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カーゼニ

更新2017.07.31

普遍的名作であるNAロードスターの価値が今後、上がらぬはずがない

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伊達軍曹

自分はチャールズ・M・シュルツ先生の筆による『PEANUTS』、俗に言うスヌーピー漫画を幼少のみぎりより愛している。神童と呼ばれていた尋常小学校時代は、その後倒産することになるツル・コミック社のそれを大量に買いそろえ、谷川俊太郎先生訳による日本語はいっさい読まず、英語部分のみで精読していたものだ。

……まぁ「神童」とか「英語部分のみ」というのは真っ赤な嘘だが、ツル・コミック社のそれを大量に所有していたことだけは本当である。

しかしその後の一家離散やそれに伴う引越し等々のせいか、あれだけあったはずのTSURU PEANUTS COMICは手元に1冊もなくなってしまった。そしてそのまま自分は成人となり、中年になった。

昭和50年代のスヌーピー古本は今や定価の2倍近くに




だが中年ともなれば、こんな自分であっても古本を買う程度のゼニは持ち合わせている。「ならば古本屋で再びTSURU PEANUTS COMICを買いそろえれば良いではないか!」との名案に思い至った自分は、そのまま駅前の古書店にママチャリで直行。店内にあったとりあえず11冊のPEANUST本をすべて買い占めてこました。

尋常小学校の頃の記憶によれば、ツル・コミック社のそれは1冊290円。あれから35年以上が経過しているので、紙材の傷みやツーオーナー、スリーオーナーと代を重ねたことによる価値の低下等々から考えると、「ま、古本価格は1冊100円だべ」と自分は読んだ。そうでなければせいぜい200円とか。

が、レジに座る店主はスマイリーかつポライトに言った。

「えっと、これはすべて1冊500円ですので、合計で5500円になります」

……自分はクールかつヒップな態度を装いつつ、たまたま財布に入っていた五千円札と、先ほど自販機近くで拾った五百円硬貨1枚にて、内心焦りながら支払いを済ませた。

なるほど。再販制度をとっている新品の書物と違い、古本の価格というのは中古車と同じで需給関係に基づく弱肉強食・適者生存の世界。290円の本が500円になっているからといって店主を怒鳴りつけ、訴訟を起こすのは明らかに間違っている。

それについて納得しながらも、晦日払いで購入した味噌と醤油の支払い用に取っておいた五千円札が消失してしまったことについて、自分は暗澹たる気持ちにならざるを得なかった。こんなことでは、あの味噌屋さんは自分に二度と味噌を売ってくれまい。Oh, good grief(やれやれ)。

しかし希望を失い、ついでに味噌屋さんからの信用も完全に失った自分ではあったが、ひと筋の光明はしかと見据えていた。

NAこと初代ロードスターである。

外車王バナー外車王バナー旧車王バナー旧車王バナー

NAロードスターもピーナッツ同様、その価値は高騰するはず




自分は今、96年式の初代マツダ(ユーノス)ロードスターというクルマに乗っている。今さら説明するまでもない普遍的名作である。で、シュルツ先生の『PEANUTS』すなわちスヌーピー漫画という普遍的名作が時を越えて価値を放ち続け、その中古品相場を上げ続けているのであれば、ジャンルは違えど同じように普遍的名作であるNAロードスターの価値が今後、上がらぬはずがない。

昨今もNAロードスターの中古車相場は微妙に高騰している気配を感じるが、これがあと10年、20年もすれば「微妙に高騰」では収まらない「ウルトラ高騰」となるのは必至。そしてそのとき、ほぼフルノーマルの良質なNAロードスターを所有している自分は名士として世界に君臨するだろう。や、世界に君臨はないとしても「世田谷区を代表する名士」ぐらいにはなれるはず。そして、特に売るつもりはないのだが、もしもその時点で売却すれば巨万の富も得るだろう。

余談かもしれないが、恨みを晴らすチャンスでもある。

自分は以前、NAロードスターに乗っている際に、某超有名自動車誌の編集長から「中古はすっこんでろ」という意味のことを言われたことがある。

男子たるもの、そのような暴言を吐かれたからには彼奴を袈裟にて斬っておとし、そのうえで切腹するか、もしくは奉行所に出頭するのが武士の道。しかし自分は武士ではないので「でへへ、さようでがすか。こらまた失礼シマシタ! ぺしっ!」と卑屈な笑みと卑屈な腰つきでもって自らの額を叩き、事をやり過ごした。出入り業者の悲哀である。

しかし内心では浦見魔太郎のように「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」と思ったもので、実は今でもそう思っている。

だが20年後は自分の天下である。良質な(ほぼ)フルノーマルNAロードスターを所有する自分は地元の名士になっているが、某超有名自動車誌の編集長はしょせん雇われの身ゆえ、その頃には退職引退し、多摩川で日がなフナでも釣っているはず。

そこへ、不良少年時代の花形満のようにオープンカー(初代ロードスター)で乗りつけるのが自分だ。

「やあ編集長、いや元編集長でしたか、ご無沙汰しております、軍曹です。……釣りですか? 釣りはいいですよねえ。特にフナは。わたしも編集長にお世話になっていた頃はよく多摩川でフナを釣って、塩焼きにして食ったものです。泥みたいな味でしたが。些少ですがコレ、練り餌代と自転車のパンク修理代、あと朝ごはんの納豆代にお使いください。では失敬」

そう言って1万円札2枚ほどをヒラヒラと風に乗せて元編集長のほうへ流し、NAで走り去る。完璧である。こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か。

だが20年間の努力は完全に的外れだった




しかしながら自分が20年後に名士となり、そのついでに個人的な復讐を果たせるのは、あくまでも今乗っているNAロードスターが20年後も「良質な(ほぼ)フルノーマル状態」を保っていてこそ、である。むやみに走行距離を増大させ、それに伴って各所各部を猛烈に劣化させてしまっては名士もクソもない。自分は、NAの今この状態を20年間にわたりキープあるいは向上せんければならないのだ。

そう確信した自分は近所のマツダディーラーで再度の点検および整備をしてこまし、そのうえでNAをサランラップとカーカバーで厳重にくるんで屋根付き駐車場にて保管した。ただしクルマというのは動かさないのも問題ゆえ、月に一度ぐらいのペースで開封して近隣を軽く走行し、再びサランラップに包んで保管した。日頃の移動は主に徒歩と電車・バスで行った。NAに乗りたかったが、我慢した。

そして20年が経過した。いよいよ自分が名士になる時がやってきたのだ。

駐車場のNAを開封し、自分はいざ環状七号線へ走り出んとした。

しかし、それは叶わなかった。

NAのことにかまけていて知らなかったのだが、いつの間にか都内では内燃機関を備える自動車の運行禁止が決定されていて、環七では自動運転車を含むEVすなわち電気自動車のプチ渋滞が発生していた。

自分は駐車場へ取って帰り、サランラップでNAロードスターをくるんだのち、徒歩にて多摩川へ向かった。フナを釣って塩焼きにするためだ。

[ライター・画像/伊達軍曹]

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