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ドイツ現地レポ

更新2021.07.14

標準色は1色のみ!あとはオプション?ドイツ本国で購入できるドイツ車はどれくらい「素」なのか

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守屋 健

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ドイツでレンタカーを借りると、ときどき「素」に近い装備のクルマに当たることがあります。マニュアルトランスミッションに、飾り気のないファブリックシート、シンプルなマニュアルエアコン…こうしたベーシックなグレードのクルマに乗ると、その「素性」がわかるので個人的には好きなのですが、あるときふと気付いたのです。「同じ車種でも、日本とドイツ本国のベースグレードには大きな差がある」と。


今回のドイツ現地レポは「ドイツ車を現地で買う場合、どれくらい『素』なのか?」と題して、フォルクスワーゲン・ゴルフを参考例として、ドイツ本国仕様のもっともベーシックなグレードを解説。日本仕様のベースグレードと比較し、ドイツでは「もともとどれくらい質素な装備で売られているのか」をレポートしていきたいと思います。


■装備充実、日本仕様のベースグレード




まずは、日本のフォルクスワーゲン(以下VW)公式サイトのコンフィギュレーターで「もっとも安価なゴルフ」を作ってみましょう。日本仕様の現行ゴルフにはeTSI R-Line、eTSI Style、eTSI Active、eTSI Active Basicの4グレードが用意されていて、このなかではeTSI Active Basicがベースグレードにあたります。


パワートレインの選択肢はなく、48Vのマイルドハイブリッドを搭載した1.0L3気筒ターボ(110PS/200Nm)と7速DSGの組み合わせのみ。ボディカラーは7色から選択でき、このうち2色のみ追加コスト33,000円が必要となります。


こうしてできた日本仕様最安値のゴルフは、税金・諸経費込みで314万7,750円。この価格でも全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールや同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」、純正インフォテイメントシステム「レディ2ディスカバー」、リアビューカメラ、7スピーカー、フルオートエアコン、16インチアルミホイールなど基本的な装備は一通り揃っているので、これで十分!と感じられる方も少なくないのではないでしょうか。


■ドイツ本国仕様の「素ゴルフ」のギアボックスはマニュアルだけ



さて、次はドイツ本国のVW公式サイトにて最安値のゴルフを作ってみましょう。


グレード選択ページに行くと、何のグレード名も付いていない「ゴルフ」というベースモデルがあります。クリックするとエンジンの選択肢が3種類(1Lガソリンが2種類、2Lディーゼルが1種類)出てきますが、ここではもっとも安価な1Lガソリンを選択。3気筒ターボであることは日本仕様と変わりませんが、マイルドハイブリッドシステムが12Vとなっているほか、最高出力・最大トルクはそれぞれ90PS・175Nmとさらに控えめな数値に。


ベースモデルのエンジン3種類についてはマニュアルギアボックスしか用意されず、もっとも下のグレードでは5速MTしか選べません。この点、DSGしか選択肢がない日本仕様とは大きな違いを感じるポイントではないでしょうか。


■追加コストなしで選べるのは1色のみ!



次は色を選んでみましょう。ベースモデルには10種類のカラーバリエーションがあり、日本仕様よりも選べる色そのものは多いのですが、ここにも大きな違いがあります。追加コストなしで選択できる色は、なんと「ウラノグレー」という濃いグレー1色のみ! ピュアホワイトが280ユーロ(約3万6,680円)、ディープブラックパールが660ユーロ(約8万6,460円)と、日本仕様では無料で選択できた色すら有料のオプションとなっているのです。


ちなみにドイツでは、このウラノグレーのゴルフ、本当にたくさん走っています。クルマは単なる移動手段、色なんて人と同じでも気にしない…そんな実用本位の考え方の方が多いのでしょうか。


ベースモデルで選べる追加コストなしのボディカラーが1色のみ、というのはVWだけでなく、メルセデス・ベンツやBMWなどドイツ国内の他メーカーも同様で、そのカラーはほとんどブラックかグレーです。「黒っぽいクルマばかり走っている」というドイツに対するステレオタイプは、このあたりが要因になっているのかもしれません。


■ストイックなまでに「何も付いていない」なかで、最後に残った装備は?




インテリアは問答無用でブラックのファブリックシートの一択のみ。ホイールにいたっては日本仕様の16インチアルミホールよりさらに下位の15インチスチールホイールが標準となっています。日本仕様と同じホイールを履かせるには、980ユーロ(約12万8,380円)の追加コストを支払わなければなりません。


クルーズコントロールやスピードリミッター(セットで220ユーロ、約2万8,820円のオプション)は装備されず、リアビューカメラはおろかパーキングアラーム(580ユーロ、約7万5,980円のオプション)すら付いていません。純正ナビが付いていないのでスマートフォンを接続しよう!と思い立っても、それすら225ユーロ(約2万9,475円)の有料オプションを支払わないと接続することができないのです。スピーカーの数も日本仕様の7つに対しドイツ仕様は5つと、地味に数が減らされています(7スピーカーも120ユーロ・1万5,720円の有料オプション)。このあたり、日本のいわゆる「営業車」を彷彿とさせる質素さ、といえば伝わりやすいでしょうか。


こうなると逆に何が付いているんだ、という話になりますが、フルオートエアコン、レーンチェンジアシスト、歩行者や自転車に対する検知機能を備えた自動緊急ブレーキ、眠気検知システムなどは標準装備となっています。このあたりが、ゴルフという国民車が絶対に譲れない「安全性と快適性」の最終防衛ライン、ということなのでしょう。


この、本当にまっさらの「素のゴルフ」の価格は、ドイツ国内の19パーセントの消費税込みで20,700ユーロ(約271万1,700円)。日本仕様の最安値とは約43万円の開きがありますが、上記までで見てきた通り、かなり質素な装備となっています。日本仕様の装備の充実度、ドイツ本国のひとつひとつのオプション装備の価格を考えると、日本仕様はかなり「お買い得」といえるのかもしれません。


■ドイツで今も「素のモデル」が売られる理由とは?



日本に正規輸入されているドイツ車では、ポルシェが他社と比べて比較的「素の状態」で売られていて、細かくオプション装備を追加していくと気付いたら高額になっていた…という話をよく聞くブランドでしたが、VWやBMW、メルセデス・ベンツなどのメーカーでもドイツ本国では似たような状況が生まれやすいといえるでしょう。


ドイツではカンパニーカー制度やリース事業などが一般的なことから、こうした「素のモデル」の需要が一定数あると考えられます。もちろんレンタカーや自家用として使用する場合もあるでしょう。「壊れにくく、修理費が安く、運転していて楽しい」という理由でMTを選択するユーザーが減らないのも、ドイツの特徴のひとつです。


日本仕様でも、ここまで本国仕様並みに質素である必要はないですが、せめてMTだけでも選べるようになったらいいなと思ってしまうのは、私たちユーザー側のわがままなのでしょうね。それではまた、次回の記事でお会いしましょう。


[ライター/守屋健]