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テクノロジー

更新2018.04.23

Apple CarPlayを徹底レビュー 、今後は普及していくのか?

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海老原 昭

昨今、カーナビにCDやMDを挿入するのではなく、iPodなどの音楽プレーヤーやスマートフォンを接続し、その中の楽曲を再生する人が多いのではないだろうか。そんな中、スマートフォン側からもカーナビとの親和性を高める仕組みが用意されるのは自然な流れだ。今回は米アップル社の「iPhone」をカーナビと接続する機能「CarPlay」について紹介したい。


▲ケーブルでつなぐだけでCarPlayが起動する。次期iOSではWi-FiやBluetoothといった無線通信でも接続できるようになる(extremetechサイトより)

スマートフォンがカーナビを置き換える


Apple CarPlayとは、アップルがiOS 7で搭載した、車載モニターとiPhoneを接続するための機能だ。この機能に対応したカーナビ/モニターは、iPhoneと接続すると画面がCarPlayに代わり、もともとのナビの機能の代わりにiPhoneの地図や音楽を表示/再生するようになる。

カーナビとスマートフォンは、地図や音楽プレーヤーなどの機能が被っているが、常にネットから最新版の地図をダウンロードでき、音楽も大容量のメモリーに記録したり、インターネットからダウンロードして再生できるスマートフォンのほうが優位性が高い。ならばナビはディスプレイに徹して、それらの機能をスマートフォンにまかせてしまおう、というのがCarPlayの考え方だ。

CarPlayには対応していなくとも、スマートフォンと連動して利用できるナビ自体は、ケンウッドなどからも販売されている。しかしこうした製品は独自仕様で連動しているので、利用できる機能にも制限があったり、対応アプリが少ないといった問題がある。CarPlayであれば、共通規格であるため、対応アプリはどのメーカーのCarPlayでも利用できるので、アプリ開発者としてもメリットがあるわけだ。

今回は国内で唯一CarPlayに対応しているパイオニアのAVメインユニット「SPH−DA700」を元に紹介しよう。
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自動車での利用に最適化された操作系


SPH−DA700は、ラジオとアンプ、プロセッサー類をまとめ、さらに大型(2DINサイズ、6.2型)のディスプレイが組み合わさったものだ。つまり、単独ではカーナビとしての機能を持たない。ディスプレイはスマートフォン/タブレットや、最近のハイエンドカーナビで見られるようになった静電容量式パネル。iPhoneと同様にタップやスワイプ、フリックといった操作が行える。さらにサイドには、タッチタイプのハードウェアスイッチが用意されており、音量調整などはここで行うことになる。

CarPlay
▲写り込みが激しく大変申し訳ないが、中央のディスプレイ部がSPH−DA700。対応するiPhoneはiPhone 5以降の、Lightningコネクターを搭載したモデルで、iOS 7以上がインストールされている必要がある

Lightning−USBケーブルでiPhoneをつないだ場合は音声認識での操作も可能だ。トヨタ、ダイハツ、ホンダなど国内メーカーの純正ステアリングスイッチに対応するためのケーブルがオプションで用意されており、これを接続すると、ステアリングスイッチからiPhoneの音声アシスタント「Siri(シリ)」を呼び出せる。このスイッチがない場合は、各機能の中で入力が必要になる場合、自動的に音声入力が起動するようになっている。マイクはiPhoneのものを利用するが、音楽を流している時でも、認識率はなかなか良好だ。

自動車は運転中に画面を見ながら操作するわけにはいかず、難しい操作もできないので、タッチ操作もできるだけ簡単なものに限られている。手を塞がず、視線も動かさずに操作できる音声操作は理にかなっているわけだ。音声操作というと認識率の低さが気がかりだが、最近は処理能力の向上により、ずいぶん認識率も高くなっている。

機能のほとんどはiPhoneが担当


iPhoneをつなぐと画面はCarPlayに切り替わり、SPH−DA700本来の画面は裏側に隠れてしまう。この先は基本的にiPhoneの操作が優先で、音楽を流すのもiPhoneが後から曲を再生し始めれば、iPhone側の曲が流れる。CarPlayで利用できるのは基本的に電話の発着信、メッセージ(SMS/MMS)の送受信、音楽の再生、ナビゲーションの4つ。このうち電話とメッセージは、iPhoneに保存されている連絡先を対象に、音声入力で呼び出すことになる。認識率はかなり高いが、念のため、連絡先にはあらかじめ読み仮名を登録しておくと間違いがなくていい。

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▲CarPlayのホーム画面。これは左ハンドル車の例で、右ハンドルではホームボタンなどが右側に表示される

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▲「◯◯さんへ電話」というような音声操作で発信が行える。キャリア側が対応していればグループ通話などの指定も可能

