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ドイツ現地レポ

更新2020.12.24

ドイツでは2050年に全廃?現地でガソリン(PHV含む)とディーゼルエンジン車はいつまで販売できるのか

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守屋 健

みなさんこんにちは。ドイツは12月半ばからロックダウンが強化され、前例にないほど静かなクリスマスシーズンを迎えています。私的な集まりはかなり制限されているものの、プレゼントの交換だけでもやろう!と考える家族は多く、配送をする宅配便のドライバーたちは忙しそうに街中を駆け回っています。

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忙しいといえば、医療施設関係者や生活必需品を売るスーパーや薬局の店員たち、そして公的機関に努める公務員も同様です。VDA(ドイツ自動車工業会)の上層部にとっても、2020年後半はかなり慌ただしかったに違いありません。2020年秋に行われたEUの新しい排気ガス規制についての話し合いでも、VDAと政府の間で激しい意見の応酬が見られました。

ドイツでは一体いつまで、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車が販売できるのでしょうか?そして、PHV(プラグインハイブリッド車)を含め、内燃機関を搭載したクルマが公道の走行を完全に禁止されるのはいつなのでしょうか?ドイツ現地からレポートしていきます。

■ドイツでは2050年にガソリン(PHV含む)とディーゼルエンジン車を全廃予定


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結論から言いましょう。ドイツでは2050年にガソリンエンジン車(PHV含む)とディーゼルエンジン車の全廃が決定されています。2050年からは、電気自動車のみが認可されることに認可されることになり、それまでのガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車が公道を走ることはできなくなります。

しかし、E-Fuelなどの合成燃料を利用したクルマや水素燃料車などは今まさに研究段階であり、こうした種類のクルマがどういった規制を受けるのかは、現在も議論の対象となっています。

新車の販売については、ドイツでは2035年にガソリンまたはディーゼルエンジン車の新規登録を禁止する方向で議論を進めてきました(野党の一部は2030年と主張)。アメリカのいくつかの州や、イギリスも同じく「2035年」を目標としていました。ところが2020年に入り、イギリスは計画の前倒しを発表。2030年にはガソリンまたはディーゼルエンジン車の販売を禁止すると明言し、ドイツに少なくない衝撃を与えました。現時点では、ドイツ政府はガソリンまたはディーゼルエンジン車の新車販売禁止時期を明言していません。

EUに属する他の国から比べると、ドイツのEVシフトはかなり慎重なペースで取り組んでいると言えるでしょう。対照的にもっとも進んでいるのはノルウェーで、2025年にはEVのみに完全移行する計画です。ノルウェー政府はEVシフトに対し企業へ多額の補助金を出しており、かつ公共電気代はドイツと比べてはるかに安いという事実が、ここまでの早期移行を可能にしたと見られています。

こうしたEVシフトへの根拠となっていたのは、2015年に採択された気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定、「パリ協定」です。ただし、この協定で決められた目標をクリアするには動きが遅すぎる、という意見もドイツ国内で上がっていたことはたしかで、2050年全廃よりも計画の前倒しを求める声も少なくありませんでした。

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■「ユーロ7」で揺れるドイツ国内


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2020年になると、今度はまた異なる角度から「ガソリンまたはディーゼルエンジン車の販売をもっと早く禁止にせざるを得ないのでは?」という意見が出されるようになりました。その根拠は、現在議論されている新しい排ガス規制「ユーロ7」です。

「ユーロ7」については、もともと2020年までに内容を定める予定でしたが、コロナの感染拡大で議論が進まず、結論は2021年に持ち越しとなりました。順調に進めば、「ユーロ7」が発効されるのは2025年とされています。

しかし、この「ユーロ7」で求められるとされる排気ガス基準は非常に厳しく、基準の緩和が行われない限り、ガソリンまたはディーゼルエンジン車ではクリアできる見込みがまったく立っていません。現在の「ユーロ6」では、窒素酸化物の排出量をガソリン車で60mg/km、ディーゼル車で80mg/kmまでと定めていますが、「ユーロ7」はガソリン・ディーゼル車ともに30mg/km以下、将来的には10mg/km以下にすることが求められています。他にも一酸化炭素や亜酸化窒素、アンモニアの排出量も決められ、走行テストについてもより厳格に行われる予定です。

つまり、「ユーロ7」が2025年から実施されてしまうと、その年以降ガソリンまたはディーゼルエンジン車は実質販売できない、ということになります。その結果、ドイツが当初考えていた計画より、さらに前倒しになってしまう恐れがあるのです。

VDA(ドイツ自動車工業会)は「ユーロ7」を進めるEU政府に対し、「あまりに性急すぎる」として強く反発。現在自動車会社で働いている多くの人々が職を失ってしまうし、トラックや各種交通インフラの電化も含めて考えていくべきだ、と主張しています。

また「ユーロ7」が実施されたあと、国内に大量に存在するガソリンまたはディーゼルエンジンの中古車についてその扱いをどうするかは、今はまだはっきりとは決まっていません。2050年まで公道走行可能とするのはあまりに遅すぎる、という意見も多く、今後の議論の成り行きが注目されます。

つい先日、2020年11月17日に行われたドイツの政府と自動車業界との会議では、30億ユーロもの支援金を自動車業界に対し拠出すると発表しました。そのうち10億ユーロは、2025年まで延長された「電気自動車購入支援金」、もう10億ユーロは排気ガス規制に対応していないトラックを廃棄すると支給される「トラック廃棄支援金」に充てられます。残りの金額は、バスや消防車、ごみ収集車など、公営トラックの代替費用に充てるほか、電気自動車用充電ステーション設置の資金として使われます。

トラックに関しても、ディーゼルエンジンについては2040年に新車販売を禁止し、2050年にカーボンニュートラルとするため、ダイムラーなどの大手が政府との間で資金援助について交渉中です。

■先の見えない話し合いが続く


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2020年9月、とあるニュースがドイツのスポーツカー好きの間でちょっとした話題になりました。2020年8月におけるEU内で一番売れたポルシェは、EVである「タイカン」と発表されたのです(Car Industry Analysisによる)。その内訳は、タイカンが1,183台、2位の911が1,097台、3位のカイエンが711台と続きました。世界屈指のスポーツカーメーカーであるポルシェで、EVが月販1位を取る日がこんなに早く来るなんて、誰が想像していたでしょうか。

今回紹介した内容も、現在様々な事柄が並行して進んでいる最中であり、正直なところ「はっきりとしたことはなにも言えない」という状況です。新技術の開発やインフラの整備、議論の進み方によって、ガソリンエンジン車全廃の時期はもっと早まるかもしれませんし、結局2050年まで伸びるかもしれません。ひとつだけ言えるのは、これから先も、なにが起こるかはまったくわからないということです。

あなたが乗っているガソリンエンジン車も、いつまで乗れるのか、現時点では断言できません。内燃機関に残された時間はわずかです。こんな時だからこそ、みなさん一人一人が本当に好きなクルマに乗って、充実したカーライフを送られることを心から祈っています。

[ライター/守屋健]

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