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ドイツ現地レポ

更新2023.04.09

EU「2035年から内燃エンジンの新車販売を廃止」は、ドイツ人の67%が反対だった

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高岡 ケン

2023年3月25日、EU諸国は最終的に2035年からディーゼルおよびガソリンエンジンを搭載した新車を段階的に廃止することを決定した。


実際、EU加盟国と欧州議会は昨年の10月末にすでにこのプロジェクトに基本合意していた。


しかしフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなどの大手自動車メーカーを抱えるドイツが追加の要求を行ったため、最終決定を遅らせることとなった。



その内容とは「例外として環境に優しいとされる合成燃料(e-fuel)を燃料とする自動車は、2035年以降も販売を継続可能にする」こと。


これについてEU加盟国とドイツ政府は、双方が合意に至ったことを明らかにした。


■合成燃料(e-fuel)とは?


e-fuelは既存車をそのまま走らせることができるだけでなく、脱炭素化(ゼロエミッション)をも可能にする代替燃料ということで、注目されている。


e-fuelとは二酸化炭素と水の電気分解から得られた水素を用いた合成燃料で、いわば化学反応で生み出される人工的な液体燃料である。


炭素を原料としている点はガソリンと同じであるが、地中の化石燃料ではないという点においては異なる。


燃焼時に排出される二酸化炭素に関しても、通常のガソリンを使った場合と同じである。


しかしガソリンとの違いは、e-fuelは製造時に二酸化炭素を資源として利用するため「燃焼時の二酸化炭素排出量 − 製造時の二酸化炭素吸収量=ゼロ」となる。


そのため、カーボンニュートラルな脱炭素燃料といわれている、というわけだ。


近年ではトヨタやポルシェ、アウディなどの自動車メーカーが世界に先駆けてe-fuelの研究、開発を進めている。


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■ガソリン自動車の未来



何年にも渡ってヨーロッパ内で議論されてきた今回のプロジェクトだが、ついに本格的なEVシフト化へのカウントダウンが始まった。


しかし、すべてのガソリン自動車が廃止されるわけではない。


例えば燃焼エンジンを搭載した3.5トン以上のトラックやバスなどの大型乗用車、さらに建設車両や消防車両、救急車などは例外として2035年以降も販売が可能となっている。


またフェラーリやランボルギーニといった年間生産台数が10,000台未満の企業も例外とされている。


当然ながらガソリンエンジンの中古車に関しても今まで通り公道を走り続け、中古車市場で販売し続けることができる。


ただし、これらは段階的に縮小されていくとされ、内燃エンジンを搭載したトラックやバスは2040年までに90%の削減を目標に掲げている。


またとある区域では、一定の排出ガス規制を超えるクルマは走行できないところも出てくるそうだ。


■ヨーロッパの現状



・現在、EU全体では約2億5,000万台ほどの自動車が使用されている
・平均車齢は11年
・EUでは全商品の76.7%が陸路で輸送されている
・年間で1000人あたり22台の新車が登録されている
・前年度はEU内で990万台のガソリン車が販売された
・年間約500万台のガソリン車が世界に輸出されている
・世界中で生産されているすべての自動車の25%がEUのメーカーである
・その内、ガソリン自動車の割合が47.5%
・代替燃料(EV, PHEV, ハイブリッド)の割合が24.5%
・EU内では1460万人が自動車業界で働いている
・これはEU内の全雇用の6.7%


これらの数字が意味することとは一体なんだろうか。


つまり、ヨーロッパ内にあるすべての自動車をEVへと移行するためにはまだまだ多くの年月が必要だということだ。


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■ドイツでは批判の声が大多数?



今回「2035年から内燃エンジンの新車販売を廃止」の決定を受けて、圧倒的多数のドイツ人が反対の意向を示した。


ドイツ通信社の調べによると、今回のプロジェクトに67%、約3分の2のドイツ人が反対と答えた。


その理由として、上記で述べた通り現状のヨーロッパ内ではまだまだ多くの人がガソリン車を使用していること。


さらに電気自動車へ移行するにあたって、充電ステーションなどのインフラを整えるためには莫大な資金が必要となること。


またドイツ国内にある4,700万台の自動車をすべて電気で動かそうとすると、電力消費量を今までより27%も増加する必要があること。


その為、これらは何らかの形によって国民の負担になる可能性も考えられる。


今回のプロジェクトに関しては、当初ドイツを始めポーランド、イタリア、チェコ、オーストリアなども強く反対していた。


ではなぜこれだけ多くの国々や人々が反対の意を示しているにも関わらず、ガソリン車廃止が合意に至ったのか。


それはもはや我々の知らないところで決まっていたのかもしれない。


内燃エンジンの廃止、EVシフト化へのカウントダウンはもう何年も前から始まっていたのでないだろうか。


 [撮影・ライター/高岡ケン]

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