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▲着信したメッセージの読みあげと新規/返信メッセージの送信が行える。過去のメッセージは確認できない

音楽再生はiPhoneの「ミュージック」機能そのままで、こちらも音声操作が可能だが、画面上からプレイリストなどを選択して再生することも可能だ。こちらも音声で操作したいなら、曲情報で曲名やアーティスト名の読みを登録しておくと間違いがない。

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▲音楽再生機能はほぼiPhoneのままだと思っていい。CarPlay利用時以外もSPH−DA700単独でiPhoneの音楽を再生できる

最後のナビについては、アップル純正の「マップ」を使ってのナビゲーションになる。登録地点の間違いや情報量の少なさからあまり評判のよくないアップルの「マップ」だが、曲がる場所の指示のタイミングなどは悪くなく、思ったよりはいいほうだ。ピンポイントで住所などを入力しても、とんでもない場所に誘導されることがあるので、おおまかに近くまで行くよう設定したほうがいい。

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▲評判の悪い「マップ」だが、ナビ機能そのものは比較的使いやすい。地図の拡大縮小を「+」「−」ボタンで指定するのが少し使いづらい

ここまでが基本機能だが、CarPlayはさらにアプリで機能を拡張できる。iPhone用アプリのうち、CarPlayに対応したアプリは、専用のインターフェースで表示される。アプリの種類は限定されており、ニュースなどを読み上げるものか、ストリーミング放送(音声のみ)の再生アプリなどが対象になる。現在出ている対応アプリには、例えばネットで配信されているラジオ番組を再生できるものがあり、東京にいながら沖縄のラジオ局の放送も聞けるのだ。

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▲MLB公式アプリではiPhoneアプリで登録しておいたチームの試合速報などを素早く確認できる

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▲ネットラジオアプリ「TuneInRadio」では全国のローカルFM局のネット放送を受信できる。地方をまたいだ視聴が可能だ

残念ながら地図/ナビアプリはCarPlay対応にできないため、評判の悪い「マップ」を使い続けなければならないのだが、アプリ拡張自体はさまざまな可能性を秘めた機能だ。読みあげ可能なニュースアプリや、朗読できる電子書籍などがCarPlayに対応すれば、運転中にもさまざまな情報をチェックできる。まだアプリは10種類程度しか出ていないが、今後の増加が期待される。
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Apple CarPlayは今後どこまで普及する?


iPhoneとの相性がいい(というかiPhoneをそのまま使うだけなので当然なのだが)CarPlayだが、海外ではFerrari FFをはじめとして、高級車の純正ナビがCarPlayに対応しているケースが出ているものの、日本国内ではSPH−DA700のみ。各社の純正ナビは対応するそぶりすら見せない。


▲Ferrari FFは世界初のCarPlay搭載車。タッチパネル、Siri、車載コントローラーのすべてで操作できる(フェラーリ公式サイトより)

もともと海外ではカーナビが日本のように高機能でもないため、スマートフォンのナビ機能で十分という事情もあるのだが、カーナビの普及率が高く高機能な国内では、あえて対応を急ぐ理由が見当たらない、ということだろう。カーナビメーカーとしても、自分たちが苦労して作った地図を上書きするような製品には力が入るまい。ちなみに輸入車でも、日本に子会社を持つ規模のメーカーはたいてい純正ナビとして日本のナビ専業メーカーと提携して日本製ナビを搭載しているため、今の所CarPlayに対応しているメーカーは少ない。Apple Watch用アプリすら提供しているBMW i3でも、日本市場向けの純正ナビはCarPlay非対応だ。

また、自動車メーカー各社は自動車の位置情報などを通信網を使って取得し、渋滞情報などを生成するカーテレマティクスに力を入れているところで、同様の機能をあとから奪い取っていくCarPlayに協力するいわれもないというところだろう。

CarPlayは、機能面ではともかく、操作系についてはほとんどiPhoneそのまま(一部異なる)で快適なため、ユーザーの立場としてはできるだけスマートフォン対応ナビが増えて欲しいところなのだが、このままでは普及はなかなか難しい。

スマートフォン用OSのもうひとつの柱であるAndroid OSを開発している米Google社も、「Android Auto」というほぼ同等の機能の提供を始めている。これはまだ北米仕様のヒュンダイ・ソナタにしか搭載されていないが、2016年以降登場するナビの多くはCarPlayとGoogle Auto、双方に対応するものが増えてくる。

日本の自動車/カーナビメーカーも、シェアが限られるiPhone単体であれば無視を決め込むことができても(といっても日本市場ではiPhoneが半数近くを占めているのだが)、Androidまで対応する頃になれば対応を真剣に検討しなければならないはずだ。

[ライター・写真/海老原昭]

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