気づきかと思います。

1億総モータージャーナリスト時代ではないけれど…



例えば、2014年にお亡くなりになった徳大寺有恒氏のように、限られた人しかクルマを手にすることができなかった時代、貴重な国内外のモデルに触れる体験そのものが記事となり、憧れの対象となっていた時代もあったはずです。しかし、いまは違います。よほどの高級車やスーパーカーでない限りは、少しの勇気があればニューモデルに触れたり、試乗することができます。

インターネットが普及してからは、クルマを手に入れたオーナー自らが情報を発信できるようになり、これを情報源として活用するケースも珍しくなくなりました。筆者自身、当時所有していたクルマに関する質問を見ず知らずの方に聞いてみたところ、本当に涙が出るほど丁寧にアドバイスをいただいたことがありました。

また、先日「車両本体価格29万円のユーノスロードスターを所有して分かったこと」の記事にもまとめたように、同じクルマや趣味を持つ人たちとの交流がとても身近になりました。そういう意味では、インターネットを活用することで求める情報にたどり着くまでの確率が飛躍的に高まりました。と同時に、情報の精度や信憑性を見極める感覚も求められるようになったわけですが…。

新しい時代を作るのは老人ではない!

あまり大きな声ではいえませんが、一般の読者を軽視しているとしか思えない場面に何度か遭遇したことがあります。しかし、それは大きな間違いだと思います(当の本人たちは気づいていません)。また、現在20〜30代のモータージャーナリストがほとんど育っていない現状があります。物心ついたときからインターネットに触れている世代が第一線で活躍していないのは、由々しき問題ではないでしょうか。

ある金色のモビルスーツに乗っていたパイロットがいった「新しい時代を作るのは老人ではない!」…としたら?一刻も早く次世代のモータージャーナリストが活躍する土壌を築いていく必要があるはずです。確かに経験は浅いかもしれません。その代わり、これまでとはまったく違う視点や斬新な発想が生まれてくる可能性だってありえます。

幸い、筆者の周囲には、日本のクルマ文化を海外に発信しようとすでに動き始めている20代の若者がいます。インターネットを駆使し、クルマ版のクールジャパンを自らの感性で発信しています。正直、これはかなわないなと思いました。同時に、早くこういった若者にスポットライトが当たるようにしなくては・・・と強く感じたのも事実です。

一般ユーザーにできてモータージャーナリストにはできないことは?

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モータージャーナリストがニューモデルに関する知識は豊富でも、古いクルマたちとの接点が少ないケースもあります。

ニューモデルはモータージャーナリストの方がインプレッションしてくれますし、その気になれば素人でもディーラーで試乗することもできます。

カレントライフでは、古いクルマにもスポットライトを当てて、その魅力を何らかの形で残していきたいという想いがあります。…と同時に、そのクルマを愛するオーナーさんたちの息づかいも伝えていきたいと考えます。

クルマに関する知識も経験も、モータージャーナリストの方より圧倒的に乏しいことは認めざるを得ません。

しかし、ニューモデルのインプレッションを主な生業としているモータージャーナリストよりも、素人の方のがアドバンテージがある部分もあります。それは「本気で惚れ込んで憧れを現実にしたり、身銭を切って所有している(または好きな)人の情熱にはかなわない」と思うのです。

タイトルにもある「名車を後世に残すのは誰の役目なのか」。それは他でもない一般ユーザーではないでしょうか。身銭を切って愛情を注ぐ一般ユーザーだからこそできる聖域だと信じたいのです。

[ライター・画像/江上透]