更新2022.07.05
独財務相、35年までのエンジン搭載車販売禁止に反対
外車王SOKEN編集部
ドイツのリントナー財務相は6月21日、2035年までにガソリン車など内燃機関車の新車販売を事実上禁止するEUの新ルールを支持することはできないとの考えを示した。リントナー氏は企業寄りの自由民主党(FDP)に所属しており、エンジン搭載車の一律禁止に反対する業界団体に配慮した形。ただ、連立を組む緑の党は法案を支持しており、法案成立に向けた欧州議会と閣僚理事会の交渉を前に、ドイツ政府がどのような立場を取るか注目される。
リントナー氏はベルリンで開かれたドイツ産業連盟(BDI)主催のイベントで、内燃機関車の販売を完全に禁止するのは「誤った決定」であり、ドイツは「同意するつもりはない」と述べた。
EU域内で販売する乗用車と小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準を厳格化する法案は、2030年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fitfor55」の柱の1つとして、欧州委員会が21年7月に提案した。ゼロエミッション車への移行を加速させるため、30年までに新車のCO2排出量を21年比で55%削減し、35年までに100%の削減を実現するという内容で、これに基づくとEU市場では35年以降、ハイブリッド車を含めて内燃機関車が実質的に販売できなくなる。
業界内では100%削減という目標を達成するには充電インフラの大規模な整備が不可欠といった声や、ハイブリッド車も販売禁止の対象となることへの反発が根強く、35年の削減目標を90%に緩和するよう求める動きもあった。しかし、欧州議会は6月8日の本会議で法案を賛成多数で可決しており、今後、加盟国で構成する閣僚理事会との交渉に入る。
ドイツの各メーカーは電気自動車の増産に力を入れているものの、エンジン搭載車の販売を一律禁止する計画については業界団体のドイツ自動車工業会(VDA)が反対している。急激な変化への対応は困難で、雇用に悪影響を及ぼすとともに、技術革新を妨げ、消費者の選択肢を不当に制限するなどと主張している。
リントナー氏の発言を受け、レムケ環境相(緑の党所属)の報道官は21日、DPA通信に対し、ドイツ政府は「35年以降に域内で販売する全ての新車をゼロエミッション化するという欧州委と欧州議会の提案を全面的に支持する」と明言した。連立を率いる中道左派の社会民主党(SPD)からはコメントを得られていない。
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