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テクノロジー

更新2017.05.26

果たして「ETC 2.0」で日本の道路事情は変わるのか?

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海老原 昭

日本で有料道路の料金をノンストップで支払える「ETC」が全国展開してもうすぐ14年が経過する。高速道路における利用率は約90%、自動車の保有台数に対するセットアップ率(普及率)は約50%と、すっかり市民権を得ているが、さらに高度な機能をもたせた「ETC 2.0」に対応する機器がすでに市場に出回っている。ETCが新しくなると、道路事情はどう変わるのだろうか?

果たして「ETC 2.0」で日本の道路事情は変わるのか?
▲ETC 2.0は交通情報の提供などでユーザーに快適な環境を提供してくれるというのだが……(国土交通省サイトより)

ETC 2.0の前にそもそもETCとは


ETCは、車載機と路上および料金所に設置されているアンテナの間で無線通信し、料金所で停止することなく通過できる料金自動徴収課金システムだ。国土交通省の資料によると、ETC導入前の平成12、高速道路の渋滞の3割以上が料金所部で発生していたとされていたが、平成20年には0.8%にまで低下し、渋滞そのものも約3分の2に減っている。渋滞の減少により、CO2の排出量も年間22万t削減できるなど、その効果は大きい。

また、有人料金所では処理時間などの関係で難しかった各種割引制度や、首都高、阪神高速での距離別料金制の導入、スマートICの設置により高速道路の有効活用や地域活性化が図れるなど、ETCの導入により、高速道路の利用方法が大きく変わったのは事実だ。

なお、ETCでは「DSRC」(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)と呼ばれる、5.8GHzの周波数の電波を使って、路側のアンテナと車載機が通信している。

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ETC 2.0では何が変わるのか?


現在徐々に導入中のETC 2.0は、現在のETCをさらに強化・進化させたサービスだ。「導入中」と書いたが、実はすでにETC 2.0対応の車載機は購入できるし、ETC 2.0という呼称ができる前は「DSRC車載機」とも呼ばれていた。ETCの情報をやり取りするDSRC通信を使い、より詳細な情報をやり取りできるようにしたものだ。



2011年にはDSRC車載機と通信する「ITSスポット」が全国の高速道路に約1600箇所設置され、交通情報の提供を開始している。ITSスポットから得られる交通情報はカーナビのVICSよりも広範囲なエリアを対象にしており、通常のナビよりもさらにスムーズな走行ルートを割り出す役に立つわけだ。今後は経路情報を利用した割引や運行管理支援、さらには駐車料金やガソリンスタンドでの自動決済など、ワイヤレスでの小規模決済にも利用できるようになる。

中でも大きいのが、渋滞時の迂回路対策だ。高速道路では、渋滞ができた部分に車が次々とやってくることで、渋滞が雪だるま式に膨れ上がってしまう。そうなる前に渋滞部分を迂回してもらえれば、交通全体の円滑化につながるというわけだ。そこで、ETC 2.0では渋滞が発生したときに迂回路を提示し、迂回した車両にはそのぶん高速料金を割り引くなどの特例措置を適用できるようになる。特に首都圏では首都高速中央環状線、外環道、圏央道が相次いで部分開通しており、都心から放射状に伸びる各高速道路をつなげばルートの選択肢が大幅に増えている。これをもっと生かしていこうというわけだ。特に、運送業界などに積極的に利用を働きかけているようだ。

これまでVICSの電波ビーコンが配置されていたところは、新規開通区間からITSスポットに置き換えられており、ETC 2.0への準備は着々と進んでいる。

他サービスとの協力が、ETC 2.0発展の最低条件


一見便利に見えるETC 2.0だが、実は、もともとETC導入前後から「将来はこんなこともできるようになる」と提示されていた内容がようやく実現した、というのが正しい。特に少額決済などは初期から言われていたことで、技術的にそれほど難しいわけではないはずなのに、まだ実現していないのが意外なほどだ。日進月歩の進化を果たすIT業界から見ると、その歩みはあまりに遅々としている。

また渋滞情報にしても、ITSスポットが高速道路上にしか配置されておらず、一般道には置かれていない。高速道路で迂回すれば割引すると言われても限られたエリアでしか利用できないわけで、これでは絵に描いた餅だ。



ETCがもたもたしている間にも、周囲は進化を続けている。たとえばメーカー純正ナビやスマートフォンの地図アプリでは、携帯電話網を使って位置情報から独自の渋滞情報を作成したり、よりはやく到着する迂回路を提示できている。また非接触決済に関しては、そもそも利用するところができてくれないと始まらない。

コスト面でも課題が残る。ETC 2.0に対応したETCユニットはすでに発売済みだが、普通のETCが1万円前後で取り付け可能なのに対し、ETC 2.0対応のユニットは3〜4万円もする。単独でも利用は可能だが、ナビと組み合わせた時にこそ効果を発揮するのに、対応するナビも高級機ばかりだ。すでにカーナビがスマートフォンのナビアプリに置き換わりつつあるという時期に、これでは時代錯誤だろう。

迂回路を選んだことによる料金の割引など、ETC 2.0ならではのメリットがあるのは事実なのだが、どうにも国交省の思惑が、ユーザー目線からも、時代の流れからも、だいぶ離れてしまっているように感じる。今後もETC 2.0の必要性をアピールしていきたければ、たとえば渋滞情報だけにしても、既存サービスと協力してデータを提供するなど、これまでよりも柔軟な対応が必要になってくるだろう。

[ライター/海老原昭]

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