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テクノロジー

更新2017.05.26

ドイツ車が急速に電気自動車へシフトしつつあるのは何故なのか?

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海老原 昭

日本、米国と並ぶ自動車王国であるドイツ。これまでドイツは日米と比べると電気自動車やハイブリッド車への取り組みに積極的ではない印象だったが、ここへきて急速に電気自動車へシフトする姿勢が明らかになった。日本・米国と並ぶ自動車大国であるドイツでの電気自動車情勢がどうなるのかをレポートしよう。

ドイツでも電気自動車への補助金がスタート




実は日米と異なり、ドイツでは電気自動車に対する購入補助金の制度がこれまで存在しなかった。しかしフォルクスワーゲンによるディーゼルエンジンの不正プログラムというスキャンダルの影響か、3月に入ってから、ドイツでのエコカーの将来図を、クリーンディーゼルから電気自動車へと大きく舵を切ってきたのだな、という感のあるニュースがドイツで流れた。このニュースによると、ドイツ政府は4月に日本で開催されるサミットにおいて、ドイツは2020年までに100万台の電気自動車を普及させる。この目標を達成するため、2016年7月から10年間、電気自動車の購入に向けた補助金を導入することを発表するという。

具体的な補助金の詳細は、自家用車向けに5000ユーロ(約62万円)、事業用車の場合は3000ユーロとなり、その他充電スポット1万5000箇所の設置や、バッテリー研究への補助金が含まれる。総額では13億ユーロ(約1600億円)に達する大型の政策だ。

日米と比較してみると、米国では7500ドル(約84万円)、日本では車種によって異なるが、国と自治体の両方から補助金が出る形だ(参考:日産リーフの場合、平成27年度は国から51万円の補助金が出た)。

ドイツの場合は、金額的には日米の中間程度だが、気をつけねばならないのは早く購入するほど補助金が多いこと。毎年500ユーロずつ補助金が下がっていくため、最終年度には500ユーロまで落ちてしまう。日本の場合は車種ごとに個別の申請期限があるなど、申請の手間が面倒。米国の場合は実際にその額を納税していなければ支給されないという制限がある。いずれもそれぞれの国の事情に合わせたものなので、ひとくちにどれがすぐれていると評価するのは難しいが、ドイツの場合は早く普及させようという意気込みは感じられる。

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電気自動車へシフトしつつあるドイツ車メーカー




ドイツを代表する三大メーカーであるフォルクスワーゲン、ダイムラー、BMWの各グループはいずれも電気自動車を販売しているが、これまで一番力を入れてきたのは、高級スポーツモデル(BMW i8)も導入しているBMWだった。しかし、他社も補助金の導入などで戦略を改めてくるだろう。

フォルクスワーゲンはクリーンディーゼル偏重だったラインナップを改めつつあり、同社のEV事業担当者が、2025年までに販売台数の25%をEVにするという発言をしたばかり。各モデルにEVモデルを広げていくようだ。現在190km程度しか走れないゴルフEVなどについては、これをバッテリーの改良などで、年内に走行距離300km、将来は500km程度まで拡張するとしている。3社の中では補助金をうけられるモデルが一番早く、数多く投入されるとみられる。



ダイムラーはEVと燃料電池車(FCV)の双方を視野に入れて開発を進めているが、同社のディーター・ツェッチェCEOは、独誌のインタビュー記事内でEVが有利になるだろうと発言しており、まだ未解決の問題が多いFCVよりもEVを優先してくるとみられる。すでにEV用の共通プラットフォームを開発しており、2018年にメルセデス・ベンツブランドから中型セダンと中型クロスオーバー、大型セダンと大型クロスオーバーの4モデルが登場すると見られている。補助金の額は1000〜1500ユーロほど下がってしまうが、ベンツブランドとなれば注目度は高いだろう。

BMWはすでにi3、i8という2車種のEVモデルを販売しているが、ここに「iNEXT」と呼ばれている第3のモデルを投入する予定。ただし投入は2020年ごろになる見込みで、直近では2018年ごろにi8のオープン版が登場する程度で、ラインナップの見直しは計画されていないという。EV専用車よりも既存モデルの拡充やPHV版の投入でiNEXTまでをつなぐ模様だ。

かなり先の予定まで入っているため、これらの新モデルが日本にも導入されるかは未定だが、既存モデルを除けば、その数と種類はフォルクスワーゲングループが一番多いことになりそうだ。ただし、その多くは2017年度以降の登場となるだろう。

課題は自動車よりもインフラ整備




ドイツでも電気自動車へのシフトが明らかになってきたが、ネックになるのは短い走行距離と、それをカバーする充電インフラの充実だ。たとえばドイツでは約43000件のガソリンスタンドが国中をカバーしているが、電気自動車の場合、そもそも充電スタンドの数が圧倒的に足りず、急速充電もまだ実用化されていない(急速といってもガソリンを入れるよりは時間がかかることは否めないのだが)。

補助金が多く支払われても、充電の不安があれば、EVを選ぼうというユーザーは増えないだろう。ニワトリと卵の関係のようだが、先行する日米ですら、インフラ整備はようやく始まりつつあるといった段階だ。ドイツのEV普及政策は始まったばかりだが、前途は決してなだらかだとは言いづらいだろう。

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