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更新2018.09.01
往年のメルセデス・ベンツマニアが歓喜するボディカラー!初代Gクラス最後の特別仕様車をトミカで再現

北沢 剛司

▲G 350 d Heritage Editionは463台限定の特別仕様車。「ブルーブラック」を除く4種類のカラーにはナイトパッケージが装着され、ルーフ、バンパー、オーバーフェンダー、リアホイールカバーリングなどに「オブシディアンブラック」の塗装が施される
日本未入荷のG 350 d Professionalをイメージ
ボディカラーを語る上で外せない車種が、2016年に本国で導入されたG 350 d Professional。このモデルの専用ボディカラーとして、「デザートサンド」とともに設定されたのが「チャイナブルー」でした。


▲2018年8月に開催された「AUTOMOBILE COUNCIL 2018」で、サエキモータースさんが展示していたG 350 d Professional。本格的なオフロード装備が別物の存在感を放っている
G 350 d Professionalの特徴は、オフロードでの機能性を追求したシンプルな仕様。外観ではフロントマスクやオーバーフェンダーがマットブラック仕上げになり、ドアミラーは手動式。オプション装備には、ラダー付きルーフキャリア、ウィンチ装着に対応した専用フロントバンパー、トレーラーヒッチなどが設定されました。内装ではパワーウィンドウとCOMANDシステムが廃され、水洗いに対応したフロアを採用。オプションでウッドフロア仕様のラゲッジルームが設定され、スパルタンな内外装を特徴としていました。

そんな質実剛健なG 350 d Professionalに比べると、日本限定のG 350 d Heritage Editionはラグジュアリー志向が強く、快適性とヘリテージカラーをバランスよく両立させたモデルといえます。
トミカをベースにG 350 d Heritage Editionを製作
そんな懐かしいボディカラーが気になっているときに、ふと思い出したのがトミカのメルセデス・ベンツ Gクラス。最終型のGクラスを製品化しているため、手軽に塗り替えを楽しむにはうってつけの存在です。そこでトミカをベースに、「チャイナブルー」と「ライトアイボリー」のG 350 d Heritage Editionを再現することにしました。


▲2018年2月に発売されたトミカのメルセデス・ベンツ Gクラス。新型Gクラスではなく、従来型を製品化しているのがポイント
まずは小型ドリルのビンバイスでボディとシャシーを止めるカシメを外し、各部品を分解します。その後、塗料はがし液を使ってダイキャストボディの塗装を剥離。下地処理としてメタルプライマーとサフェーサーを塗布し、本塗装に備えます。

ボディカラーの再現にひと工夫
実車のボディカラーを再現するため、MB純正タッチアップスプレーを使うことを考えました。しかし、一般的なボディカラー以外はほぼ流通していない状況で、別の方法を考える必要がありました。それが、9500色以上のカラーが調色可能なホルツのペイント調色システム「MINIMIX」。純正色のカラーコードが分かれば、自分が欲しい色のタッチペイントやスプレーが手に入るのです。

▲ホルツの「MINIMIX」で調合したMB純正ボディカラー
このシステムはオートバックスなどのカー用品店などに設置されているため、手軽に入手できるのが大きなポイント。店頭でメーカー名とカラーコードを伝えて注文すると、約30分ほどでスプレーが完成します。今回調色したのはカラーコード623の「ライトアイボリー」とカラーコード197の「オブシディアンブラック」。ちなみに価格は1本2480円+税。模型用スプレーに比べると高価ですが、純正色に調色する手間を考えれば許容範囲といえるでしょう。
しかし、問題がひとつありました。調色可能なリストに「チャイナブルー」がなかったのです。そのためPCの画像ソフトを使い、「チャイナブルー」の色の三原色をwebの写真から解析。そしてガイアカラーの「純色シアン」「純色マゼンタ」「純色イエロー」と「ピュアホワイト」を使い、自分で調色しました。

▲ガイアカラーの「純色シリーズ」を使い「チャイナブルー」を調色
こうしてようやく塗料のメドがたったため、本塗装を開始しました。

まずは「ナイトパッケージ」部分の「オブシディアンブラック」を塗装します。ホイールもブラックで塗装する必要があるため、車軸を曲げないようにタイヤとホイールを慎重に分離して塗装を行います。

