
ドイツピックス
更新2017.04.13
インフラ投資目的の課税は違法?アウトバーン有料化見送りのワケ

NAO

しかし、ついにドイツでも2015年3月27日に有料道路の導入が連邦議会により確定されました。5月にはアウトバーン有料化の法案が承認され、2016年にはこの有料道路システム及び外国車も含め全車両に料金を課すこともすでに予定されていましたが、他のEU諸国との兼ね合いに関して問題がまだ残っており、その状況を考慮してドイツ連邦交通相ドブリン氏は予定していた導入プランを延期すると公式に発表しました。
ドイツ人だけが得をする?EUからの反対意見
ドイツのアウトバーン有料化はここ数年で出てきた話ではなく、90年代から取り上げられていました。ドイツでは1995年より大型トラックのみがアウトバーンでの課税対象となっていましたが、その背景としてはドイツが東西統一以降交通の要となったためヨーロッパ各国のトラックが頻繁に走るようになり、ドイツのドライバーはアウトバーン建設に対して自動車税などの形で貢献しているにも関わらず、外国のトラックは無課税のままドイツのアウトバーンを走っていたため、彼等にもアウトバーンの財源を提供してもらうために有料化することとなったわけです。
今回それと同じシステムが乗用車にも適用される、というワケですがそこに待ったをかけたのが他のEU諸国。アウトバーン利用者全員が料金を払うことに変わりはありませんが、ドイツ国民はビニエットと呼ばれる証紙を購入し、定められた期間分有効なビニエットを持っていればその分だけ自動車税の減税という形でアウトバーン料金が払い戻しされるシステムがあるのです。自国でも自動車税を納め、自国ましてやドイツの高速でも料金を払わなければならない外国ドライバーたちに対して不公平で差別的なシステムであるとEU諸国は大反発。EU議会もこれはEU法違反であると指摘しており、まだ議論の余地があるということで今回導入を見送る結果になりました。
アウトバーン有料化、はたして儲かるのか?
法的問題の次に気になるのが導入における経済効果です。専門家の予想ではアウトバーン有料化によって外国のドライバーから年間約2.6億ユーロの総収入を見込んでいますが、年間の徴収所の経費や管理費を差し引くとプラスマイナスゼロで、導入したところで大きな収益は見込めないだろうというのが現在の意見です。しかしながら連邦交通省はそれに対してその倍以上である7億ユーロを外国ドライバーから収入を得ることができると発表しています。システムコストは同様約2億ユーロほどの計算をしており、もしその通りになると残りの5億ユーロは全てドイツの国の懐へと流れて行ってしまいます。通行料と題して自国のインフラ投資のために外国ドライバー達からの収益を使うのはどうなのか、外国からの利用者に見返りもないままドイツだけが結果的に得をする条例だと収益面に関しても疑問視されています。
高速有料化に関して不満を持つのは外国だけではなく、ドイツ国内でも国民から反発の声は出ていました。ドイツの二大自動車連盟であるADACとACEはこの導入延期の判断は正しく、急を要するものであったとコメントしています。EU議会からドイツに対して訴えられたこの忠告を無視したまま強行すれば、後々EUからドイツ自動車連盟への評価も影響しかねないと考えていたからです。今後この有料道路プランに対してEUが首を縦に振ってくれるかどうかは未定ですが、納得してもらえるまではドイツのアウトバーン有料化計画は宙に浮いたままになりそうです。
出典・参照元:http://www.auto-news.de/auto/news/anzeige_Verkehrsminister-Alexander-Dobrindt-CSU-verschiebt-Einfuehrung-der-PKW-Maut_id_36946
[ライター/NAO]