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更新2023.11.22

クルマを通じた異文化交流を見た!コンコルソデレガンツァ2019サポート参戦記

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中込 健太郎

名だたる名車、国宝である京都の二条城の場内に集めて開かれる「コンコルソデレガンツァ」が、2019年春に開催されました。

最近では、クラシックカーラリーイベントは増えてきたものの、こうしたコンクールデレガンスを中心にしたイベントはどちらかと言えば日本では稀でしょう。

縁あって、このイベント後、エントラントたちが日本の風景の中を美しい貴重なクルマたちで旅をする伴走スタッフとして一緒にお供させていただきました。春を過ぎて、夏ももうそこまで来ているこの頃になっても、「しかし素敵なイベントだったな」と思い返すことの多かったこの体験。イベントレポートというより、思い出の記録、として、所感をまとめておきたいと思います。

クルマを通じた異文化交流を見た!コンコルソデレガンツァ2019サポート参戦記

「文化」ではなく「国民がお腹を空かせないために作ってきた」のが日本の自動車産業だった



日本は世界でも屈指の自動車大国になりました。品質的にも世界中のユーザーのニーズに応えうるものとなり、自動車メーカーの数でも、こんな狭い国土の中にこれだけ集中しているというのは、成長目覚ましい中国の例と比べても特筆に値することではないでしょうか。

しかしながら、日本における自動車とは、先の戦争の後、国をあげて自分たちの日々の糧を得るための手段でした。貴族が馬車にとって変えて、美や贅を競う。そうした文化的背景は極めて希薄なまま、ここまで来たと言って良いのではないでしょうか。

「日本は自動車大国にはなったが文化的な面では遅れている」としばしば評されます。しかし筆者が思うに、遅れているのではなく、自動車は文化的なものを求める対象ではなかったため、育てる土壌がこの国の自動車産業には存在しない、というのが実態ではないか。そんな風に考えているのです。

しかしながら、いろいろな評価はあっても、日本が依然比較的豊かな国であることは事実です。半世紀を超える歴史を重ねて、海外の自動車も普通に輸入されるようになると、日本でも自動車の文化的な側面に注目されるようになってきます。

また、自動車には文化的なものを求めてこなかったにせよ、日本にも様々な「文化」があります。それは、他の自動車大国と言われる国々にもないような、日本固有のもの。また日本にも日本のやり方で「愛でる」ことで情趣に浸る、そういう楽しみ方が昔からあったものでした。

そういう意味で海外のコンクールデレガンスにはない「日本の風景の中でクルマを愛でる」という楽しみ方ができる、そんなイベントの一つが京都で開催される「コンコルソデレガンツァ」ではないでしょうか。京都の二条城に、こうした企画でもない限り到底実現することはないであろう、貴重な美しいクルマたちが集う。目の当たりにしたときには「ありえない風景が広がっている」ことに熱いものがこみあげてきたものです。

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日本だからこそできる、クルマを通じての文化がある



自動車ライターの傍らで、車両運搬ができる積載車を購入した経緯から、様々なご縁をいただいて、ライターだけしていたのではなかなかできない体験や出会いに恵まれている筆者であります。今年コンコルソ・デレガンツァで、二条城会場での展示の後、参加者が連れ立って、この国の風土の中を駆け抜けるツールの伴走をさせていただく機会に恵まれました。

取材ではないかたちで、一行に帯同したあのドライブのことを振り返ると、なかなか稀有な、そして価値あるツーリングであり、紛れもなく日本でしかなし得ない、独自の自動車文化の風景だったのです。

少しあのときのことを振り返っておきたいと思います。

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一般の展示が最終日を迎え、閉幕すると、会場の撤収などが少しずつはじまります。ちょうどそのころ、筆者は積載車を二条城の敷地に乗り入れました。搬出の準備をするためです。会場内は世界に一台、というようなクルマも少なくありません。しかし、トラックで二条城の敷地内に入るというのも、なかなかできるものではありません。気持ち的にそわそわしたものでした。

貴重なクルマたちと一緒に翌朝出発するために、二条城の敷地の中にトラックを収め、宿に帰って夜を明かしました。貴重なクルマたちと一緒に、山陽道を倉敷から四国に渡り、讃岐を巡って鳴門から神戸、京都へ戻る瀬戸内を巡る旅、果たしてどんな旅になるのでしょうか。いわば裏方なのに、妙にソワソワしたのが却って愉快に感じられたものでした。

