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ドイツ現地レポ

更新2022.01.16

ガソリン価格や車両税の上昇にも大きく影響!? ドイツで導入されている「CO2税」とは

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守屋 健

ドイツでは今、ガソリンやディーゼルの価格がじわじわと上昇しています。日常会話の中でも「ガソリン代が高くて困る」という話は頻繁に出てくるのですが、これは単に原油価格が上昇していることだけが原因ではありません。実はもうひとつ、年々価格が引き上げられているモノが存在しているのです。


ドイツでは単に「CO2-Steuer(CO2税)」と呼ぶことが多いのですが、これがガソリン価格や、ひいては車両税の上昇にも影響を与えています。日本では「地球温暖化対策税」「炭素税」「環境税」と呼ばれることの多いこの仕組みについて、ドイツでの導入例を紹介していきます。


■CO2排出量の多いクルマは車両税が高くなる?



最初にはっきりと書かなければいけないのは、ドイツでは狭義での「CO2税」は今のところ存在していません。しかし、燃料消費量の多い新車に対してより高い車両税が課せられるようになったり、ガソリンやディーゼルに対しての価格が上乗せされるようになったりしたため、これらを総称して便宜上「CO2税」と呼ぶ場合があります。


詳しく見ていきましょう。まずは、燃料消費量の多い新車に課せられる車両税です。走行距離1kmあたり116gを超えるCO2排出量のクルマに課せられるもので、主にスポーツカーやSUVなどに適用されます。CO2排出量が多いほど税率は高くなり、特に195g/kmを超えるクルマに対しては最大税率が設定されます。


この仕組みを導入することで、より燃料消費量の少ない、経済的なクルマを購入してもらおうというのがドイツ政府の狙いです。しかし、すでに登録されているクルマに関しての税率は据え置きであり、かつ車両税の上昇幅は10ユーロにも満たない場合がほとんどです。


ひとつ例を挙げましょう。排気量が1496cm3でCO2排出量が140g/kmのガソリンエンジン車の場合、2020年までの年間車両税は120ユーロでした。このクルマを2021年に購入した場合、年間車両税は126ユーロとなります。6ユーロの上昇幅を大きいと見るか小さいと見るかは、ドイツ国内でも意見がわかれるところです。


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■日々の家計を圧迫する、ガソリン価格の上昇



もうひとつ、日々の生活に小さくない影響を与えているのが、燃料代の上昇です。2021年から、ガソリンスタンドで販売されるガソリンとディーゼルに対し、CO2量1トン当たり25ユーロが課せられることになりました(いわゆる「カーボンプライシング」)。ガソリン1リッターあたり約7セント(約9.1円)、ディーゼル1リッターあたり約8セント(約10.4円)上昇する計算です。


CO2量1トン当たりに課せられる価格は毎年上昇することが決まっており、2022年には30ユーロ、2023年には35ユーロ、2024年には45ユーロ、2025年にはなんと55ユーロまで引き上げられます。2025年になれば、ガソリン1リッターあたり約15セント(約19.5円)、ディーゼル1リッターあたり約17セント(約22.1円)まで値上げされる計算です。


こうしたガソリンやディーゼルの値上げに加えて、EVに対する購入補助金や優遇税制などの充実が、ドイツでEVシフトが急速に進む要因となっています。


■クルマでしか職場に通えない人のために



一方で、クルマで通勤する人に対して考慮される通勤手当に関しては、2021年から引き上げられることになりました。誰もが自転車や公共交通機関で通勤できるわけではないですし、燃料価格の上昇が自動車通勤者の家計を圧迫すると考えられているからです。


自宅から職場までの距離が20kmまでの場合、1kmあたり30セントが支払われます。2021年から通勤距離が21km以上の場合1kmあたり35セント、2024年からは38セントまで引き上げられます。


しかし、ADAC(ドイツ自動車連盟)はそれでも不十分と考えているようで、最初の1kmから20kmまでの間の通勤手当も上げてほしいと政府に進言しています。現在決められている仕組みでは、職場までの距離が20kmまでの近距離通勤者は通勤手当引き上げの恩恵を受けられないからです。


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■早期のカーボンニュートラル実現をめざして



ドイツでは年間約8億トンのCO2が排出され、その原因は1位が発電(特に石炭火力発電)、2位が産業、3位が交通です。3位の交通のうち、6割は自家用車が占めています。ドイツ政府はこの状況を重く見ていて、温室効果ガスの削減のために、自家用車が排出するCO2を減らすことが急務だと考えています。


ちなみに日本では2012年から「地球温暖化対策税」が導入されているものの、その税率はCO2量1トンあたり289円と、ドイツに比べると非常に少なく設定されています。2021年には環境省がカーボンプライシング導入に関する有識者会議を開き、「地球温暖化対策税」の見直しを提案したものの、鉄鋼業界や中小企業からの慎重意見が相次ぎ、具体的な導入の目途は立っていない、というのが現状です。


洪水被害が相次ぐドイツでは、気候変動に対する危機感が強い上、自動車産業そのものも大きな変化を求められる時代に突入しています。CO2の削減目標、燃料代の上昇、EVへの急激な転換……これらはすべて繋がっていて、切っても切れない関係にあります。ドイツ政府は、この微妙なバランスをどのように取っていくのでしょうか。オラフ・ショルツ新首相は就任早々、非常に難しい舵取りを求められているといえるでしょう。


[ライター/守屋健]


 

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