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更新2019.02.06

日本最古のクラッシクカーイベントの閉幕。そこから感じた危機感とは「JCCAニューイヤーミーティング2019」

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鈴木 修一郎

クラシックカー愛好家にとってはこの時期の風物詩でもあったJCCAニューイヤーミーティングですが、2020年の東京オリンピックの会場整備で、会場として使われていた青海臨時駐車場が閉鎖となり、今回で一旦幕を閉じる事になりました。

実は1977年の開催以来日本で最も歴史のあるクラシックカーイベントであり、壇上のスピーチでも今日、毎週のように開催されているクラシックカーイベントの草分け的存在だったニューイヤーミーティングなのですが、筆者が初めてエントリーした2004年に比べると、その開催規模は半分ほど、会場にも空きスペースが目立ち、昨今のクラシックカーの市場価格の暴騰ぶりとは裏腹の閑散ぶりがなんともやるせないラストのイベントでした。

JCCAニューイヤーミーティング




車両搬入直後でまだ一般入場が始まる前の会場。開場前とは言っても展示スペースに空きがあったり、物販ブースが小さくなったりと、かつての隆盛を思うと少々寂しい最後でした。





それでも開会式が終わり、一般入場が始まるとお目当ての商品、クルマへ向かう一般来場者が押し寄せてきました。筆者の周りでも早速、「〇〇で珍しいトミカを見つけた」「××でほしかったカタログを見つけた」という「戦利品」の報告を耳にすることも…


▲昭和43年(1968)日産クリッパー

40代以上の人なら楕円に十字フィンのインパクトあるフロントマスクに見覚えのある方も多いのではないでしょうか。実は会場内を眺めていて真っ先に目についたのがこのクリッパーでした。かすれた屋号とわずかに浮いているサビなど、程よいヤレ具合が良い味を出しています。

ちなみに、筆者にはいまだにクリッパーというとバキュームカーのイメージが強烈に残っています。ちなみにクリッパーのバキュームカーはプリンスの特殊車両開発部門による「低重心設計」だそうです。確かに「絶対に横転してはならない」クルマだけのことはあります。


▲昭和47年(1972)トヨタカローラレビン1600GT

いわゆるニイナナレビンですが、この顔を見ておや?と思う方も多い事でしょう。TE27型といえば逆台形グリルのフロントマスクが有名ですが、こちらは「バリカン」「家庭用クーラー」など、人によってさまざまな呼ばれ方をしている初期型です。初期と後期の外見上の違いはフロントグリルだけではなくボンネットの先端の形状やエアスクープのプレスライン、オーバーフェンダーの材質、ブレーキブースターの有無など思った以上に相違点が存在します。


▲昭和39年(1964)トヨペットコロナ1500DX

当時ダットサンブルーバードと並んでBC戦争と呼ばれる熾烈な販売競争を繰り広げた事で知られています。しかし、当時は先進的だった半独立懸架方式のリアサスペンションの耐久性が当時の劣悪な道路事情に耐えられず、不具合が多発し、当初の販売ではブルーバードの後塵を拝する事になります。改良型ではトーチャーキャンペーンと呼ばれる、悪路走行や崖から転落させるという過激ともいえるプロモーションを展開します。


▲昭和34年(1959)日野ルノー

かつて日野自動車が乗用車を作っていた事を知る人ももう少ない事でしょう。戦後、日本の自動車メーカーの多くは海外の自動車会社と提携、ライセンス生産による外国車の国産化で技術獲得の道を模索します。日野はフランスのルノーと提携しルノー4CVを国産化。小型で高性能はルノーは当時タクシーとしても活躍します。


▲1966年(昭和41)ロータスエランシリーズ3

ロータスの傑作2シーターオープンスポーツロータスエラン。後のマツダロードスターに多大な影響をもたらした事でも知られています。フォーミュラーカーのようなX型バックボーンフレームにFRPのアウターボディを被せたエランは軽量でスタビリティが高く、今もなおスペック以上の性能を叩き出す事が可能です。

ちなみにシリーズ3以降の外見上の特徴にドアの窓枠がありますが、ドアウィンドーがそれまでのネジ固定式からパワーウィンドーになった事によるものです。


▲1973年(昭和48)ロータスヨーロッパスペシャル

スーパーカーブーム世代の方には言わずと知れたマシンでしょう。この日、ロータスヨーロッパを持ち込んだエントラントの方にも、かつて「サーキットの狼」に憧れ、その夢を実現したという人も多いのではないでしょうか。

ロータスヨーロッパも当初、嵌め殺し窓の簡素な装備の低価格ミッドシップスポーツカーでした。しかしシリーズ2以降はエランと同様、パワーウィンドー付となり、ラジオが標準装備で内装もグレードアップするなど、当時スポーツカーがコンペティションマシンに最低限の補器類を付けた快適性度外視だったものから、次第に耐候性や快適性が求められGTカーに集約されていく様子が見てとれます。


