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更新2022.06.30

趣味車を他メーカーに乗り替えることは「これまで築いてきた人間関係がリセットされる」と同義かもしれない

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松村 透

日々、SNSに目を通していると「クルマを買いました」あるいは「○○○(※車名)を下ります。いままでありがとうございました」といった文言を目にする機会がしばしばあります。


あるとき、気づいたことがあります。それは趣味車を他メーカーに乗り替えることは「これまで築いてきた人間関係がリセットされる」と同義かもしれない、と。


今回の記事の内容について・・・。これは今から20年くらい前、実際にあったエピソードです。


長年憧れてきたポルシェ911(930型)を手に入れ、その世界感を謳歌していた方、仮にAさんとします。そのAさんが「長年にわたり夢の1台」だと語ったフェラーリ512TRと巡り会い、悩んだ末に乗り替えた結末とは・・・。


今回、Aさんから承諾をいただき、そのエピソードと結末を紹介しつつ「他メーカーの趣味車に乗り替える=これまで築いてきた人間関係がリセットされる」という事実について触れてみたいと思います。


■念願の愛車を手に入れるのはゴールではなく、スタートだという事実



まずはじめに「念願の愛車を手に入れるのはゴールではなく、スタート(またはリセット)」だということを踏まえたうえで話を進めます。


オーナーインタビューの取材中、雑談のなかで伺うエピソードのひとつに『念願のクルマを納車して、自宅に帰るまでの道中に“オレはこのクルマを手に入れることが目的だったんだ”と気づいて悲しくなった経験がある』というものがあります。志望校に合格することが目標で、必死に勉強して、それが達せられた時点で燃え尽き症候群になってしまった・・・というケースと似ているかもしれません。


つまり、納車(志望校に合格)した瞬間が頂点であり、その先のことをまったく考えていなかった(あるいは考えられなかった)のです。その結果、目標が達せられた時点で、それまでメラメラと燃えさかっていた情熱が失われてしまうのです。端から見れば「なんでそんなことが分からないんだよ」と思うかもしれませんが、当の本人はとにかく目の前のことに必死で、その先(納車後だったり、合格した後だったり)まで考えている余裕がなかったのだそうです。


■手に入れた愛車は「コミュニケーションツール」だと気づく



さて、話題を冒頭の「Aさん」に戻します。


実際には個人差があるようですが、趣味性の高いクルマを手に入れると自然と同じ趣味趣向を持つ仲間が増えていきます。


ポルシェ911(930型)を手に入れた「Aさん」も、同じクルマを愛車に持つ仲間たちが集うグループに加入して、メンバー限定のメーリングリスト(もはや死語です)にも参加。日々の他愛ないやりとりや、ツーリングや忘新年会などの飲み会などを通じて、次第にメンバーたちとの交流を深めていったのです。


かつては「社会人デビューしたら真の友人は作れない」と断言する人もいましたが、いまはそんな時代ではありません。幼少期から付き合いのある親友とは違うけれど、インターネットやSNSをうまく利用すれば「お互いに、ある程度大人になってから知り合ったからこそ良さが分かる」人間関係の構築も不可能ではありません。その際、手に入れた愛車が「コミュニケーションツール」として大いに役立つのです。


ただ、年齢も職業もこれまでの生い立ちもまったく異なる人たちが「1台のクルマ」という共通言語を通じて、独得の人間関係を構築している世界は独得です。


適度な緩さと距離感が絶妙なバランスで成り立っているグループ、絶対的リーダーの存在で成り立っているグループ、揉めごとが絶えず、頻繁にメンバーが入れ替わっているグループ・・・といった具合に、大小さまざまなグループが存在することはご存知のとおりです。水が合うかどうかは巡り合わせ、その人の運次第、といったところでしょうか・・・。


それはさておき。幸運なことに、Aさんが参加したグループは比較的年齢層も近い方が多く、とても居心地が良かったそうです。こうしてポルシェ911(930型)を手に入れ、所有する喜びを知ったAさん。気の合う仲間たちとの活動にものめり込んでいきます。


■夢の実現か、それとも現状維持か・・・



Aさんがポルシェ911との暮らしにもすっかり慣れてきた頃、グループ内の仲間を通じて「フェラーリ512TRを手放そうとしている人がいる」という話が舞い込んできます。それはまさにAさんにとって「夢の1台」だと語ってきた存在そのものです。


その個体とは、趣味を通じて知り合ったグループの友人(※Aさんは面識なし)が複数台所有するうちの1台だとか。オーナーさんはご高齢で、新車で手に入れたフェラーリ512TRを運転するのが困難となり、大事にしてくれる方を探していたそうです。横のつながりがあればこそ舞い込んだスペシャルオファー。まさに「カーセンサーには決して載らない、水面下で取引されるクルマ」です。


Aさんにとって願ってもない話でした。ハナから諦めていた夢の存在、高嶺の花であるフェラーリ512TRが手が届きそうなところにあるのですから。しかし、そのためには重大な決断を下す必要があったのです。


理想は増車だけれど、当時のAさんにとってそれは無理な状態でした。よってAさんが夢を実現するためには、愛車であるポルシェ911を手放し、さらに追い金を払う必要があったのです。


この機会を逃したら、2度とワンオーナーかつ極上モノのフェラーリ512TRを良心的な金額で手に入れるのは難しいかもしれない・・・。本能的に、そう直感したというAさん。しかし、いまの仲間たちとの関係性は?いまやすっかり打ち解けた仲間とはいえ、ポルシェ911に混じって1台だけ別のクルマ(しかもフェラーリ512TR)でツーリングに行くにはちょっと浮いてしまいそうです。


