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更新2022.01.31

本のあいだから発見した「カーグラフィックTVの選曲リスト」を眺めて思うこと

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松村 透

年末の大掃除をしていたら、その昔、カーグラフィックTVを製作している会社の方がわざわざ送ってくれた「使用曲リスト」が本のあいだから発見。その瞬間、さまざまな記憶がフラッシュバックしたことはいうまでもありません。


平成10年2月16日にオンエアした「カーグラフィックTV#637 ポルシェ911特集」とあります。インターネットで検索してみたのですが、どのポルシェ911を特集したのかまでは見当がつかず・・・。平成10年ということは西暦1998年。タイプ993から996にスイッチするあたりでしょうか。



他にも何枚かこのリストを入手しましたが、見つかったのはこの1枚だけ。このA4用紙1枚の紙(実際にはここに記載されている情報)を入手するために、当時としてはあらゆる手を尽くしたことが一瞬にして思い出されたのです。


■気になる曲をカセットテープに録音して大型CDショップへ



どうしてもオンエアされていた曲を知りたい。でも、その方法が分からない。当時10代だった筆者が悩んで導きだした答えは「曲を録音してCDショップの人に探してもらおう」という、ドストレートな力業でした。ドン引きされようと、断られようと、そこまで知りたいのなら恥も外聞もないと。最終的にCDを買えば出禁になることはないだろうと悟ったわけですね(迷惑ですが)。


当時は年に1,2回、運転中に聴いていたラジオ番組で探している曲が「偶然オンエア」され、その時間を記憶。公衆電話を見つけて104。1990年代前半に貧乏学生が携帯電話をレンタル(買取りは数年先の話し)できるわけもなく、ラジオ局に電話してオンエア曲を教えてもらう。その場で書いたメモを頼りにCDショップへ・・・。そんなことを繰り返していたのです。


それはさておき、まずはビデオテープ録画してあったカーグラフィックTVの知りたい曲の部分を再生し、家にあったラジカセで録音。その音源を収めたカセットテープをウォークマンにセットし、都内の大型CDショップへ。優しそうな店員さんに声を掛け「この曲を探してるんですがご存じですか?」なんてことをやっていました。CDショップの店員さんならきっと音楽に詳しいはずだ、と踏んだわけです。



仕事中だし、めんどくさい客が来たと嫌がれるかと思いきや、案外皆さんノリノリ。Aさんが分からないとBさんを呼んでくれて、それでもダメならCさんが登場・・・といった具合に、よってたかって皆さんが予想をはるかに超えるほど真剣に、オタクな学生のリクエストに応えてくれたのは嬉しかったですね。これはどのCDショップでも同じでした。


こうして、CDショップ店員さんたちの英知を結集した結果導き出された曲が収録されている・・・であろう、「たぶんこれだと思うよ」と渡されたCDを買わないわけにはいきません。結果、一発で当たったこともあれば、まったく見当違いケースということもしばしば。しかし、その「外れたCD」を聴いてみると案外好みの曲だったことも多かったので、それはそれで良い音楽との出会いとして結果オーライでした。


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■ある日、思い切ってカーグラフィック編集部に電話してみた



カーグラフィックTVのオンエアリストが一般の視聴者でも手に入ると知ったのは1993年頃だったと記憶しています。「カーグラフィックTVでオンエアされている曲名が知りたい。しかしどうすればいいか分からない」。いまならインターネットを使えばそれなりの確率で解決できることですが、当時はとにかく難題でした。


何しろ、現代における「インターネットで検索する」という概念が成立しない・・・というか選択肢になかった時代です。周囲の誰に聞いても分からないし、知っている人もいませんでした。


ある日、どうしてもオンエア中に使用された曲が知りたくなり・・・。といってもどこに問い合わせばいいのか分からないので、ひとまず「ダメもとで」カーグラフィック誌に記載されていた編集部に電話をしました。見当違いでも怒られることはないだろうと信じて。


そんな、余計な心配をよそに対応してくれた女性スタッフさんが「この件は制作会社に問い合わせてください」とすぐに電話番号を教えてくれました。いま思えば、割りと頻繁にこの種の問い合わせが多かったのかもしれません。


・・・で、さっそく電話してみました。いまでもカーグラフィックTVを製作している「WIN'S MOMENT(ウィンズモーメント)」という制作会社です。ド緊張しながら電話をすると、対応してくれた女性の方曰く「カーグラTVの回数と特集したクルマの名前を紙に書いて郵送してください」と、拍子抜けするほどあっさり解決。


いまならインターネット経由でお問い合わせフォームを使えばいいはずですが、このときは1990年代前半。やりとりは手紙でした(自宅にFAXがなかったので他に方法がなかったのです)。教えてもらった住所に、希望のCGTVの回数と特集したクルマの名前を書いて手紙を送りました。