クルマを愛でる心、客人をもてなす心



あくる朝、二条城に行くと、すでに始動の準備をしている参加者が大勢いました。今どきのクルマと違います。キーレスをポケットに入れておけば、ボタン一つでエンジン始動、とはいかないクルマも少なくありません。もっとも、こういう場に来るようなクルマです。整備は行き届いていて、一般に旧車に対して構えてしまうような事態というのは、ほとんど起こらないのでした。

三々五々、クルマが二条城の敷地を出て、この日の最初の目的地、岡山県の倉敷を目指します。比較的平穏に、滞りなく事は進みます。そうであると、トラックからの風景は格別の見晴らしが見える特等席。そこに名車の数々が入り込んで悔いるのですから、参加者に勝るとも劣らない満足感をかみしめることができるほどです。

クルマを通じた異文化交流を見た!コンコルソデレガンツァ2019サポート参戦記

そのまま高松のホテルに到着。晩御飯を食べて翌日の伝達事項などを聞いた後は速めに解散となりました。参加者たちのクルマはホテルの地下駐車場へ。私たち伴走組の積載車がホテルの車寄せ前に置かれる形になりました。

二日目・三日目は、せっかく讃岐へ来たのだから、とっておきのアクティビティが用意されていました。まず金刀比羅へ移動です。途中で讃岐のカントリーロードを走ったり、うどんを食べたりしました。金刀比羅宮ではお神楽の奉納に立ち会います。四国と言えば八十八か所巡りが有名ですが、それをすべて回るわけにもいきません。そこで、すべて回ったのと同じ功徳を積むことができるという善通寺のお砂踏み道場へも行きました。さらに、丸亀城のバックに記念撮影ができる場所も訪れました。

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▲丸亀城の前で記念撮影

コンコルソデレガンツァ自体が、既に何度も回を重ねたイベントで、もちろん、日本の由緒正しい場所、二条城に世界屈指の名車たちを並べ、それを愛でることができる。それ自体も確かに立派な自動車文化として価値ある機会であることは紛れもない事実です。けれども、今回、そのあとのツアーに裏方として参加して、自動車文化という域を超えた文化交流ではないか、と目から鱗が落ちる思いがしたのです。

二条城を出たら、走る場所は普通の国道だったりします。遠い異国の地からわざわざ日本を訪ねてくれた。そしてせっかく来たのだから、自らのコレクションの一台で実際に走ろうではないか、と実際にドライブしてくれたことも、ご本人にとっても価値ある体験かもしれませんが、日本にとっても特別なかたちで巡り、旅をしてくれたということを大切に想ってしかるべきことだと思ったのです。

もうすぐオリンピックもあって、どれだけの経済効果があるのか?そんなことばかりが話題に上るようになりました。けれども、もっとフラットに、日本に来てくれたら、来る前より、良い国だったね、と思って帰ってもらう。それこそが一番大事なことではないでしょうか。そのためには、もっとディープな部分に入り込んで、体験してもらう。これは異文化交流における必要条件ではないでしょうか。

そういう意味でこのドライブが、とても尊い機会だなと思ったというわけです。そして、とても感銘を受けたので、一言書きとどめておきたい。そう思った次第なのです。

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パスタの国のクルマたち、うどん県にようこそ!



そして自動車は走れば燃料がなくなります。そうなると、大挙をなしてJAのガソリンスタンドにヴィンテージカーやスーパーカーが給油で列をなすわけです。今年のテーマはザガートとランボルギーニ。思えばランボルギーニはもともとトラクターを製造していたメーカーです。パスタの国の農機具メーカー製のクルマが、極東の島国、うどん県の農業団体の運営するスタンドに列をなし給油する光景。これこそ日伊に文化交流ではないでしょうか。胸が熱くなりました。

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そしてそういう機会はちょっとした小休止にもなります。ごくごく普通のCCレモンを手に取って、「レモン○○個分」という表現が妙に気に入ったようで、みんなにそのことを紹介しまくる参加者が居たりするわけです。「おい、この小さな中にレモンが○○個は要っているんだって!」と。こんなのまったくクルマとは関係ないし、缶に入ったそんな飲み物、普段はあまり飲まないのかもしれません。でも、そんな驚き、少なくとも、普段のその人の常識で考えると極めて特異な表現に出会ったわけです。これも文化交流という観点で極めて貴重なことだと思いました。