▲1968年(昭和43)ジャガーMK.2 3.8リッター

前述のロータスヨーロッパと同様、筆者も「怪物王女」というマンガに登場したことがきっかけで好きになった1台です。コンパクトな4ドアセダンながらも高性能なツインカムエンジンを搭載。4輪独立サスペンションに4輪ディスクブレーキという当時のハイパフォーマンススポーツカーにも引けを取らないスポーツセダンです。


▲1974年(昭和49)W116型メルセデスベンツ280S

ブルーノ・ヤッコによる近代メルセデスのデザインの礎となったこの「ベンツマスク」は、今なお「メルセデスベンツ」と聞いてこの顔を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ニューイヤーミーティングの第一回は1977年。当時、まだ現行モデルだったクルマがエントリーしているあたりにこのイベントの歴史の長さを感じます。


▲1953年(昭和28)W191型メルセデスベンツ170S

ニューイヤーミーティング開催当初はこういったクルマがメインだったことでしょう。筆者の夢のクルマ170Vの改良型の高性能版です。基本設計は1936年のW136型170Vを踏襲した暫定戦後型というべきモデルでポントンと呼ばれる、モダンな一体型フェンダー3ボックスのW120型が登場する1955年まで製造されます。



さて、今回が最後というニューイヤーミーティングですが悪い話ばかりでも無いようです。「サードパーティによるクラシックカーのリプロ部品」というのはしばしばCL上でも取り上げていますが、日産車オーナーの間ではハコスカやケンメリ、S30型フェアレディZのリプロ部品でお馴染みのリバイブジャロピー(http://revivejalopy.blog9.fc2.com/)のブースには「コスモスポーツの部品の扱いを開始」という告知がありました。詳細はまだのようですがブッシュ類やオイルシールと言ったゴム類や消耗品だけでなくヘッドライトカバーやエンブレムといった外装部品も手掛ける様で期待が持てます。



また、ヨコハマタイヤのブースではアドバンタイプDに続いて、知る人ぞ知る(?)10インチタイヤで昔のトレッドパターンのまま販売が続いていたGTスペシャルがなんと「GTスペシャルクラシック」と銘打ち、クラシックタイヤとして10インチ以外にも14インチと15インチにもサイズ展開するというアナウンスがありました。



思わず「185/70R13は作らないんですか?」と尋ねると「やっぱり、一番要望の多いサイズですね。」とのこと。どうやらクラシックカー用タイヤとして13インチはかなり需要が多いようで、来る人来る人「13インチは無いのか?」と尋ねていました。一度は舶来タイヤに傾倒した筆者も、「GTスペシャルに185/70R13がラインナップされれば、またヨコハマタイヤに戻る事も…」と考えてしまいます。

また、タイプDはWeb販売のみで店頭での販売が無かった事に不満の声を聞くこともあったのですが、春以降は一般の販売店にも卸すとのこと。クラシックタイヤが町のタイヤ屋さんで買える、長らくクラシックカー用のタイヤで悩んでいた身には夢のような話です。



閉会式で発表されたコンクールデレガンスでは、「今回は『エレガント』ではなく『存在する事に意味があるクルマ』を選びました」とのことで、ウニモグのような多目的車両を国産化しようと試みた三菱2W-400。スポーツカーとは違いレストアして保存する対象にはなりにくい大衆車のカローラ。など、通常のコンクールとは違った趣旨のクルマが選ばれ、大賞には1972年のSCCAのチャンピオンカーで1982年にラグナセカから日本に持ち帰られたダットサンフェアレディのレーシングカーが選ばれました。

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今後は古い車を愛する人のモラルが問われる?


最近のニューイヤーミーティングに関しては辛辣な意見を耳にすることがあったり、暴走族や違法改造車の集会のようになったりと危機的な状況であることはなんとなく感じていたのですが、いざ「日本最古のクラシックカーイベントが無くなる」というのは忌々しき事態である事に間違いありません。

「クラシックカーイベントなんてほかにいくらでもあるじゃないか」と軽く考えてしまうかもしれませんが、そもそも「どれに行こうか迷うほど」のクラシックカーイベントが日本で開催される原点となったイベントがニューイヤーミーティングであり、ニューイヤーミーティングの最後は手弁当で運営されているクラシックカーイベントなど、会場の都合や来場者のモラル次第で他のイベントもいつ消滅してもおかしくないという警句なのかもしれません。

古いクルマの維持と同様、古いクルマを楽しむための環境を残す努力をオーナーもファンも、我々メディアも怠ってはなりません。

[ライター/写真 鈴木 修一郎]

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