
コラム
更新2019.01.09
若者はクルマから離れてなんかいない!現代の若い人や子どもたちに「クルマ好き」でいてもらうために

糸井 賢一
本当に若者はクルマから離れているのだろうか?

▲子供向け作品では、クルマとロボットは王道の柱。しかし軸がぶれると、失敗することも…
2018年にDeNAトラベルが実施した「若者の○○離れ。「○○」には何が入る?」という、インターネットアンケート調査。結果を5位から挙げると、5位は「お酒」で6.6%。3位は「結婚」と「読書」が同率で7.9%。2位は「新聞」で13.2%。そして1位は「クルマ」で、その投票率は一際高い33.0%でした(有効回答1184人、回答者の年齢幅10~70代)。
「若者のクルマ離れ」というワードを耳にするようになって久しいですが、本当に若い人や子供たちの心は、クルマから離れているのでしょうか?
若者も子供たちも、クルマから離れていない!
2017年11月から12月にかけて、ソニー損保が新成人を対象にしたインターネット調査によると、56%の人がすでに自動車運転免許証を取得しており、3.8%の人が調査実施時に教習所に通っている最中、28.6%の人が取得する予定があるそうです。また同調査で16.7%の人がすでに自分のクルマを所有しており、7%の人が購入予定。46.8%の人が購入の予定はないものの、いずれは所有したいと考えていることがわかりました。
数字だけを見れば、新成人の半数以上は免許を取得し、クルマを買う意思があることを表しています。これまで長く不景気が続き、また現在も出口の見えないデフレに包まれた状況です。限られたお給料の割り振りでクルマへの優先順位は低くなりましたが、それでも余裕さえあればクルマを買ってくれる若い人は多いのだと思います。
視線をもう少し若い人や、子供たちに向けてみましょう。小さい子供たちに人気のミニカー、株式会社タカラトミーの「トミカ」。その生産台数は2015年までの累計で6億台を突破しています。また今年の夏に販売を開始した、音と振動を発する「トミカ4D」も、発売直後は品薄になるなど好調な売り上げを見せています。
ドライブ(レーシング)ゲームの代表格といえば「グランツーリスモ」シリーズ。2018年8月にシリーズ累計発売本数が8000万本を突破しました。シリーズ最新作の「グランツーリスモSPORT」はリリース当初こそ不調だったものの、使用できる車種の増強といったアップデートにより復調。2017年には累計販売本数が300万本を突破し、今なお順調に本数を延ばしています。
トミカの販売台数もグランツーリスモSPORTの販売本数も、全世界でのデータですから参考にしかなりませんが、それでもまだ免許を取得できない年齢の若い人や子供たちが持つ、クルマへの興味の高さを表した一例だと思います。他にもクルマをテーマにした映画やアニメ、コミック作品。クルマをテーマにこそしていないものの、劇中に登場するクルマが話題となった作品も、数多く存在します。
若い人や子供たちにむけたクルマの玩具や作品は、いつの時代にも存在し、人気を博しています。近年になって急速に若い人や子供たちがクルマへの興味を失ったということはなく「興味をもつ人」「興味をもたない人」の割合に大きな変化はないのではないでしょうか。

▲クルマをテーマとした作品の代表格「頭文字D」。時代にあわせた続編タイトルは、新たな読者を開拓できるか?
「若者のクルマ離れ」という言葉は、当事者(若い人)ではない人から発せられた言葉であり、複雑な心情や思惑が込められています。「若者のクルマ離れ」を口にする人たちの指す「若者」は、「クルマだけに熱中し、ポンポンとクルマを買い換える若者」を指しているのでしょう。たしかにそういった若い人は少なくなっていますね。
「若者のクルマ離れ」という言葉は、ごく限られた見方をすれば正しいかもしれませんが、およそ的外れというのが正直な感想です。とはいえクルマ以外の娯楽や嗜好品が、今以上にあふれるであろうこの先の時代。ただの煽り文句にすぎなかった「若者のクルマ離れ」が、現実となるおそれだって十分にあります。どんな趣味も広いすそ野があってこそ維持できるものですから、これからもクルマ趣味を楽しみたい身としては、ただ指をくわえて見ているわけにはいきません。
次回までに「若い人や子供たちのクルマへの興味を失わせないため、個人の力でなにができるか?」を考え、記したいと思います。
[ライター・画像/糸井賢一]