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更新2023.04.24

21歳のクルマ好きが「オートモビルカウンシル2023」を取材して思うこと

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林 哲也

私が通った中学校には、カーグラフィック(以下、CG)という雑誌が置かれていました。放課後になると図書室に赴き、CGの新刊からバックナンバーまで、舐めまわすように活字を追った記憶が残っています。たくさんの記事から構成される分厚いCGの内容はとても濃密。ヒストリックカーから最新のクルマまで、時にメカニカルかつマニアックな知識を織り交ぜながら丁寧に論じられる紙面は、中学生の私には少し難しくて、雑誌1冊を“読了”する度に、達成感に近い感覚を抱いていたような気がします。


初っ端から自分語りをしてしまいましたが、オートモビルカウンシル2023、まさにCGを読み漁る感覚を思い出しました。幕張メッセに並ぶたくさんの名車を前に、己の自動車知識をフル活用しながらクルマを味わう、そんな知的な環境だったように思います。心地の良い“疲労感”を思い出しながら、オートモビルカウンシル2023を私なりに振り返ってみます。


会場に入った瞬間に視界に飛び込んできたのは、真っ赤なポルシェ・959とポルシェ・カレラGT。クルマ好きの多くが憧れるであろう、いわずと知れた名車です。会場のど真ん中では、華々しい「フェラーリ・スペチャーレ」の展示に目を奪われます。



そして、華々しく輝くスーパーカーの傍らで、“派手ではないけれど、確かに評価をされている名車”も数多く展示されています。私が今回重点を置いてリポートしたいのは、控えめに輝く実用車。…というわけで今回は、かつて誰かの日頃の生活に寄り添っていたことが思い浮かぶような、素朴な魅力を有するクルマたちに焦点を当てて、紹介しようと思います。


はじめに、ドアが4枚以上あるクルマをご紹介。多種多様なクルマが展示されていました。


●Citroen XM 2.0 5MT


ベルト―ネによってデザインされたエキセントリックな佇まいは、会場に訪れる多くの人の注目の的。ハイドラクティブ・サスペンションによる秀逸な身のこなしを楽しみながら、少し離れた行きつけのレストランへ赴く生活ができたら、どんなに幸せでしょう…。



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●Citroen DYANE


2CVではなく、ディアーヌ。2CVをよりモダンに、そしてよりエレガントに仕上げた派生モデルです。ブラウンの内装との組み合わせが非常にグッド。トコトコ走らせながらホームセンターなんかに行って、DIYやらなんやらの道具をいっぱい買いたくなりますね。



●Mercedes-Benz 280TE



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●Mercedes-Benz 230 Universal



●Mercedes-Benz 280TE



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●Mercedes-Benz 220SB




●Mercedes-Benz 450SE



今回はメルセデス・ベンツの展示がとても多かった気がします。頑丈な造りのクルマは、長い時を経ても現存率が高いのかしら…などと邪推したり。セダンはフォーマルな雰囲気を醸し出しているけれど、ワゴンは家族のお出かけに活躍している姿が想像できる佇まい。


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●Bentley Turbo RL


風格のある大柄なボディによく似合う、上品なワインレッドの塗色。とても素敵でした。



 


●Peugeot 306 Style


ピカピカに磨かれたプジョー306、非常に家庭的で柔和な佇まいで、目立たないながらもとても魅力的な1台でした。濃紺のプジョーを見ると、私自身が幼かった頃を思い出します。



 


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●Range Rover Classic


黒色のレンジローバーと聞くと英国王室的な端正な雰囲気を想像しがちだけれども、赤いピンストライプがサイドに走っているだけで、随分とカジュアルな雰囲気に。驚きです。



●Lancia Appia


CRANK TOKYOのブースにひっそりと置かれていたランチア。滅多にお目にかかることができないであろうこのクルマ、なんとピラーレスの観音開きドアを有するセダンでした。



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【番外編】Packard One-twenty Convertible Sedan


DUPROが展示していたパッカード、4ドアコンバーチブルの大柄なボディは迫力満点。Aピラーについているのは、三角窓ならぬ“四角窓”(⁉)で、非常に興味深い1台でした。驚くなかれ、このクルマのレストアに挑んでいるのは、私と同年代の若い世代の方々。「若者のクルマ離れ」なんか何のその!若者主体の発信、非常にホットで、有意義でした。



【番外編】Lancia DELTA



深い赤メタリックの色合いが素敵なデルタ。5ドアのインテグラーレ・エヴォルツィオーネⅡだけでなく、AUTOMOBILI AMOSの“DELTA INTEGRALE FUTURISTA”や、さらにはS4ストラダーレ(!)が一堂に会する空間、贅沢が過ぎるのではないでしょうか…。


パンダとゴルフ2は、どちらもドアが3枚ある小さな実用車。


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●Volkswagen Golf CLi


ネオクラシックの代表格ともいえるゴルフ2。街中で見かけても、思わず目で追ってしまうような良さがありますよね。質素で端正で、“良いモノ”って感じがとても魅力的。「西湘バイパスとかの海沿いを、窓を開けて風を感じながら、お洒落な洋楽と共にゆっくり流す」みたいな、そういうイイ感じのライフスタイルが目に浮かんできて、とても欲しくなります。



