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更新2020.08.21

ベンツの猛々しさを色濃く残す、BRABUS(ブラバス)という存在

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松村 透

雑誌などで、BRABUS(ブラバス)を初めて知ったときの印象を覚えていますか?

筆者はこのW140がBRABUS(以下、ブラバス)のイメージとして強烈にすり込まれました。AMGでもロリンザーでも、キャラットでもない。なんだか聞いたことないメーカー(チューナー)だけれど、すごい迫力のベンツだ!日本にもあるのかな?それから毎月のように、外車情報ウィズマン誌を読みあさった記憶があります。

BRABUS(ブラバス)小史


 



そもそも、ブラバスの名前の由来を知る人は少ないかもしれません。ブラバス社代表のボード・ブッシュマン氏と、起業する際に共同の名前を掲げることになる、弁護士のブラックマン氏。この両氏の名前から取った「BRA」と「BUS」が組み合わされることで1977年にBRABUS社が誕生しました。

また、ブッシュマン氏の右腕にあたる、ウルリッヒ・ゴウフレー氏の存在も見逃せません。今日のブラバス社の礎を築いたのは、メルセデス・ベンツAG社の職を辞してまで参画した氏の手腕によるところも大きいのです。

最近では、2015年のジュネーブ・モーターショーに出品された、メルセデスS65AMGベースのモンスターマシン「ブラバス・ロケット900」は大いに注目された1台です。最高出力900ps/5,500rpm、最大トルク1,500Nmという、とてつもない大パワーをどこで発揮するのか?なんて、ここでは野暮は話し。これだけの強大なパワーを手にした喜びを噛みしめることもまた人生。昨今のダウンサイジングエンジンとはまさに真逆の存在です。

そしてブラバスといえば、マイスターの精神を色濃く残すクルマ造りが信条です。その見た目の迫力や強大なパワー。他では真似のできない仕立ての内装など、どうしても見た目にスポットが当たりがちですが、日本語でいうなら「愚直さ」という言葉がもっとも似合うコンプリートモデルなのかもしれません。また、いちど魅せられた人はブラバスを乗り継ぐという、魔性の魅力も秘めているのです。
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控えめなCARLSSON(カールソン)、白が似合うLorinser(ロリンザー)、黒が似合うBRABUS(ブラバス)


日本でも人気の高いメルセデス・ベンツのチューナーはいくつか存在しますが、AMGを筆頭に、Lorinser(ロリンザー)やBRABUS(ブラバス)、CARLSSON(カールソン)などが挙げられます。

1989年に創業したCARLSSON(以下、カールソン)代表のロルフ・ハルトゲ氏が、BMWのチューナーとして名を馳せたハルトゲを成功に導いたその人であることはあまり知られていません。レーシングドライバーがチューナーを立ち上げたという逸話はいくつか存在しますが、ハルトゲだけでなく、カールソンにもその血が流れているのです。

ロルフ・ハルトゲ氏の専門分野はエンジンやサスペンションなどのメカニカルな部分であり、デザインは専門外。レースに参戦することで得たノウハウを市販車にフィードバックするあたりが、氏のクルマに対する姿勢や考え方がプロダクトに反映されているように思えてなりません。メルセデス・ベンツだけでなく、レクサス各モデル用のホイールも展開しています。

一方、Lorinser(以下、ロリンザー)は1970年代からドレスアップ用のパーツを手掛けていた老舗でもあります。1981年に創業し、「スポーツサービス・ロリンザー」の名の通り、スポーティさを売りに出している点が挙げられます。と同時に、メルセデス・ベンツ社が定める製品保証の範囲内に収められている点においても、過激さを抑えた仕立てになっている特徴といえるかもしれません。

日本のバブル期には、W126時代のメルセデス・ベンツSクラスにおいてAMGと人気を二分したことで、その名を知った人も多いのではないでしょうか。W220時代のSクラスでは、ロリンザーフルエアロを纏ったの個体も人気を博しました(コピー商品もあった模様)。近年のすっきりした印象のフォルムを持つAMGに比べると、ロリンザーはアグレッシブ路線。どちらかというと、白やシルバー系などのイメージが強いため、淡色系を好むユーザーから支持されてきました。

日本におけるBRABUS(ブラバス)のイメージ


かつて、メルセデス・ベンツやAMGが持っていた「押し出し感の強さ」、「雄々しさ」を色濃く残すのがブラバスではないでしょうか。

筆者の主観ですが、ブラバスのなかでも特に黒く塗装されたモデルの「押し出し感の強さ」は、まさに現代のメルセデス・ベンツやAMGが隠し持つようになってしまった、あるいは失いつつある凄味といえそうです。ひと言でいえば「ワルっぽさ」。最近のAMGコンプリートモデルも凄味を持っていますが、どこか優等生的な感が否めません。

繁華街で黒く塗られたブラバスコンプリート(またはカスタマイズモデル)が停まっていて、恐る恐る車内を覗き込んでみると、ちょっと強面な人が運転席に…ということも少なくありませんでした。

