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テクノロジー

更新2017.05.23

ドイツの都市型列車「ライトレール」は日本の交通事情の参考になるか?

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海老原 昭

年々増え続ける自動車の交通量は、どの国においても都市部での頭痛の種だ。自動車と人のみならず、さまざまな交通機関への影響も考えねばならない。自動車先進国であるドイツでは、自動車に加え、ライトレール(都市型鉄道、LRT)などの代替交通機関をうまく活用しているという。こうした試みは日本においても有効なのだろうか。


▲ニュルンベルグの地下鉄は一部で無人車両による自動運転が始まっている

都市型列車=ライトレール


欧州ではイギリスなどに代表される、都市部への自動車乗り入れを有料化するなどの試みが行われているが、根本的な解決としては、自動車がなくても人々が目的地へ行きやすいよう、目的地にほど近い公共交通機関の充実した街づくりが必要だと言えるだろう。

ライトレール(LRT)はそんな都市部の輸送機関として、もともとは1970年代に北米で誕生したものだ。ライトレールは概ねバスや路面電車以上、地下鉄や通常の鉄道未満、といった位置付けになる。「次世代路面電車」という言われ方もするが、LRTは高架や地下を走ることもでき、路面電車より走行速度も速い。都市型小型鉄道、という認識が正しい。


▲サクラメント市内を走るライトレール。米国ではライトレール網を持つ大都市が多い
photo by Sacramento Regional Transit District Siemens[CC] (Wikimedia Commons)

ドイツでも、1960年代にはライトレールと同様の性格を持つ「シュタットバーン」(都市間鉄道)が登場している。もともとドイツは路面電車網が発達していたが、第二次大戦後のモータリゼーションの発達により、交通渋滞解消のため、都市部において、公共交通機関と私有車で別の道路を走らせるような政策が進められた。このうち公共交通機関については、路面電車をシュタットバーンとして再構築することで輸送力を拡大することになる。シュタットバーン/ライトレールの概念は欧州の他国・他都市へも伝わり、欧州では多くの都市でライトレールが利用されている。


photo by Christian0911 [GFDL or CC-BY-SA-3.0](Wikimedia Commons)

シュタットバーンは路面電車だけでなく、地下鉄としても運用されており、ニュルンベルグの地下鉄3号線をはじめ、高架線などで自動運転車両も導入されている。自動運転により、運転席分の輸送力が増えるとともに、電力消費が15%減り、電車の運行にかかる行程もほぼ半分にまで短縮できたため、増発も可能になるなど、自動化の効果は大きかったようだ。ただし、車両に加え信号設備など導入コストがかかることもあり、全体としては自動化の導入はあまり進んでいない。また、自動車が走る路面電車区間では事故の可能性も高く、自動運転を導入するには時期尚早といったところだろう。

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日本でも交通政策を交えた街づくりを


日本にも、江ノ島電鉄や広島電鉄宮島線、京福電気鉄道、東急世田谷線など、ライトレールの路線はいくつかある。また、富山市などをはじめライトレールを新規導入した都市や、「新交通ゆりかもめ」のような高架型案内軌条鉄道やモノレールを導入している都市もある。

特に富山市の場合、国土交通省のお墨付きで「コンパクトシティ構想」のもと、ライトレールが敷設された経緯がある。コンパクトシティ構想とは、都市部の中心部に商業施設などを集中して配置し、その周辺を自動車立ち入り禁止にして、人々の移動は公共交通機関が担うというもので、冒頭でのべたような欧州式の都市作りに倣った事例だといえるだろう。バスなどほかの交通機関も交えた上で、自動車からライトレールへの乗り換えが起きたり、高齢者の外出を促進するといった効果が表れているようだ。


▲富山市では「セントラム」「ポートラム」「サントラム」というライトレール車両が運行されている
photo by Hisagi [CC BY-SA 3.0](Wikimedia Commons)

日本でも専用線を利用できる「新交通ゆりかもめ」のような路線では無人運転が行われているが、ライトレール自体の導入事例は少ない。既存の交通機関に影響を与えないようにすると高架型か地下鉄型を採用するしかなく、採算が取れないため、諦める事例も多いようだ。また、東京都内のようにすでに各種交通網が発達しており、そもそも新設が難しいケースもある。

比較的低コストな路面電車型のライトレールを導入するにしても、既存の車線に対する影響や、交通法規の問題もあり、一筋縄ではいかないのは間違いない。しかし、富山市の例のように公共交通機関を充実させることで新たな人の流れを作り、トラフィックの一部を公共交通機関が肩代わりすることで、結果的に自動車にとっても移動しやすい街づくりに繋げられるのではないだろうか。

また今後、自動車にも自動運転車両が登場してくると、自動車両はライトレールやバスと同じく公共交通機関の扱いになる可能性がある。完全自動運転のメリットとしては、相互に通信しあって優先度や車間、速度の調整が容易な点にあり、路面電車のように自動車から見れば道交法上特殊な位置付けにある車両も、ミスなく対応できる。こうなれば逆に、公共交通車両専用レーンを設けて自動運転のライトレールなどを導入しやすくなるという可能性もあるだろう。

2020年の東京五輪を機会に、さまざまな都市で交通網の見直しや再検討が行われ始めた。五輪にとどまらず、今後50年・100年先までも視野に入れた都市設計・交通政策となることを期待したい。

[ライター/海老原昭]

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