更新2023.03.14
ガソリン車の販売禁止法案 ドイツの反対で採決延期
外車王SOKEN編集部
欧州連合(EU)議長国スウェーデンは3日、2035年までに域内でガソリン車など内燃機関車の新車販売を事実上禁止する法案をめぐり、7日に予定していた採決を延期すると発表した。自国に大手自動車メーカーを抱えるドイツが現行案のままでは支持しない意向を表明したため。欧州議会は2月に法案を採択しており、閣僚理事会の正式承認を残すのみとなっていたが、最終局面で法案成立の見通しが不透明になった。
EUは50年までの気候中立に向けた中間目標として、30年までに域内の温室効果ガス排出量を90年比で55%削減することを目指している。欧州委員会は21年7月、この中間目標を達成するための政策パッケージ「Fitfor55」の一環として、乗用車と小型商用車の排出規制を厳格化する規則案を提示し、22年10月に欧州議会と閣僚理が基本合意していた。
規則案は、新車からの二酸化炭素(CO2)排出量を30年までに21年比で乗用車は55%、小型商用車は50%削減し、35年にはいずれも100%の削減を目指すという内容。35年以降はガソリン車やディーゼル車に加え、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)も販売できなくなる。
ドイツは電気自動車(EV)への移行は不可欠との認識を示す一方、再生可能エネルギー由来の水素と発電所や工場などから排出されるCO2を合成して生成する合成燃料(e-fuel)のみで走行する内燃機関車については、35年以降も新車の販売を認めるよう求めている。ウィッシング運輸・デジタル相は3日の会合で「われわれは気候変動に左右されないモビリティを望んでおり、そのためには考えられるあらゆる技術に対してオープンでなければならない」と指摘。合成燃料で走行する内燃機関車の新車販売が可能になるよう、欧州委に対して規則案の修正を求めた。
イタリアも以前から現行案には反対する意向を表明しており、採決の延期を歓迎している。フラティン環境・エネルギー安全保障相は「イタリアは非常に明確な立場をとっている。ゼロ排出の実現に向けた移行期において、EVが唯一の解決策にはなり得ない」と指摘。再生可能エネルギー由来の燃料で走る自動車も「クリーンな選択肢」と位置づけるべきだと述べた。
規則案をめぐっては、ポーランドも支持しない意向を表明しているほか、ブルガリアは棄権する方針を示していた。現時点で新たな採決の日程は決まっていない。閣僚理の正式承認にはEU人口の65%以上を代表する15カ国以上の賛成が必要で、このままドイツとイタリアの支持が得られなければ法案の抜本的な見直しを余儀なくされる可能性がある。
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