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オーナーインタビュー

更新2023.05.06

つっかけのイタ車生活!おばあちゃんのフィアット・チンクエチェント(2008)

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TUNA

■イタリア、トリノの縦列駐車に想いを馳せる


イタリア・トリノへと自家用車で行った際、地方都市らしい”のほほん”とした市街地が印象的だった。


バカンス時期だったからか、街にはさほど人も出歩いておらず、住宅街のなかに多くの乗用車が雑然と駐車されていた風景を思い出す。


2019年の8月なら、まだ初代パンダが沢山生息しており、初代イプシロンやセイチェントなんかもサバイバー……と表現するにはまだ違和感があるほどの台数を見かけた。


フィアットの工場があるトリノではあるが、イタリア車だけにとどまらず、フランス車も日本車もそれなりに幅を利かせていた。A〜Bセグメントのハッチバックが覇権を握っており、それらを運転するのは特に女性ドライバーが目立った。そしてそれらはどこかに大なり小なりのダメージを負っていたのが印象深く、それでもしっかりと生きている姿はまるで野良猫のようにたくましく憎めない存在だと記憶している。



ヨーロッパでの長旅を終え、名古屋のセントレア空港から豊田市駅行きのバスに乗り込む。
ジェットラグのぼんやりした頭で高速道路を眺めていると、追い越し車線からピカピカに磨かれた育ちの良さそうなコンパクトカーが追い抜いていくのが見えた。


希望ナンバーであろう番号の“・5 00”、バルブで光るタイプの四角いシグネチャーランプが装備された後ろ姿は、後期型のフィアット・チンクエチェントだ。
ヨーロッパでも沢山走っていたが、あんなに奇麗な個体はほとんど見なかった気がする。


クルマを大事に乗ることは素晴らしいことだ。
ただ、本国で出会った“生活の一部として使い倒し、オーナーなりの愛情を込められたクルマ”に日本で出会ってみたいと思ったのだ。


その後数年、さまざまなイベントなどへ足を運んでもそういった存在と筆者はなかなか出会うことができなかったのだが、仕事で知り合った知人のお母さまがチンクエチェントを所有しているということで取材させていただくことにした。


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■「太陽の光を浴びながらの通勤は癒しの時間!」孫ひとり、子ども3人の肝っ玉おばあちゃん


某所のコミュニティセンターの駐車場でオーナーのマナさんと出会う。御年は61歳でお孫さんがひとり、既に手離れした子供を3人を持つ“おばあちゃん”だ。
現在でもフルタイムの仕事をしており、話しぶりを感じると、最近の60代はものすごく活力にあふれていると思う。そんなマナさんは根っからのクルマ好き……というわけではない。
チンクエチェントと過ごしているその理由から伺ってみる。


「このチンクは2年ほど前に息子が選んできたクルマです。買い替える際に、軽自動車がいいとお願いしていたのですが、気づいたらこのクルマが我が家の駐車場に居座っていたんです。最初は戸惑っちゃいましたよね(笑)」


マナさんの若かったころは世代的にもクルマ好きが多かった時代。
免許を取得した昭和50年代、周囲の男友達や同僚に勧められてマツダ・ファミリア(5代目)を新車で購入したという。



当時付き合っていた現在の旦那さんの勤め先がタイヤ屋さんだったこともあり、真っ赤なファミリアはホイールやステアリングを替えられ、当時流行りの“陸サーファー仕様”にカスタムされていったという。


「カスタムは私の趣味じゃなかったんですけどね、クルマ好きの世界ってこんな感じなのね。と、自然と受け入れていましたが、私たちの住んでいた地方では新車のファミリアがまだあまり走っていなかったので結構目立っていてちょっと恥ずかしく、でも少し嬉しく思っていました(笑)」


お子さんが生まれ、さらに旦那さんの仕事の都合で離島へと引っ越しが決まったマナさん。
ファミリアを売却し、ホンダ・トゥデイとスズキ・アルトワークスの2台体制になったそう。
その後、2代目のレガシィツーリングワゴン、レジアス、サイノス、ファンカーゴ、パレット、と乗り継ぎ、チンクチェントを購入するまではトヨタ・アクアを所有していたという。