そしてAさんは「究極の選択」を迫られます。


すべてをリセットして夢の1台であるフェラーリ512TRを手に入れるか、これまでどおりポルシェ911を維持しつつ、いまの仲間たちとの関係を優先するか‥。


当時、Aさんは50代前半。結婚していたそうですが、お子さんがいなかったので、奥さまの許可さえ下りればあとはAさんが腹をくくるだけ・・・。すべてをリセットして未知なるフェラーリの世界に足を踏み入れるか、(特に不満があるわけではなく、むしろ楽しんでいる)現状を維持すべきか・・・。数日間、悩みに悩んだそうです。


■結論:趣味車の乗り替えは「これまで築いてきたものすべてをリセットするくらいの覚悟」が必要かもしれない



結局、Aさんはポルシェ911を手放し、フェラーリ512TRを手に入れる選択をしました。ついに夢を現実にしたAさん。まさに人生の絶頂期、我が世の春を謳歌していたのかと思いきや・・・。


手に入れてから1年半ほどでフェラーリ512TRを手放してしまい、メルセデス・ベンツのEクラスステーションワゴンに乗り替えたそうです。


これにはさまざまな理由が重なったようですが、フェラーリ512TRで出掛けると、置き場所に困るだけでなく、出先で携帯電話のカメラで撮られることもしばしば。ご本人が想像していたよりもはるかに目立ったそうです。Aさんが周囲から注目を集めるのが快感というタイプであれば問題はなかったのですが、実際には一定以上のラインを超えると苦痛に感じるタイプだったのです。

いったん趣味のクルマからは離れつつ、実用的で自分自身が乗りたいクルマ・・・として思い浮かんだのが、メルセデスのEクラスステーションワゴン。たまたまカーセンサーで見つけた程度の良い中古車を手に入れたのだとか。当時は「つなぎのつもりで」乗るつもりが、案外気に入ってしまい、ずっと乗りつづけているそうです。


そして、フェラーリオーナーで構成されるグループにも参加みたものの・・・。これまで周囲にいたポルシェ911のオーナー像とはまったく異なる雰囲気に戸惑ってしまい、やがてフェードアウト。


そのうち乗る頻度が減り、トラブルも続出して・・・。いつしかAさんはフェラーリ512TR自体を運転する行為はもちろん、自宅のガレージに置いてあること自体が苦痛になってしまったそうです。そしてあるとき、ついに手放す決断を下します。世間的にも人気があるクルマだけに、業者がすっ飛んできたことはいうまでもありません。


こうして、フェラーリ512TRは業者によって引き取られていったのです。クルマの姿が見えなくなった瞬間「なぜか肩の荷が下りた」と感じたというAさん。ご自身でもいいようのない不思議な開放感を味わいつつ、主を失ったガレージを掃除していたときに思い出したのはポルシェ911を納車した日のことだったそうです。


あれから約20年。これまで1度もポルシェ911にカムバックすることもなく、いつの間にか当時の仲間とも疎遠になってしまったというAさん。いまでもときどき「あのときフェラーリ512TRではなく、ポルシェ911を選んでいたら・・・その後の自分はどうなっていたんだろう」と考えることがあるそうです。



ただ、Aさんの場合、それは後悔ではなく、達成感に近い感覚なのだとか。いろいろあったけれど「乗らないで後悔するより、乗ってみたからこそ分かった」ことがあったそうです。それは「他メーカーのクルマに乗り替えると、それまで築いてきた人間関係もリセットされる」という事実なのだとか。


趣味車を他メーカーに乗り替えたとき、友人として付き合える人が何人かは残るだろうけれど「同じクルマに乗っている(現在進行形)」という、共通の話題があることが重要だと痛感したのだとか。


また、そこまで深い付き合いでなくとも、困ったときに助けてくれる、手放そうかと迷っているときに話を聞いてくれる仲間の存在の重要性を再認識したそうです。そして何より「古いクルマであればあるほど、主治医の存在(と相性)も重要」だと語るAさん。


趣味車を楽しみたい場合、増車できるならともかく・・・。Aさん曰く「ある程度、年齢を重ねてからすべてをリセットする(=他メーカーのクルマの趣味車に乗り替える)のは、それなりのリスクを覚悟しておいた方がいいかもしれない」とのことでした。


失ってから大切な存在であると初めて気づく。それでは遅すぎる。Aさん曰く、その場のノリと勢いで決めるより「乗り替えるべきか、現状維持か?迷ったときほど現在の愛車といったん距離を置く」ことをオススメするそうです。


例えばメンテナンスを兼ねて主治医のところに預けてみる。あるいは友人のガレージに置かせてもらう。その他、ちょっと荒技ですが「第三者に査定してもらう」のも手だそうです。そこで信じられないくらい高値がついたとして「これは高く売れる」と思うか「それでも手放したくない」と思えるか、ある種の踏み絵ではありますが・・・。自分自身の気持ちを確かめる判断材料にはなりそうです。


いま、趣味車の乗り替えを考えていらっしゃる方にとって少しでも参考になればと思い、記事にしました。お役に立てれば幸いです(※Aさんも同じ気持ちだそうです)。


最後に、クルマはお金があれば買えるけれど、人間関係は巡り合わせと運と縁次第。今のカーライフも、もしかしたら実は絶妙なバランスで成り立っているのかも・・・しれません。


[撮影・Aさん&松村透/ライター・松村透]


 


 

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