それゆえ、その見た目の迫力の方がクローズアップされがちになり、BRABUS本来の姿が見えにくくなっているような気がしてなりません。
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BRABUS(ブラバス)のラインナップ


BRABUSのコンプリートモデルには、日本に輸入されていないモデルも含めて、実にこれだけのラインナップが揃っています。

▼BRABUS 850 WIDESTAR(Mercedes-Benz G63)

▼BRABUS 900(Maybach 600)

▼700 Biturbo(Mercedes-Benz SLS)

▼ultimate 120(smart forth)

▼700 WIDESTAR(Mercedes-Benz G63 AMG)

▼700 WIDESTAR(Mercedes-Benz GL63 AMG)

▼700 WIDESTAR(Mercedes-Benz ML63 AMG)

▼800 Rocket(Mercedes-Benz CLS Class (C218))

▼Bullit Coupe 800(Mercedes-Benz C-Class Coupe)

▼800 WIDESTAR(Mercedes-Benz G65 AMG)

▼800 Roadster(Mercedes-Benz SL65 AMG)

▼850 6.0 Biturbo "iBusiness”(Mercedes-Benz S63 AMG)

▼850 6.0 Biturbo(Mercedes-Benz E63 AMG)

▼850 6.0 Biturbo(Mercedes-Benz CLS63 and CLS63 AMG Shooting Brake)

▼850 6.0 Biturbo Coupe(Mercedes-Benz S63 Coupe)

▼Rocket 900(Mercedes-Benz S65)

BRABUS(ブラバス)のラインナップにはさまざまなボディカラーが用意されていますが、時代が移り変わってもやはり黒が似合います。

ドイツにあるブラバス本社、すべてがここに集まっている


ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

日本でも昔から、オリジナルではなく、専用のアクセサリーでドレスアップしたり、チューニングされたメルセデス・ベンツが存在していました。最近ではメルセデス・ベンツ傘下となったAMGはもちろん、ロリンザー、そしてブラバスは、かなりなじみも多いブランドであるといえるのではないでしょうか。

ブラバスもスマートなどでは、すでにレギュラーラインナップになっていたり、日本でも限定発売された、スマートフォーツーエレクトリックドライブのミッキーマウスとのコラボレーションモデルも、ブラバスのビスポークプログラムにのっとったもの。最近ではかなり一般的に認識されるようになってきたといえるでしょう。

ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

ブラバス本社前の通りも、ブラバスアレー(Brabus Allee)というほどですので、すべてがここに集まっているのでしょう。日本には自動車メーカーはたくさんありますが、メーカー並に豊富なラインナップをそろえ、高い品質でカタログモデルとしてチューニングカーを作っている「チューナー」は少ないといってよいでしょう。それだけに、実はこうしたチューナーの工場見学、一度機会があったらしてみたいと思うのです。高級車に乗るということ。もちろん明らかに高価。見た目も華やか。高性能。そういったスペックにおいて優位であることは重要でしょう。

ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

ブラバス本社にいってきました!@ドイツ現地レポ

しかし、それ以上に「自分だけの1台」、「思い通りにできること」そういった要素は非常に重要な気がしています。写真にもショールームのような部屋が写っていますね。そこに、内装の色見本でしょうか?かなり鮮やかな革の束が見えます。内装だけでなく外装も、自分で乗るなら、選択肢は多い方がいいと思うのです。誰も乗っていないような仕様、最初は「え?」と周囲からいぶかしく思われるような仕様でも、案外しっくりくるような、そんな自分だけの一台に仕上げてみたいですよね。

また、ホイールや細かいオプションパーツも多数。こういうクルマに乗るのなら、とにかくただ漫然と、つるしの仕様で選んで「よし」としてはいけません!!そんな風に思う次第です。こうしたファクトリーでどんなクルマが生まれるのかしら?最近では、クラシックメルセデスのレストアプログラムも展開しているブラバス。一般見学とかは受け入れてないかもしれませんが、こんな工場、是非一度見学してみたいものですね。
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BRABUS(ブラバス)、そしてメルセデス・ベンツの未来は?


速く、高く、遠くへ。これは人類が存続するうえで、永遠に求め続ける欲望ではないでしょうか。それが進化であり、発展であり、さらなる高みへ到達する原動力となるはずです。ある時期まではクルマのこれが正義だったのかもしれませんが、最近は方向性が変わってきたように感じることはありませんか。

効率さの追求と、省エネと、ほどほど感のような、優等生さを売りにするクルマが増えてきました。

だからこそブラバスのような反骨精神の持ち主、そしてある種の「人間の欲望に忠実」なクルマ造りが輝いて見えるのかもしれません。この流れを止めてしまった瞬間、BRABUSはブラバスでなくなってしまうような気がしてなりません。それは内燃機関が絶滅して、電気自動車が全盛の時代が訪れたとしても、おそらくは変わらないと思うのです。

[ライター/江上透]

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