▲「オブシディアンブラック」の塗装後は、マスキングをしてボディカラーを塗装
塗装をすべて完了したら、各部品を元通りに組み直して完成です。


トミカをベースに「チャイナブルー」に塗装したのがこちら。右ハンドルの実物に対してトミカは左ハンドルのため、さしずめ「G 350 d Heritage Edition風」というべきでしょうか。光線の具合でボディカラーの見え方が大きく異なるため、写真ではかなり水色が濃く見えてしまいます。三原色の割合通りに調合してもなかなか思い通りの色が再現できず、とても苦労しました。


こちらは「ライトアイボリー」に塗装したもの。あまりにもディテールの塗り分けを再現するとトミカらしさがなくなるため、あえて塗装を省略した箇所があります。不満な部分もありますが、トミカをベースに個性的なヘリテージカラーを手軽に再現できたという意味では面白い作業でした。
サッコプレート時代のヘリテージカラーも独自に表現
往年のボディカラーを復刻して話題となったG 350 d Heritage Edition。ただネオクラシック派からすると、ルーフ、バンパー、オーバーフェンダーなどがグロスブラック仕上げとなるため、モダンな印象を受けるのも事実です。特にダークカラー同士のツートーンになる「マラカイトグリーン」にはレトロ感が希薄で、むしろミリタリーライクな別の個性さえ感じられます。
「マラカイトグリーン」といえば、個人的にはブルーノ・サッコがメルセデスのデザインを統括していた時代の、通称「サッコプレート」を装着したモデルの印象が強く残っています。その頃の「マラカイトグリーン」は、下半分が薄いグリーンメタの「トロピカルグリーン」に塗り分けられ、独特のエモーショナルな魅力がありました。ボディの上半分と下半分を同系色の濃淡でまとめるセンスに感銘を受けたことを思い出します。

▲本国で作成されたW124の内外装カタログ。1993年11月版(左)と1994年6月版(右)を見比べると、メタリック色が12色から9色に減少したことが分かる
せっかく往年のカラーを復刻するのであれば、「サッコプレート」時代の塗り分けを再現してみたいという妄想が膨らみます。なかでも’90年代にW140やR129などで人気のあったブラウン系パープルメタの「ボーナイト」を復刻したいという改造欲がムラムラと湧いてきました。そこでもう一台、トミカをベースにした「俺流の」Gクラス ヘリテージエディションを製作することにしたのです。
実家に保管してあるダンボールを捜索すると、いまから約25年前に買ったMB純正タッチアップスプレーが未使用の状態で残っていました。まさに本家の純正色でミニカーを塗装することができると喜んだのもつかの間、カラーコード481の「ボーナイト」は液漏れしていて使えない状態。一方、ボディ下半分に塗るカラーコード166の「バイオレットグレー」はなんとか使える状態だったため、前述のホルツの調色スプレーで「ボーナイト」のスプレーを新たに調達して塗装に臨みました。

▲今から四半世紀前に購入したMB純正タッチアップスプレー
とはいえ、25年前の塗料ではマスキングした際に塗装が剥離するリスクが高いのではと考え、ホルツの「ボーナイト」の塗装を終えた後に、MB純正タッチアップスプレーの「バイオレットグレー」を塗り重ねることにしました。

こうして完成したのがこちらの作品です。実車のナイトパッケージではルーフとスペアタイヤカバーのリングも「オブシディアンブラック」になりますが、サッコプレートの塗り分けは下半分のみが基本。そのため、ツートーンの塗り分けはバンパーとオーバーフェンダー部分に留め、ルーフは「ボーナイト」で塗装しています。

リアホイールカバーリングは塗装を剥離した無塗装の状態のままクリアを吹き、ダイキャストボディの地肌でクローム仕上げのリングを再現しました。そして内装は「ボーナイト」外装色では定番の組み合わせだったベージュ色としています。前述のホルツの「ライトアイボリー」のスプレーで内装パーツを塗装し、つや消しクリアのスプレーを吹いてマット仕上げにしました。

「サッコプレート」時代の塗り分けを再現した「ボーナイト」外装色のGクラス。もちろんまったく架空のモデルですが、妄想を形にした自由な作品がつくれるのも改造ならではの楽しさといえるでしょう。実車を忠実に再現するのとは別に、たまにはこんな作品をつくってみるのも気分転換になるので面白いですね。
[ライター・画像/北沢剛司]