「ずっと旦那のクルマ趣味に翻弄されていますよね。私はクルマにさほど興味がないので冬道で滑らなかったり、シートが暖かくなったりするほうが魅力的です。今まで一番長く乗ったクルマはトヨタ・ファンカーゴで新車から17万キロまで乗りました。3人の子供が小学校から巣立つまで乗っていたので思い出深さはありますね。例えば、子どもたちは3人ともブラスバンドをやっていたので、その送り迎えだとか、熱を出した末っ子を乗せて夜中に病院へ急行したり、とにかくクルマはいつでも元気に走ってくれることが一番大切だと感じます」


■旦那も息子もクルマ好きに。カーガイたちに翻弄されるカーライフ


マナさんとクルマのエピソードは、常に3人のお子様との話が結びついているように感じられる。車種や性能などはなく、思い出話に花を咲かせる。さまざまなクルマと暮らしているうちに子供たちもクルマへと自然と興味をもってきたそう。


「旦那に似たのか、長男がクルマ好きに育ってしまいました。以前乗っていたアクアも息子が選んでくれたのですが、下取り額が高いうちに……と、車検を期に手離すことになりました。息子曰く、パワーがあって、小回りが利く一押しのクルマ、ということで乗り始めることになりました」



 


年式は2008年、グレードは1.4 16Vでガラスルーフが装備されている。
クルマ好きの旦那さんと同じように、息子さんもクルマ選びに夢中なようだ。
実際に乗り出したチンクエチェントはどうだったのだろう?


「正直、アクアに比べたらものすごく運転しにくいクルマだと思いました。まず、クリープで進まないので上り坂では結構難儀しました。それと、買ってすぐに高速道路で停まってしまいレッカーされていったあと3か月帰ってこなかったんですよね(笑)。とんでもないクルマを買ってきたな……という印象と、代車で来たフォルクスワーゲン・パサートがイケメンすぎて一目ぼれしそうになりました」



代車のパサートにうっかり、心奪われそうになるも修理から帰ってきたチンクエチェントは別のクルマのように調子が良かったそう。
それからというもの、職場へ、ドライブへと大活躍だという。


「私にとってクルマは便利な道具なので、元気よく走ってくれればいうことはありません。チンクエチェントが来たばかりのころは運転にも慣れていなかったのですが、徐々にミッションのクセなどにも慣れてきました。自然と身についたアクセルワークはおそらく家族のだれよりも上手い自信がありますね。それに、ヒーターやエアコンの操作にもコツがあるのですが、うまく付き合っています」


最初はガソリンのキャップすらも開けられずにいたというマナさん。
これまで乗り継いできた日本車では経験したこともないようなことに見舞わながらも、今ではガラスルーフから入る四季折々の光を感じ、出勤するのが心地よい時間だと感じるそうだ。



「昔、オープンカーに憧れていた時期がありました。子供がいるので現実的ではないと思っていたのですが、このクルマはルーフがガラスになっているので頭上が解放感があって良いですね。オープンカーとまではいきませんが大満足です。また、職場の若い方でプジョーの207に乗っている方がいるのですが”マナさん、シブいクルマに乗り換えましたね~”と、いわれ気恥ずかしかったです。スーパーマーケットの駐車場で小学生くらいの男児に車名を聞かれたり、若い女子にも人気なのでだんだん自分でもまんざらでなくなってきてしまっています」


今では、かつて長く連れ添ったファミリアやファンカーゴよりもお気に入りの存在となったというマナさん。最後に今後のチンクエチェントとの付き合い方について伺ってみた。



「実は、このクルマってイタリア車なんですよね。そんなこと、取材でいったら怒られちゃうかもしれませんがそんな風に思うくらい自然に我が家にやってきたクルマなんです。でもチンクエチェントと一緒にいると、そのクセの強さとつきあうことも楽しい工夫に変わってきている気がします。息子や旦那には”また私に何か怪しい車を与えよう……”という企みをひしひしと感じていますが、今のところはチンクエチェントに満たされていますね!」


一見、クルマに興味がないのかと思いきやマナさんはそれぞれの付き合い方、それぞれのペースでカーライフを歩んでいる。
ふと思えば、あの日トリノの通りで見たつっかけのお買い物カーの感覚に近く感じる。



クルマはあくまでツール。そう感じつつも、一緒に暮らせば愛着が湧いてくる。
そんなクルマがこんな可愛い顔をしていたら、やっぱり憎めないもの。これからもマナさんと家族のなかで愛される、チンクエチェントにエールを送りたい。


[ライター・撮影/TUNA]

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