■それから1ヶ月後、夢にまで見た選曲リストが届く



念願の選曲リストが手に入ることはほぼ確実になったものの、一向に送られてくる気配がないので気を揉みました。・・・よくよく考えれば分かることですが、筆者以外にも選曲リストを注文する人がいたはずですし、視聴者対応の方がいなければ、スタッフさんが本来の業務のあいだに行っていたかもしれません。



Excelの表組みでもない手書きのリスト!曲名とアーティスト名、レコード会社とレコード(CD)番号、ノドから手が出るほど欲しかった情報がこの1枚のA4用紙に集約されているのですよ!


「そう、これだよ・・・」。番組内でオンエアされたたった1曲を探し当てるために、そしてこのたった1枚の紙を手に入れるために・・・。運と時間と根気と・・・いまでは考えられないほどの労力を費やしていました。現代なら「FAQにあるよくあるお問い合わせ」で済んでしまうハナシでしょう。


これだけの情報がそろっていれば、都内のCDショップをハシゴすれば、探している曲を収めたCDをほぼ確実に入手することができました。いまはなき六本木WAVEや池袋WAVE、新宿のバージンメガストアおよびHMV、渋谷のHMVなどなど・・・。このことがきっかけで足を運ぶようになったCDショップ。アルバイトで稼いだお金のかなりの割合がCDに化けました。


その結果、いつの間にか洋楽とインストゥルメンタルばかり聴くようになっていたのです。このとき、自分の音楽の幅が広がったことを実感しました(事実、カーグラフィックTVと空耳アワーはずいぶん影響を受けました。あとは「赤坂泰彦のミリオンナイツ」。分からない方、すみません)。


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■翻って現代・・・本当に便利になったと改めて実感



"Shazam"や"SoundHound"などの曲検索アプリをスマートフォンにインストールして、アプリを立ち上げ、スピーカーなどの近くにかざせば自動的に探している曲を検索してくれます。いまから10数年前、スマートフォンを買おうと決めたのもこのアプリを使ってみたいという気持ちが強かったから、でした。


瞬時に探している曲を検索してくれて、しかもその場でダウンロードして購入できる・・・。心底感激したことを覚えています。このアプリのおかげで、皆目見当がつかなかった曲名が判明し、ダウンロードした音源は数知れません。


当時のiTunesで音源が見つからず、ようやく探し当てたのはイタリアのAmazon。google翻訳を使ってイタリア語で販売元にコンタクトしてみたところ、偶然相手の方が日本人で、日本から注文があるなんて珍しいと驚いていました(事情をお伝えしたら納得してくれているようでした)。



一昔前では考えられないほど便利になり、手間いらずになった反面、苦労してようやく「ついに手に入れたゾ!」という満足感や達成感が希薄になってしまったことも事実。ワガママというか、ないものねだりではあるのですが・・・。


■いろいろ便利になったけれど、放送開始から37年目のカーグラフィックTVはいまでも続いている



1984年のオンエア開始から37年目。紆余曲折があったにせよ、カーグラフィックTVは現在でもBS朝日系列で観ることができます。録画はPC用の外付けハードディスク。ここぞ!という特集のときはS-VHSテープで録画(しかも標準モード)する必要もありません。


気になる曲は"Shazam"や"SoundHound"を使えばほぼ瞬時に判明。音源はいつでも入手できるので慌てる必要もありません。あれから30年近い年月が経ち、技術の進歩と現代の便利さと手軽さに改めて驚かされます。


ユーミンパパこと松任谷正隆氏は今年で70歳だそうです。熱心な視聴者の方であれば、キャスターの田辺憲一氏が体調不良により出演を見合わせていることを心配しているはず。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大により、キャスターが同乗する形式から、1人ずつ個別にクルマをインプレッションするようになりました。特集されるクルマもEVが増えてきました。



少し前まで「いつまでガソリン車に乗れるのだろうか」なんて考えもしなかったように、カーグラフィックTVもいつか終わりを迎えるときが来るのかなとふと思うことがあります。


いま、クルマ番組で支持を受けているのはバラエティ系が多いように思います。新たにカーグラフィックTVのような番組を作ろうにもなかなか難しいご時世なのかもしれません。


本のあいだから発見した「カーグラフィックTVの選曲リスト」を眺めて思うこと・・・。街中でフェラーリ328を見るといまだに「THE THEME OF WINNER」が脳内再生するように、多くのクルマ好きに影響を与えたでろうカーグラフィックTVが少しでも長く続いてくれることを願うばかりです。


[ライター・撮影/松村透・Adobe Stock]

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