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更新2017.05.26

原油高騰時代の救世主「クリーンディーゼル」は本当にクリーンなのか?

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海老原 昭

欧州車を中心に、日本でも徐々に人気を集めるようになってきた「クリーンディーゼル車」。かつてのような黒い煤煙も吐かず、低燃費で環境負荷も低いとあればいいとこ尽くめのようだが、果たしてこのまま日本でもディーゼルは定着していくのだろうか?


▲BMWの4気筒ディーゼルエンジン

クリーンディーゼルはどこが「クリーン」?



ディーゼル車というと、どうしても黒い煤煙を上げて走るトラックの印象が強い。ガソリン車と比べると、ディーゼル車の排気ガスには二酸化炭素(CO2)は少ないのだが、窒素化合物(NOx)や粒子状物質(PM)が多く含まれる。かつて石原都政の折に目の敵にされた黒い煤煙の原因は主にこのPMであり、、追い出されるようにして市場から姿を消した一因でもあるのだが、これを回収する仕組みを備え、ガソリン車並みのきれいな排気ガスにしたものが「クリーンディーゼル」だ。

もともとディーゼル人気の高かった欧州ではディーゼル車の比率が高く、エンジン技術でも一歩先んじていた面があるが、欧州と日本の環境基準の違いから、欧州のディーゼル車をそのまま日本に輸入して走らせることはできず、環境基準に合わせるために追加の改修(後処理装置)が必要だった。だが、欧州の環境基準も日本並みに厳しくなったことから、大掛かりな改修も必要なくなり、今では欧州からの輸入車のうち、かなりの割合がディーゼル車になっている。たとえばBMW 5シリーズでは、クリーンディーゼル搭載車の「523d」が販売の4割を占めるという。


▲BMW 5シリーズではディーゼル車の割合が高い。本体価格が高いだけに、ランニングコストを下げたいという思惑もあるのだろうか?

ディーゼルエンジンには低価格な軽油を燃料にできることや、低回転から高トルクを得られること、高トルクを生かした加速性能など、ガソリンエンジンに対する魅力も多い。環境負荷さえ小さければ、ディーゼル車を検討するユーザーが増えるのも道理というものだろう。

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実はそんなにクリーンじゃなかった?



欧州を中心に高い人気を集めるようになったクリーンディーゼルだが、実は最近になって風向きが変わりつつある。というのも、実はクリーンディーゼルは言うほど「クリーン」ではないのでは?という指摘が増えたからだ。

欧州では、フランスのヴァルス首相が、自国のディーゼル燃料優遇政策を「誤りだった」と発言。イギリスでも「影の内閣」(シャドウキャビネット)の環境大臣を務めるガーディナー議員が、自動車税をCO2の排出量で決めるという政策を「間違っている」と発言し、ディーゼル車が排出するNOxやPMはガソリンの数倍以上になり、国民の健康に悪影響を与えていると批判した。

さらに、ICCT(国際クリーン交通委員会)が、施行されたばかりの欧州環境基準「EURO6」(本格施行は今年9月から)を満たす欧州車12台と、米連邦基準「Tier2 Bin5」を満たす米国車3台を対象にし、実走で排気ガスを直接監視する試験では、COやCH(炭化水素)が基準を下回る一方で、NOxの排出はEURO6の7倍以上高い数値を示したという興味深い結果が出ている。シャシー台の上の実験と、リアルな環境での走行では、勝手が異なるわけだ。


▲ICCTが発表した資料より。CO2排出量でも型式認証以下の車種はなく、NOx排出でEURO6未満だったのは1車種しか存在しなかった(ICCT公式資料サイトより)

EUでは実際の走行状態を想定した新規制「リアル・ドライビング・エミッション」の導入を検討しており、これ次第では、現行のクリーンディーゼル車でもさらに一段と高いNOx対策が必要になる。改修費用は当然、車両価格にも跳ね返ってくるため、今後はディーゼル車の価格が上がるのでは?という観測もある。

日本ではこの先どうなる?



日本では東京都の規制後、2008年に日産がエクストレイルでクリーンディーゼル車を導入した程度で、本格的なディーゼル車の導入はなかったが、2012年からマツダが「SKYACTIV-D」を投入し、クリーンディーゼル車が市民権を得た。これからが本格的な普及期に入るといった段階だ。


▲ディーゼルの常識に反した低圧縮率でNOxの低減を実現したマツダの「SKYACTIV−D」

もともと、東京都の規制も大型車が対象で、ディーゼル乗用車は対象となっていなかったのだが、結果的にディーゼルという技術そのものが問題視されてしまったという経緯がある。前述したように欧州車を中心に輸入車でのディーゼル人気も高まっており、国産メーカーもディーゼル技術を高めつつある今、政治的な側面からも、こうした流れ自体はそう簡単には変わらないと思われる。

欧州で指摘されているNOxの問題は気にかかるところだが、日本はガソリン車でも低燃費車が多い上に、ハイブリッド車や電気自動車といった選択肢もあるため、クリーンディーゼルによる環境負荷が問題になることはないだろう。日本は京都議定書のCO2削減目標を達成するために他国から排出枠を購入しているくらいだ。自動車1台1台の排出量は微々たるものかもしれないが、クリーンディーゼル車に乗ることで、むしろCO2の排出目標に貢献している、とも言える。

クリーンディーゼル車の特徴が活かせるのは、なんといっても燃費のよさを生かせ、NOxやPMも出にくい長距離走行だ。クリーンディーゼル車に乗っている人は、休日はなるべく長距離のドライブなどに出かけ、その良さを最大限に活用してほしい。

[ライター/海老原昭]

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