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●もっと走りたい!というゲストの声にも応える姿勢


しかし、そんないろいろなイベントを用意し、なかなか参加できない体験ができたにせよ、参加者にとっては自分の愛車を遠い日本に持ち込んでいるわけです。イベントの代表の木村さんに「もっと走りたいよ」と要求が出ます。これはある意味で当然の希望なのです。それを、スケジュールがあるから、と一蹴するのではなく、なんとかできる方法がないか、と考えてあげるのです。だったら瀬戸中央自動車道で与島まで行って戻ってこよう!というアイデアを絞り出すわけです。大きなつり橋の渡った先にあるパーキングまで、西日の時間にドライブして、記念撮影をする。参加者は来てよかったという表情になるわけです。

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確かに、陰で尽力され、ご苦労されているスタッフの方もいるでしょう。けれども、それを押してでも、もてなさねばならないし、今回であれば瀬戸内、讃岐の一番おいしいところを知って帰ってもらおう。「せっかくクルマを介して日本で集まったのだから」そういうスタンスを強く感じることができました。実はクルマのイベントの一つという以上に、異文化交流、日本を海外に紹介するという観点でもこうしたイベントは価値ある働きをしているのだと改めて実感したのです。

どんなことがきっかけでもいいのだと思うのです。でも、クルマが好きで、クルマを愛していたからこそ、縁あって春に日本を訪れたみなさん。その人たちにこんな場所があるんだよと紹介しつつ、せっかく来たからこんなことをしてみたい、という要望にも応える。大なり小なり、こういう姿勢で海外からのお客様をお迎えする。大事なことだなあと思った次第です。

最近のクルマはテスターがないと診断ができない、と思い込んでいました。けれども、宇都宮のスペシャルショップ「スクーデリア・ブレシア」の森さんは最低限の工具だけで直したのです。すべての症状でそうできるわけではないでしょうが、素人にはそういう思い込みがあります。

直ったクルマは、実際にセッティングにも関わられた、ランボルギーニの伝説のテストドライバーで、今回のドライブに同行していたヴァレンティーノ・バルボーニさん自ら試運転を行いお墨付きも出ました。そういうなかなか見られない職人の仕事なども目の当たりにすることができましたし、すべての時間がクルマ好きにはたまらないできごとの連続なのです。もちろんそれは個人的に楽しいことでした。

けれども、コンコルソデレガンツァの自動車に限らない、異文化交流。日本の魅力を伝えるエヴァンジェリストを作る、といったら少しオーバーかもしれませんが、それでも、そのくらいの価値のあることが行われていたのだなあ。振り返るとそんな風に思えてきたので、ここにこうしてまとめようと思ったのでした。

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▲ブレシアの森さんが調整したガヤルドをテストドライブするヴァレンティノ・バルボーニさん

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大切なのは、クルマを通じての一人でも多く友達が日本のファンになってもらうこと



自動車文化を盛り上げよう!という呼びかけは違和感を覚えます。こんな事声高に言わねばならないうちは、まだスタートラインにも立てていないような気がしてならないからです。けれども、春に同行させていただいた、コンコルソデレガンツァ、そしてそのあとのツール。こういうことの一瞬一瞬のできごとの積み重ねこそ、そうした文化形成の大切な一歩なのではないか。そんな風に思った次第です。

来年以降もさらなる盛会を祈念し、機会があれば、取材ではなくお手伝いさせていただきたいものだ。そんな風に感じた次第です。クルマ地方を走らせることにこれほど意義があるとは。自動車ライターとしても、とても有意義な勉強をさせていただけたと思います。

クルマを通じた異文化交流を見た!コンコルソデレガンツァ2019サポート参戦記
▲ご自分がツアーを共にしたクルマのドアの開閉が今一つスムーズではなかったようで、自らドアに油をさすヴァレンティーノ・ヴァルボーニさん

クルマのイベントを通して、真の文化とは何か。盛り上げるべきは日本であって、自動車文化ではないのではないか。みんなのためのモビリティ。ヴィンテージカーであっても新車であっても、クルマだからこその価値は大切にしつつも、もっと大局的に日本を、そして文化について、これからも考えていきたいと思います。

[ライター・画像/中込健太郎]

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