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ドイツ現地レポ

更新2021.11.25

自宅で洗車すると罰金?日本とは根本的に異なる、ドイツの洗車事情とは

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守屋 健

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さて、しばらく忙しかったし、久しぶりにクルマをきれいにしてやるか。そう思ったあなたは、自宅の駐車場にある愛車の洗車を始めようとしました。すると、向かいの敷地の住民が、あなたに向かって声を張り上げます。「やめなさい! その場所で洗車すると、罰金を取られるよ!」



日本ではありえない話ですが、ドイツにおいてこれは「よくある話」です。自宅で自由に洗車できない、というのはどういうことなのでしょうか? 今回のドイツ現地レポは、日本と似ているようでまったく異なる、ドイツの洗車事情についてレポートします。


■ドイツでは基本的に自宅で洗車はできない



まずは、冒頭のシーンの解説からしていきましょう。


ドイツでは、クルマの洗車時に出る洗浄液と汚れが混ざった廃水は、環境汚染の原因になるという考えから、下水道や雨水用地下水道を通して周辺の水域(河川や湖)または地下水に流すことが法律によって禁止されています。


クルマを洗車する場所に求められるのは、洗車する際に出る「廃水をすべて回収するシステム」と、その廃水を「再びきれいな水に戻す浄水システム」のふたつです。これらの大がかりな機構を自宅に備えている人は、ドイツでもほとんどいないといってよいでしょう。


例外として、廃水が地下水や周辺の水域に流入せず、私有地にのみ浸透する場合のみ、自宅での洗車が許可されます。しかし、その場合でも利用できるのはきれいな水だけ。高圧洗浄機や化学洗浄剤の使用は禁止されていて、さらにエンジンルームの洗浄をすることはできません。



また、ドイツの首都ベルリンの場合、豊富な地下水源があるゆえに、単純に市の面積の約4分の3は「洗車禁止区域」に設定されています。ドイツでは日本のような「車庫証明」の仕組みは存在せず、自宅近くの道路に路上駐車することで「自宅の駐車場代わり」にすることも多いのですが、そうした道路上で洗車することも禁止されています。


これらをまとめると、ドイツでは基本的に、自宅、そして公共の道路上で洗車をすることはできません。洗車自体が違法なのではなく『汚れた廃水を処理せずに下水に流すことが違法行為に当たる』ためです。


ちなみに、罰金の額は州や自治体によってさまざまですが、もっとも安くて25ユーロ(約3,200円)、最悪の場合10万ユーロ(約1,300万円)もの罰金が科されます!


■ドイツでの洗車は、専用の洗車場で行うべし!



これだけ厳しい罰金が科せられている以上、自宅や近所の公道で洗車をすることはできません。ドイツの人々は一体どこで洗車しているのでしょうか。


その答えは、洗車場です。2013年のADAC(ドイツ自動車連盟)の調査によると、ドイツ全土で約1,850の洗車場と、約14,000のセルフ洗車場が存在しています。また、日本と同じく、これらの設備がガソリンスタンドに併設されている場合も多いのです。


洗車場の多くは自動で洗車するシステムのほか、ワックスを手がけするなどの各種サービスも提供していて、この点については日本とあまり変わりないといえるでしょう。料金に関してもピンキリで、もっとも安いもので10ユーロくらいから設定されています。


■クルマが汚れやすいから、ドイツでは洗車の頻度が上がらない?



ドイツでは、速度無制限区間のあるアウトバーンはもちろんのこと、都市間の一般道でも時速100㎞/hで走行できるので、平均的な走行速度が日本よりも高く、毎日乗っているとクルマはかなり汚れます。


加えて、気温が氷点下になる冬は、道路に大量の凍結防止剤がまかれるため、クルマの汚れはさらにひどいものになります。現在販売されているクルマの多くは、クルマの底面がきちんと錆止めコーティングされているため、凍結防止剤による錆の被害はほとんどありませんが、未コーティングの古いクラシックカーに乗っている場合は問題となる可能性があります。


また、ドイツで知られている豆知識として「マイナス10度以下の気温の際は洗車を避ける」というのがあります。洗車場で使われている水の温度は約10~30度なので、あまりにも大きい温度差は、塗装面やプラスチック、ゴムを痛めると考えられているからです。


これらの理由から、ドイツでは洗車の頻度がおのずと低くなるため、常にピカピカに維持されているクルマの割合は、日本よりもずっと少ないです。クルマを大事に思う気持ちに違いはないのですが、とにかく汚れやすく、金額面でも場所の面でも気軽に洗車できないため、洗車の頻度が上がらないのは仕方のないことかもしれませんね。


[ライター・カメラ/守屋健]