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コラム

更新2019.03.09

オールドタイマー世代のヴィンテージカーのほうが部品に困らない?ヤングタイマー世代の「製造廃止部品問題」とは

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鈴木 修一郎

今、筆者は自分が使っているクルマの製造廃止部品、いわゆる「製廃」(以下製廃)に悩んでいます。と、書くと「またセリカかスバル360の部品の話か」と思われるかもしれませんが、実は今回は自分の愛車は話ではありません。

今回お話するのは、主に筆者の母が使っていて、亡父の形見でもある「平成8年型日産クルーLXサルーンGタイプ」の話です。

意外やオールドタイマー世代のヴィンテージカーのほうが部品に困らない?




よく、冗談半分、自嘲半分で「手間はかかるけど手間を惜しまなきゃ意外と大昔のクルマはなんとかなるんだけど、案外イマドキの古い(?)クルマのほうが面倒くさいんだよね」という事があるのですが、今回はそれを身に染みて体感することになりました。

確かに、1960年代~1970年代以前の国産車のメーカーからの部品供給はほぼ絶望的な状況といえるでしょう。外装部品にいたっては新品の入手は困難と言われて久しいですが、最低限走って曲がって止まるのに必要な機能部品に関しては、余分なデバイスがない分壊れる要素が少なく、最悪壊れても互換部品や汎用品の加工流用で対応出来たり、ゴム部品などの消耗品さえ交換すればオーバーホールによる再生が可能であったりケースがあります。

それどころか、最近ではスカイラインやセリカ、スバル360など人気があって比較的現存台数の多い車種であれば、熱心な専門店がリバースエンジニアリングによるリプロダクション部品の販売を展開し部品の供給状況が改善されるケースすらあります。


▲むしろ人気のあるヴィンテージモデルの方がリプロ部品の出現で部品供給が改善されつつあるというケースも…

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今後、維持環境が厳しくなっていくであろうヤングタイマー世代


その昔、筆者は1980~1990年代のヤングタイマーやネオヒストリックと呼ばれる世代のクラシックカーを欲しがる若者によく「本当は1970年代、1960年代のクルマが欲しいけど、新しい方が維持が楽そうだから1980年代、1990年代のクルマで妥協する」という考えで高年式のクラシックに手を出すというのであれば痛い目を見るからやめたほうが良いと釘を刺した事があります。

何故なら、1980年代以降になると電子制御インジェクションやパワーステアリングなど、電子制御デバイスやパワーアシストデバイスが増え、電子部品や油圧アクチュエーター等の精密機器を搭載しているため、壊れたら最後、アッセンブリー交換以外に修理方法が無いのです。

昔のクルマのように消耗品さえ交換すれば、主要なアルミや鉄のダイキャスト部品は半永久的に使用可能とはいかず、メーカーが供給する補修部品がなくなったら最後、永久に修理不能となる可能性もあるのです。メーカーの補修部品の保有期限は7年から10年と言われています。1990年代に新車だったクルマも気づけば生産中止から20年以上経つものもあります。そろそろ「製廃」によるメーカー欠品となった保安部品も目立つ頃ではないでしょうか?

長く愛用できると思って購入したはずだった日産クルーが…


亡父の最後の愛車となったHK30型日産クルー。このクルマを亡父にすすめた理由は、生前板前が職業だった亡父も引退を考えるようになった1996年、クルマを買うのもこれで最後だろうというので、堅牢でプロユースに徹した実用性と飽きの来ないデザイン、なによりタクシーとして長いモデルライフと長年にわたる補修部品の供給が期待できると見越しての事でした(実は当時免許を取ったばかりの筆者が直列6気筒エンジンのFR車に乗ってみたかったというのもあります)。

しかし、2002年にガソリン仕様の民生モデルがカタログ落ちし、プロパンエンジンのタクシーモデルのみとなり(ただし、一般ユーザーの購入は可能)2009年にはついにクルーそのものが日産のラインナップから消滅、数年前からガソリンクルーの部品がいくつか製廃となり、リビルトパーツでどうにか凌ぐというケースに遭遇し始めるようになります。

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たった一個の部品で車検を通せないという危機に


数週間前だったでしょうか…ツイッターを見ていると「父のP11型日産プリメーラを車検に出したところ、シートベルトのキャッチに内蔵されたシートベルト警告灯のスイッチの不具合で警告灯が点きっ放しで車検を通せず、部品を注文しようにも既に製廃、オークションでも出品が無くP11型プリメーラに使用可能なシートベルトのキャッチの情報が欲しい」というツイートが流れてきました。

今世紀に入ってもしばらくは走っているのを見かけた2代目プリメーラもいよいよ、部品の製廃で車検にも困るというケースが出てくるようになったか…と思ったその矢先の事です。現在は主に、母が買い物や通院に使っている日産クルーの11回目の車検が近づき、そろそろ車検の見積もりでも取ろうかと名古屋市内の某日産系ディーラーに持ち込み車検に必要そうな交換部品を見たててもらったところ、担当のセールスが少し困惑した表情を浮かべながら

「鈴木さん、ABSのアクチュエーターからフルードが漏れています。この部品は既に製廃でこのままでは車検が通せません。乗り換えもお考えになったほうが…」

最も起こってほしくない事態がわが身に降りかかった瞬間でもありました。

最近はいくつかの国産車メーカーが過去の名車の再生プランや一度製廃になった部品の再生産をアナウンスしたり、国産タイヤメーカーがオールドカー向けのトレッドパターンのタイヤをリリースしたりで、いよいよ日本の自動車業界もヘリテイジにも目を向けるようになってきました。しかし、その恩恵を被ることができるのはごく限られた車種のみ、普通に使われたクルマを普通に長く使い続けることが出来る環境になるのはまだまだ先のようです。

単純に買い替えればすむというわけにはいかない事情



▲できればまだまだ手元に残しておきたいのですが…

2007年に父が亡くなり、現在は母の名義となった我が家の日産クルー。自宅駐車場の大きさと自宅周辺の道路環境にベストマッチなボディサイズの「5ナンバー4ドアセダン」で、長年乗りなれて今更他のクルマに乗れと言われてもムリ、という母の事情もあります(高齢者講習を受けていますが、実技では教官に「正直、私のすることが無い」言わしめるほどの優良ドライバーです)。

生来のクラシックカー好きの筆者としては、新車購入から早23年。トヨタ博物館クラシックカーフェスティバルの参加資格となる製造後30年も視野に入り、目ざといマニアからは珍しがられる「名古屋74」の二桁ナンバー。同じ1996年製造のクルマに乗っている友人と2026年のトヨタ博物館のイベントに出るのを目標にしようと約束し、なにより亡父の形見のクルマが新車からクラシックカーになる瞬間に立ち会えるかもしれないとあれば、心情的にも、買い替えてくださいと言われて「はいそうですか」というわけにはいきません。

最近はセリカLBとスバル360のリプロ部品のリリースの報を耳にし、これでもう安泰だと思っていたら、まさかクルーの部品の製廃で悩む事になるとは思ってもいませんでした。1990年代のクルマもいよいよ30年選手。好景気に沸いていた時期に開発されていたとあって品質も高く、趣味の対象としてだけでなく、新車当時から普通に使い続けているのであろうと思しきクルマを見かける事も多いのですが、今後はこういった思わぬ車検部品一個で危機的状況になるというケースが多々出てくることでしょう。

クラシックカー部品の枯渇問題は思った以上に深刻化しているようにも思えます。

[ライター/写真 鈴木 修一郎]

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