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更新2023.11.22
フランスの高級車メーカー「パナール」をアウト ガレリア ルーチェで堪能
中込 健太郎

フランスの自動車メーカーのクルマだけを集めた企画展が、名古屋のアウト ガレリア ルーチェで開催されていました。こじんまりとした自動車のギャラリースペースながら、毎回意欲的な企画展を実施され、以前から一度訪れたいと思っておりましたが、なかなか訪れることができませんでした。しかし企画がパナールだということで、どうしても行かない訳には行きません!ということで拝見してきました。

シトロエン周辺の事情に加えて

以前から知ってはおりました。フランスの高級車メーカーです。しかし、以前は後にシトロエンに吸収されるのね。くらいにしか思っていませんでしたが、最近なんだかとても興味が湧いてきているのです。以前シトロエンBXに乗っていたということもたしかにあるでしょう。そしてそれと入れ替えたのがマセラティ430。マセラティも一時シトロエンの傘下だったことがあり、その辺りでシトロエン絡みとして、関連事項で興味が深まったということがあると思います。
そして他方、例のファセル・ヴェガも大きく影響しているのです。小さいクルマながら、いつも比較的凝った作りをしていたパナールの乗用車。ディナXもそのご多分に漏れないものでした。当時は自社でボディが作れなかったため、金属家具などを手がけていた、ファセル・メタロン社が製造に携わっていたのです。そして、この次のモデル「ディナZ」が登場する際、パナール独自で製造できるようになったため、外注をやめたことによって、ファセル・メタロン側に自動車製造リソースの余剰が生まれました。これを使ってクルマを作ろうということで、誕生した当時のフランスの最高級車こそ「ファセル・ヴェガ」だったりするのです。

そんなこんなで、僕の自動車趣味と、進み行く車歴のなかで、遠からずこの2年ほど名前が登場するパナール。何が何でも見てこなければ、ということで出かけていった次第です。

懐かしくもあり、まだ追いついていないとさえ思うクルマ
展示されていたのは6台。
1951 PANHARD DYNA X85
1960 PANHARD PL17
1953 PANHARD JUNIOR
1954 DB PANHARD HBR
1962 CD PANHARD
1967 PANHARD 24BT
です。私蔵しているコレクターはいるかもしれませんが、こうして一堂に会すことはほぼないのではないでしょうか。世界的にもかなり台数が少なくなってしまったので、クラシックカーの資産価値的にははるかに及ばないものの、これだけパナールのクルマたちがあつまるのはフェラーリやポルシェのコレクション以上に貴重なのではないか。そんな風にすら思ったほどです。

フランス車の流儀としてできるだけ小さなエンジンでできるだけ高性能に!パナールはその典型のようなクルマと言えるでしょう。今のクルマよりはずいぶん小さいですが、それでも1300cc~1600ccくらいのエンジンは乗っていても不思議ではないボディサイズにせいぜい850cc程度のエンジンを載せ、しっかりと走る。もっと言えば、このメーカー、自動車メーカーとしても世界最古参の一つなので、黎明期の自動車レースはももちろん、世界中のレースでも一目置かれる存在になっていったりもするのです。その高い効率は、以前から知ってはいました。しかし、あらためて6台も目の前にあると、実に考えさせられるクルマたちでした。

小さなエンジンでも性能は譲らない。
これって今まさに一番求められている要素ではないでしょうか。それを極めてシンプルな機構で実現。そしてそれでもどちらかというと高級車であるパナールは、そのエンブレムなどの意匠一つとっても、ながれでなんとなくということがなく、一車種一車種ごとに専用デザイン。そして、何かのようなというデザインが皆無で、「パナールのアイコン」すらあまり見られないような感じを受けます。
ホイールアーチが独立していたようないわゆるクラシックカーの形が、今風のボディ構造に移行する時期のクルマでありながら、今でももしかするとエンジニアたちが頭を抱えてしまうような先進性を併せ持っているパナール。過去と未来が共存しているようなこのクルマの世界に思わず吸い込まれてしまうようでした。(そしてこの感覚は、現役当時にはそんなに感じることはなかったでしょう。今の感覚だからこそ感じ取れる妙だと思います。今このパナールを見ること自体にも独特の価値があるクルマ…なかなかないことだと思います。)

年に3回ほど企画展示を入れ替えているアウト ガレリア ルーチェ。ぜひ一人でも多くの方に、パナールに浸る一時を味わっていただきたい。そんな風に思う素敵な展示でした。
アウト ガレリア ルーチェのWeb Site http://www.luce-nagoya.jp/Top.html


[ライター・画像/中込健太郎]
※当記事は過去公開した記事の再編集版です