●Fiat Panda



先ほどご紹介したLancia Appiaと並んで、CRANK TOKYOのブースに華を添えていたパンダ。オールペイントされたボディは、レンジローバー純正ボディカラーの緑色が激シブです。グレーグリーンに張り替えられた内装も相まって、非常にファッション性が高い1台。


これまでご紹介してきたのは、ドアが3枚以上ある実用車たち。写真を見返してみると、どれも落ち着いたカラーリングのクルマが多いような気がします。他ブースのポルシェやフェラーリは、ビビッドな赤色や黄色といった原色が非常に目立っていた印象だけれども、こちらの実用車たちは、有彩色であったとしてもどれも落ち着いた色味。日頃の生活に寄り添うような、目立ちすぎることはないけれど、豊かな名車との暮らしが思い浮かびます。


お次にご紹介するのは、スポーティ過ぎない2ドアクーペ。週末にパートナーと2人でロングドライブに出かけたくなるような、“余裕のある暮らし”を演出してくれそうです。


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●Alfa Romeo GT1300Jr


なんともお洒落。こういうクルマが似合うようなダンディーな人間になりたいですね。



●Volvo P1800E


マスタードのようなくすんだ黄色が素敵。サイドのキャラクターラインは、最近のボルボV40で再現(オマージュ)されていましたね。流麗なデザインが魅力の1台でした。



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●Peugeot 406


先ほどご紹介した306と同じくらい(それよりもっと?)ピカピカに磨かれた406。ピニンファリーナによる流麗なボディライン、20年が経った今でも色褪せるわけがありません。



●Citroen SM



くすんだメタリック・ゴールドの塗色がよく似合っていました。ボディデザインからパワートレインまで、すべてがアヴァンギャルドなSM。一度でいいから運転してみたい…。


さて、先ほどの実用車たちと比べると、どれも有彩色で華やかなカラーリングの印象が多かったグランドツーリング・クーペたち。街を走るファミリーカーと比べると“特別なクルマ”という趣味性の要素が強いからか、鮮やかなボディカラーが人気だったのかもしれません。


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【番外編】Toyota CELICA XX & Mazda COSMO AP


こちらは国産の大型クーペ。真っ赤なボディカラーを纏った2台、輸入クーペ以上に華やかな印象を受けます。とてもバブリーな印象で、当時の時代背景が窺えます。



実用車といえば、最近話題のBYDも新型車を展示。グレーのATTOと、薄い青色のSEALの2台を屋内展示していました。BYDといえば濃いブ青色や赤色の印象が強かったので、展示車両に控えめな(ニアリーイコールでいうコンサバティブな)色味のクルマを持ち込んでいたのは少々意外でした。自由にインテリアも触れられるようになっていて、日本のマーケットに親近感を持たせようとする狙いがあるのではないか、とか勝手に考えたり。対して隣のブースのステランティスは、鮮やかな緑色のPeugeot 308と、馴染みが深い赤色のAlfa Romeo Tonaleを展示。BYDの展示ブースに比べて、攻めた色味の車両が並んでいたのが印象的でした。



今回は実用車に振ったご紹介ということで、敢えて触れなかったポルシェ。多くのブースからさまざまなモデルの展示がありました。そのなかでもっとも私の琴線に触れたのクルマが、淡い黄色のPorsche 356SC。とてもかわいらしい色味で、柔和な雰囲気とスポーティな佇まいの調和がとても魅力的でした。やはりスペシャリティ感が強いクーペボディには、有彩色はとても似合います(会場にいるポルシェは、有彩色と無彩色が5:5くらいでした)。



「実用車とカラーリング」に着目して、オートモビルカウンシル2023を振り返ってきました。普段使いに用いられるようなセダン・ワゴンボディは無彩色や暗めの(落ち着きのある)有彩色が多く、クーペになると華やかなボディカラーを纏ったクルマが多くみられる傾向がありました。そしてフェラーリをはじめとしたスーバーカーでは、原色で目立つカラーリングが大半を占めており、実用車との嗜好の差異を感じることができました。


…ここまでつらつらと論じてきましたが、これらのボディカラー論議は、あくまでもオートモビルカウンシル2023の会場内における傾向に過ぎず、決して一般化できるものではありません(今までの考察を覆すようなまとめですが、悪しからず)。もしかしたら世の中に走っている実用車は、華やかなボディカラーのクルマの方が多い、なんてこともあるのかもしれません。けれども、幕張メッセの会場を見渡してこんな邪推ができてしまうほど、オートモビルカウンシル2023がたくさんの名車に溢れていて、自動車史・自動車文化を体現するようなイベント空間であったことは間違いがありません。



クルマの歴史と文化を一気に概観してしまうような知的な体験は、まさしくCGを読み耽った中学生のころを思い出すもの。紙面よりも格段に解像度が高くて、奥が深くて、何時間でも滞在できてしまうような、そんな特別なイベントだったと感じています。公式HPに大きな文字で書いてあるキャッチコピーは、「クルマを超えて、クルマを愉しむ」。間違いなく私は、あの会場のなかで、ただ夢中に愉しみを謳歌するひとりの少年だったと思います。


[撮影&ライター/林哲也]

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